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アレッサンドロ・コモディン『警官ジジのアドベンチャー』やる気のないイタリア版"プティ・カンカン"?

アレッサンドロ・コモディン長編三作目。前二作がアピチャッポン志向で、前作は特にトロピカル・マラディを恥ずかしげもなく丸パクリした映画だったので、本作品の冒頭で密林化した庭に向かって喧嘩する10分の長回しが採用されていても驚きはない。この喧嘩してる男こそジジという警官で、コモディンの叔父でガチ警官のピエル・ルイジ・メッキャが演じている。田舎町の警察官で、残りの映画の殆どはパトカーと思しき車の中から撮影されている(なので、本当にコイツが警官なのかはよく分からない)。同僚と二人で長閑な農地を走っていると、線路に少女の轢死体があって、しかもこれが何度も続いてるらしい…という導入だが、犯人を追いかける気はあまりなく、パトロール中にすれ違う自転車の男が怪しいという警察のカンによる調査と本部に入った新人女性とのダル絡み無線が延々と紡がれていく。『プティ・カンカン』の憲兵でももっとやる気あったぞ。目を引く要素として、車の乗客がシュレディンガーの猫みたいに収束してない点が挙げられる。ボヤ騒ぎを調査している際に誰もいない助手席を映したと思ったら、次の瞬間に、まるでさっきのボヤ騒ぎの帰り道みたいな感じなのに、助手席に人が座ってたり、運転席の女性警官と喋ってたら突然後部座席に三人目が座ってるのが判明したり、中々こういう遊びは楽しい。背筋がゾワゾワする。運転席で猛烈にやばい独り言垂れ流してるおっさんのアップ→引いたら助手席に気まずそうなヒッチハイカーが座ってた!というジョン・ジョスト『Last Chants for a Slow Dance』のワンシーンを思い出した。

・作品データ

原題:Gigi la legge
上映時間:102分
監督:Alessandro Comodin
製作:2022年(イタリア, フランス)

・評価:40点

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