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Aivars Freimanis『Apple in the River』ラトビア、リガの島に暮らす人々とロマンス

アイヴァルス・フライマニス(Aivars Freimanis)長編一作目。ラトビア映画鑑賞会企画。フライマニスはこの時点で名の知れたドキュメンタリー作家であり、リガ詩的ドキュメンタリー映画学校の創設者でもあった。そのため劇映画としては珍しく、ドキュメンタリー的な手法を用いて製作が進んだ。元々は首都リガを流れるダウガヴァ川のデルタ地帯にある"野ウサギ"島で暮らす人々の生活を撮ったドキュメンタリーを計画していたようだが、途中で俳優を登場させることを思い付いたらしい。そのため、完成予定は1971年秋から大きくズレ込み、1974年の春に完成した。また、主演二人には具体的な台詞が用意されておらず、幾つかの重要な台詞以外は俳優たちが考案して即興で演じられた。映画はまず"野ウサギ"島の生活に密着する。朝早くから漁に出る漁師たち、リガ市街地に向かうフェリーに向かう人々、引退した老水夫などなど。ヤーニスというモテ男を一応の視点人物として、日常生活や夏至祭での食事会、古い歌や島の歴史など様々なテーマが語られていく。75分のうち30分くらいはずっと主人公不在でフラフラしているので心配していたが、ヤーニスが遺跡発掘現場でアニタという女性に出会ったことで、二人の物語として動き始める。だが、遅きに失した感は否めない。前半と後半は相互作用どころかほとんど関係すらないのだ。しかも後半も結構行き当たりばったりで、上記の混乱した製作背景がそのまま映画に出てしまっている。ラトビアの有名アナウンサーが吹き込んだという"雄弁な"ナレーションも残念ながら過保護すぎてノイズにしか聞こえず、特に後半部分の情感を損なっている。とはいえ、前半と後半を個別に見た場合、前半のショットの雄弁さや後半のロマンスの淡い感情の捉え方は特筆に値する。フライマニスも発展途上だったということか。次作『Puika』ではナレーションどころか台詞すら廃して自然の表情に語らせる手法を採用していることからも明らかか?

・作品データ

原題:Ābols upē
上映時間:76分
監督:Aivars Freimanis
製作:1974年(ラトビア)

・評価:60点

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