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ロルフ・デ・ヒーア『エンカウンターズ / 未知への挑戦』オーストラリアの"NOPE"は超常現象と戦う

大傑作。ロルフ・デ・ヒーア長編二作目。前科者のエディは兄リチャードの経営するレイヴンズ・ゲートという孤立した農場に世話になっていた。ある日、飼っていた羊が突然全滅するという事件が起きてから、農場では奇妙な出来事が頻発するようになる。二つの車が同時に動かなくなったり、死んだ鳥が降ってきたり、水のタンクが空になったり。これらの異常現象の原因を調べようとする捜査官の物語も微妙に入ってくるが、基本的には一般人が超常現象に巻き込まれていく様子が描かれている。それでも、エディがリチャードや同じバーの女を狙ってる警察官スキナーなどから目を付けられているというのもあって、全てエディが悪いということで片付けられていき、皆が知らぬ間に徐々にレールが外れていく。登場人物たちと同様に最後まで何がどうなってこの出来事が起こっているのかは分からないのだが、そういった事象について巻き込まれた一般人の視点を保ちながら、常に何かが起こっている状態を作り出している。敵が電気や光によって視認されるからか、ライティングには非常に拘っていて、特に夜や薄暗い室内で顔にかかる光が持ち込む緊張感が素晴らしい。冒頭の、薄暗い家を調査する警察官→外から窓を突き破って銃が伸びてくるというDWグリフィス『見えざる敵』みたいなシーンも、窓の外から陽光が漏れ出すという幻想的なシーンになっていた(下記参照)。闇の中で兄嫁レイチェルは真っ赤なドレスを着ていて、僅かな光でもその色が分かるのも良い。これ、絶対ジョーダン・ピールは観た上で『NOPE』に引用してるでしょ。

・作品データ

原題:Encounter At Raven's Gate
上映時間:94分
監督:Rolf de Heer
製作:1988年(オーストラリア)

・評価:90点

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