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楠谷刑事と鴻ノ池刑事シリーズ

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ショートショートの推理小説です。
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記事一覧

黙秘

 昼下がりの捜査本部。楠谷と鴻ノ池が睨み付けていたホワイトボードには、犯人の顔写真があった。
 
 捜査本部が担当していた事件とは、若い女性ばかりを狙った連続殺人事件だった。事件は六件発生しており、一件目は昼間の誰も居ない公園。二件目は真夜中の道路。三件目は誰も居ない路地。六件とも共通しているのは、人気の無い場所で事件が発生していることと、被害者の口腔内に金魚の印と思しきものがついていたことだった

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縺れ

 「ねぇ、本当に行くの?」
 女が男の腕を掴んで言う。
 「そりゃ、行くさ。俺、都市伝説はあまり信じないからな」
 そう言うと、二人は夜の学校のトイレに入る。至ってどこにでもあるようなトイレ。二人の目的は花子さん。花子さんは言わずもがな、誰もが知っている都市伝説。今夜、その年伝説を確かめようと、二人の学生が夜の学校を訪れていた。
 男が個室をコンコン、と戸を鳴らし、扉を開ける。奥の個室までは誰もい

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猥褻れる(さわれる)

 少ない電灯で照らされる夜道。そこに仕事帰りの女性がいた。彼女はふんふん、と鼻を鳴らして歩いていた。その後ろに、怪しい黒ずくめの人がいた。その人は女性にゆっくりと近づき、真後ろに立った時に女性の腰にスタンガンを押しつける。女性はスタンガンの衝撃で倒れ、気を失う。その人は女性の服を脱がし始め、そっと女性の肌を触っていったーー。
 
 「で、事件現場はどこだ?」
 楠谷が歩きながら言う。
 「あそこで

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狙撃たれる(うたれる)

 歓声が広がる野球場。天気は晴天。大久保地方議員は地方で行われる始球式に参加していた。彼は投球台に立ち、ボールを構える。すると、何かが彼の頭部を直撃し、恰も無く彼の頭が無くなっていく。その異変に気づいた観客たちは、それまであげていた歓声が悲鳴へと変わっていったー。
 
 「被害者は大久保雅良で、年齢は六十四歳。この地方の議員らしく、事件当時は始球式のために参加していたことでした」
 「そうか」
 

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燃焼

 ある日の昼。楠谷と鴻ノ池は三津橋大学の物理学第十五教室に訪れていた。
 「何の用ですか」
 そう言ったのは、第十五教室の責任者である油川准教授だった。彼とは、楠谷刑事と知り合いであり、楠谷が手詰まったら度々彼に依頼して事件を解決しているだと、鴻ノ池は楠谷から聞かされていた。
 「単刀直入に申すと、事件なんだ」
 「事件ねぇ・・・・・・」
 油川は手に持っていたホットミルクを啜る。
 「僕は捜査に

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画鋲

 ある日の昼。二人は現場の家の中にいた。
 
 二人が捜査していた事件とは、短絡的な殺人事件だった。通報者の妻は夫が倒れていると通報し、夫は病院に搬送されたが死亡が確認された。その後の調べで、夫は何者かによって中毒死されていることが判明。そして、夫の身体には小さな穴があったことが確認されており、そこから毒物を入れられたのではないか、と捜査を担当していた二人は考えていた。
 
 「短絡的な事件ってこ

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不審火

 「これで四回目だよ」
 楠谷が少し苛立ちながら言う。その横には鴻ノ池が立っていた。
 
 二人が目にした光景とは、黒焦げになっていた自転車だった。
 二人が遭遇した件も含め、四回不審火の案件が舞い込んでいる。その四件とも共通していることとして、盗難届が出されている自転車が燃えていた。目撃者は多数いるが、どれも有益な証言は得られなかった。
 
 「誰だよ、こんなことをしてるのは」
 「そうですね・

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アルファベット殺人事件(後編)

 二人は再びあの家へ訪れていた。家に入ると、楠谷は大股でリビングへと向かって証拠を探し始める。その動作は落ち着きが無く、必死に探している様子が鴻ノ池の目に映った。

 「ねぇぞ!証拠が」

 楠谷が頭を掻く。

 「落ち着いてください」

 「落ち着けるわけがないだろ!」

 楠谷が鴻ノ池の襟を掴む。

 二人は互いに睨み合う。楠谷の目は怒りで目に満ちているように思えた。鉛のように重くなった雰囲気

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アルファベット殺人事件 前編

 楠谷と鴻ノ池は、とある一軒家を訪れていた。その一軒家は洋風な家であり、どこにでもありそうな家だった。
 二人は何か焦げ臭いを鼻に感じつつ、玄関へと入り、家の中を物色する。
 「えーっと、この家の家主は不動産を経営しているらしいです」
 鴻ノ池が手帳を読み上げながら、楠谷の後を追う。
 「そうか、それで?」
 「今のところ、彼は重要参考人なので言いようがありませんが、今までの事件の被害者で関係して

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母娘

 「ねぇ、いい加減やめてよ」
 涙ながらに尚美が叫ぶ。正面にいるのは、元交際相手の茂樹だった。
 茂樹が居座っているのは尚美の自宅だった。半年前、尚美と別れたものの彼自身は納得がいっていないためか、ストーカー化していた。別れた原因は茂樹のギャンブル癖。最初の頃は、尚美は耐えていたが、次第に耐えきれなくなって別れたという。今夜も、茂樹に金を貸してくれてせがまれていた。
 「あぁ?金を貸してくれればこ

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夫婦と娘

 あるマンションの一室。鑑識による作業が行われていた。そこに、二人の刑事がいた。
 
 通報者によれば、二人の男女が倒れていたという。被害者二人は夫婦とみられ、妻は床で絞殺、夫はロッキングチェアで銃殺されていたという。その際使われたと思われる散弾銃が、庭に放置されていたという。
 
 「何この、『妖怪』って」
 鴻ノ池が手袋をした手で、白い壁に筆で描かれた文字を触る。
 「妖怪・・・・・・ねぇ」

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ジェットコースター殺人事件

 とある日の昼下がり。楠谷と鴻ノ池は某遊園地の敷地内にある、ジェットコースターの施設にいた。乗り物には複数の鑑識が居ており、二番目の座席には大量の血痕が残されていた。そして、楠谷が乗り物の横に目線を向けると、ブルーシートで覆われた首のない被害者が倒れていた。
 
 二人が調べていた事件とは、ジェットコースターが稼働しているときに事件が発生した。被害者は今野政重。妻の香織と乗っていたら、被害者が突然

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ある女子高生

 渋谷区のとある場所。そこに、楠谷と鴻ノ池がいた。
 
 昨夜。ある母子が何者かによって刃物で刺されたという。既に犯人は捕まっており、高校三年生だという。幸いにも、刺された母子は一命を取り留めた。
 
 「何で、道を踏み間違えてしまうんですかね・・・・・・」
 鴻ノ池が手を合わせて言う。
 「そうだな」
 楠谷が頷く。
 二人は立ち上がって、周囲の聞き込みを開始する。大体の聞き込みは、既にその夜に

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ある工場での事件

 ある工場の昼下がり。そこに、楠谷と鴻ノ池が四人の証人を取り調べていた。
 
 その工場で起こった事件とは、草野努工場長が何者かによって、その場にあった金具で殺害されたという事件。その時工場に居たのは、二人が取り調べている四人の証人だった。男性と女性が各々二人。そのうち男性の一人が、外国人労働者であった。女性二人は事件現場から少し離れたコンビニに居ており、殺害は不可能だった。そのため、二人は男性の

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