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宮城県美術館のコレクション展示:4

承前

 別館は、郷土出身の彫刻家を顕彰する佐藤忠良記念館。生前の作家本人から全作品と所蔵品の寄贈を受け、本館に隣接する形で増築された。
 佐藤忠良は絵本『おおきなかぶ』の絵を描いたことでも知られている。
 その原画をはじめとする絵本原画のコレクションも、宮城県美術館の大きな柱となっている。『ぐりとぐら』や『はじめてのおるすばん』の原画も、ここ宮城県美術館の所蔵。
 絵本原画は別館で少しずつ展示されるほか、年に一度の企画展や他県への巡回展でまとめて公開されている。

 再訪して改めて感じたのは、前川國男設計の建築のよさだ。
 前川は、じつに多くの美術館・博物館を手掛けている。最近、足を運んだところだけでも東京都美術館、埼玉県立歴史と民俗の博物館、山梨県立美術館がそうであった。国立西洋美術館の新館、福岡市美術館、熊本県立美術館なども前川の設計だ。
 ゆとりある空間構成、茶褐色のタイル、暖かな光と影、曲線を意識したカラフルな座面の椅子……前川の設計には、すぐにそれとわかる特徴があちこちに見受けられる。
 宮城県美術館はその典型ともいえるけれど、とくに好もしく感じられたのは、建物や内装がとても大事に使われてきたことがよく伝わってくる点だった。明るすぎず暗すぎない、目に優しい光の具合。据えつけの彫刻作品は、建築に融けこんで一体化している。ものを置きすぎずに点在させているのもよい。
 “いぶし銀” の魅力を醸す美術館といえよう。

 ※こちらのリンク先に、館内の写真が豊富に載っている

 宮城県美術館には、いっとき解体・移転の計画が上がったものの、市民の猛烈な反対運動により立ち消えとなった。
 これには、遠まきに見守っていたわたしも安堵。
 再訪して、この空間が失われずにすんでほんとうによかったなぁと、改めて思ったのであった。

 解体・移転をしないかわりに、2024年度の再オープンを目指して大改装工事がなされるという。
 その目玉として「見える収蔵庫」なるものが計画されていると聞く。きわめてめずらしい試みだ。
 宮城県美術館の新たな展開が、いまから楽しみだ。



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