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アラン・レネ『人生は小説なり』異なる時代のユートピアを探し求める者たち

1983年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。アラン・レネ長編九作目。人生初の某エルメス映画館にて。予約が一瞬で埋まったと記憶しているが、埋まり具合は8割くらいだった。物語は三つの挿話を縦横無尽に往来する形で語られる。一つ目はとあるパチキレた貴族の男が友人たちを郊外に建設した悪趣味な"城"に招き、薬物で脳を破壊して幼児退行させることで永遠の幸せを手に入れようという極悪な実験をする話。二つ目はその60年後に学校として使われている同じ城で、子供の想像力を引き出すためのシンポジウムが行われ、各地から教育に一家言ありな有識者が集まるも会議は踊る状態で進まずという話。三つ目はその学校の三人の生徒が夢想する中世騎士道物語である。ユートピアの探索、横暴な権力者への反逆などテーマは共通しており、過去と現在というレネっぽいテーマでもある。監督は三つの物語を、自国映画の黄金時代を牽引した重要な映画監督、ジョルジュ・メリエス、マルセル・レルビエ、エリック・ロメールへの軽妙なオマージュとしているようだ。三つの時代を難なく結び直す編集が上手すぎるので観ていられるのだが、極悪実験と中世騎士物語は内容が薄すぎるのは良いのだろうか?シンポジウムの挿話は船頭多くして船宇宙へ飛び立つというくらい会議自体はめちゃくちゃで、男性陣は不倫のための出張だ!セックス最高!とか言って団結しているというバカっぷりが良い。高名な建築家ワルテルがただのエロ爺と知って初参加の堅物教師エリザベットが落ち込んでいるのを見て、シンポジウムの発起人で頑張ってピエロを演じている苦労人ロベールとくっつけようと裏で動くジェラルディン・チャップリン&マルティーヌ・ケリーのコンビが好き(ここでもやはりジェラルディン・チャップリンは負けヒロインなのだ)。あと一応ミュージカルなので唐突に歌い始めるし、スタイルが自由すぎる。

・作品データ

原題:La vie est un roman
上映時間:110分
監督:Alain Resnais
製作:1983年(フランス)

・評価:60点

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