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ミケランジェロ・フランマルティーノ『The Gift』終わりを待つカラブリアの村

『四つのいのち』『洞窟』などスローシネマで世界を魅了するフランマルティーノの初長編作品。舞台となるカラブリアの小さな村カウロニアは、1950年には1万人以上の住民が暮らしていたが、今となっては数百人程度まで減ってしまった。そんな寂れた村で暮らす人々の物語である。主人公は山の上で農業を営む老人と、村で唯一くらいの若い女性である。彼らを含めた住民の時間は止まって見えるくらいゆったりとしていて、印象的な波打ち際に転がる廃船や山に捨てられた廃車のように、無気力に終焉を待っているのだ。恐らくなんらかの精神的病を患っていそうな若い女性が、村のおっさんたちの性のはけ口のように使われているので、他の作品に比べると(比べなくても)かなり生々しさとグロテスクさで溢れている。山肌を直接町として切り開いたような地形をしているので、子供がボールを落とすとあれよあれよという間に下へ下へと転がっていくシーンが印象的。いつものごとく全く会話が登場せず、あっても全く重要でない感じ、フランコ・ピアヴォリなんだよなぁ…今回は人間と土地の話だし(作風は全然違うんだけど)。

ミケランジェロ・フランマルティーノは初長編『The Gift』も併せて観たけど、結局『洞窟』が一番好きかな。

・作品データ

原題:il dono
上映時間:80分
監督:Michelangelo Frammartino
製作:2003年(イタリア)

・評価:70点

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