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ダリオ・アルジェント『ダークグラス』アルジェント印の現代風ジャッロ!

大傑作。『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』以来10年ぶりの長編作品。高級娼婦を狙った殺人事件に巻き込まれた主人公ディアナが、犯人に追われた先で中国人一家の車と正面衝突して視力を失い、相手の夫婦も事故死させてしまうが、孤児となった一人息子のシンと共に事件解決に乗りだすという話。序盤からスパスパと話が進んでいき、刑事から何から邪魔な人物はさっさと消されていく感じが良い。それでいて、自分のやりたいことは全部やってるっぽい(美女と鮮血、盲目の美女、美女と蛇、真夜中の殺人、アーシアいじり)のがアルジェントだなと。医者から視力回復が絶望的と言われたシーンなんか、見えないはずのディアナのPOV的なショット(やりたいこと)があり、当たり前のようにサングラスをスッと掛け(物語の時短)、アルジェント文法極まれりという感じ。というか寧ろ、現代的な匂いを感じさせながら(言い訳的な"アップデート"ではない)、ジャッロの基本はしっかり守っているというのが凄い。ディアナは盲目となって自暴自棄になるが、それでも生きていくために杖の使い方や盲導犬の導き方などを習得し、娼婦としての仕事を続けていく。これがしっかり描かれているからこそ、彼女や友人たちの優しさと殺人鬼の凶暴さの対比が際立つのだ。

犯人の顔を明かさぬために、車を第二人格みたいに映すシーンも多く、それもひたすら上手いんだが、主人公が盲目なので対面で犯人を明かしてもしょうがないと思ったのか、変なタイミングで犯人の顔が明かされる。あまりにもあっけないので笑ってしまった。最早、誰が犯人かすらどうでもいいというか、犯人判明が見せ場じゃないんだろうな(実際、誰が犯人でもどうでもいい作りになってる)。

・作品データ

原題:Occhiali neri
上映時間:90分
監督:Dario Argento
製作:2022年(イタリア, フランス)

・評価:90点

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