マガジンのカバー画像

禍話俺セレクション

31
運営しているクリエイター

#怖い話

禍話リライト 怪談手帖『つきまとう女』

大手企業で管理職を務めるYさん。彼は写真嫌いで有名である。

カメラを向けられるだけでなく、携帯電話でのちょっとした撮影の端に自分が写り込むことでさえも嫌がるという筋金入りで、周囲からも不思議がられているそうなのだが、その理由をYさんはあまり人には話さない。

「少し変な理由なんでねぇ。信じて貰えても、貰えなくても、気持ち悪がられるだけだし……。

……あなたも、話半分で聞いてくださいよ?」

もっとみる
禍話リライト「かわわら」(怪談手帳より)

禍話リライト「かわわら」(怪談手帳より)

形五六歳の小児のごとく、遍身に毛ありて猿に似て眼するどし。常に浜辺へ出て相撲を取也。人を恐るゝことなし。され共間ちかくよれば水中に飛入也。時としては人にとりつきて、水中へ引き入レて其人を殺すことあり。河太郎と相撲を取たる人は、たとへ勝ても正気を失ひ大病をうくると云。(略)河太郎、豊後国に多し。其外九州の中所々に有。関東に多し。関東にては河童(かはわらは)と云也。

『日本山海名物図絵 三』より「豊

もっとみる
禍話リライト「大広間の女」

禍話リライト「大広間の女」

「肝試しは怖いけど、ちゃんとした明るいライトを持っていけば大丈夫!」
こんな風に思っている人がいたら、考え直した方がいい。そういうお話である。

******************

その旅館は、円満に終わったという。
金銭上のトラブルなどがなくても、後継ぎがいないと営業を続けるのは難しい。廃業を決めた経営者は適切に手続きを進め、どこかへ隠居した。建物の取り壊しこそしなかったものの、中の機材や設

もっとみる
【怖い話】 死者のいない弔い 【「禍話」リライト99】

【怖い話】 死者のいない弔い 【「禍話」リライト99】

 因果因縁のない場所に現れるのは、幽霊ばかりではないらしい。

 数十年前のこと。

 Mさんは学生時代に、映像研究会に入っていた。作品を観て語り合うだけではなく、実写映画を撮ったりもするサークルだったという。

「大学から出るお金は雀の涙でしたけど、ほら、そこは工夫と努力でなんとかしてました」

 部長から1年生まで仲良くって、時には意見の相違やケンカもありましたけど、楽しい日々でしたよ──とM

もっとみる
【怖い話】ふすまの部屋

【怖い話】ふすまの部屋

207 :本当にあった怖い名無し:2012/12/27(木) 22:33:56.24 ID:oAt9Z5nmI

中学一年生の頃、私(女)はいわゆる“ぼっち”という奴だった。
完全に一人というわけではなくて、友達と普通に話したりはするけれど、特定のグループには所属していない、
準ぼっちの立ち位置。
話しかけられれば話すけど、自分から友達に歩み寄ることはなかった。
ぼっちの人なら分かるかもしれないけ

もっとみる
【怖い話】 窓の外のお姉さん 【「禍話」リライト97】

【怖い話】 窓の外のお姉さん 【「禍話」リライト97】

「小4の時の体験なんだけどさ、これ……他の人には言わないでくれる?」

 Rさんからこの話を聞いたのは、25年ほど前のこと。
 当時は中学2年生。夕方、校舎の目立たぬところでひっそりと聞かせてくれた。

 以来ずっと、「お蔵入り」になっていた代物なのだが──

 最近になって、
「あの女の話さぁ、もうおおっぴらにしちゃっていいよ」
 とRさんから連絡があった。
「もう故郷の連中とは、あんまり付き合

もっとみる
【怖い話】 深夜のファミレス 【「禍話」リライト95】

【怖い話】 深夜のファミレス 【「禍話」リライト95】

 Xさんは学生時代の夏休み、アルバイトをしていた。

「夜のね、ファミレスなんですよ。深夜から明け方までの」

 郊外店だったし、立地もあまりよくない。夜中には客足はぱったりと途絶えてヒマになる。しかも、

「夜間手当ってのがつくわけです。いやぁ、ウマいバイトでしたよ……」

 そんなゆるいバイトだったので、あの日の夜のことは今もよく覚えているそうである。

 夏休みも半ばの、ある夜のことだった。

もっとみる
【怖い話】 招きプレハブ 【「禍話」リライト84】

【怖い話】 招きプレハブ 【「禍話」リライト84】

「変な山に行った友達が、カノジョと別れることになった、って話なんですけど」
 とCさんは言う。
 それは大変だ。オバケが出て、彼氏の方が先に逃げちゃったとか?
「いえ、そうじゃなく」
 じゃあ、オバケに祟られちゃったとか。
「ちょっと違うかなぁ。あの~、カノジョが、出たんですよ」

 …………よくわからないので、イチから話を聞いてみることにした。

 某所の山奥、車で入ってから少し分け入ったところ

もっとみる
【怖い話】崩れ神輿【「禍話」リライト73】

【怖い話】崩れ神輿【「禍話」リライト73】

 妖怪や民俗学に造詣が深く、そのような類の怖い話を集めているYさんという人がいる。
「祭り覗き」や「ぬりかべ」などの収集品もあるそのYさんが聞いてきた、お神輿が倒れて壊れる話である。
 

 この話の体験者Aさんは若い頃、某地方を旅行していたそうだ。
 ひとりきりの静かな旅行であったが、立ち寄った町が何やら騒がしい。町の人に聞いてみると「お祭りをやっている」という。
 屋台がぞろぞろ並ぶような華や

もっとみる
【怖い話】家の蔵の絵【「禍話」リライト68】

【怖い話】家の蔵の絵【「禍話」リライト68】

 昭和の頃の出来事だ。
 現在その家はとっくのとうに無くなってしまっている。

 体験者のSさんも、「なにぶん昔のことなので、記憶が不確かな部分もあるんだけど……」と言いつつ、訥々と語ってくれた。

 中学生の時分に、男友達の家に出向く機会があったのだそうだ。
「どういう理由で行ったのかはイマイチ思い出せなくて……」

 学校の宿題でもあったのか、面白いゲームでもあったのか。それとも単なる気まぐれ

もっとみる
【怖い話】木箱の仏壇【「禍話」リライト61】

【怖い話】木箱の仏壇【「禍話」リライト61】

 夢と現実が繋がっている、ということは、たまにあるようだ。

 Aさんは高校のある時期から、同じ夢を頻繁に見るようになったという。
「仏壇の夢なんですけどね。いや、仏壇が『ない』夢かなぁ……」
 それは怖い夢なんですか? と聞くと、
「いや、別に怖くなかったんですよ、不思議な夢ではありますけど。でも、実際のところはね──」

 それはこんな夢であった。

 ある親戚の家、玄関の前にAさんは立ってい

もっとみる
【怖い話】 お迎えコンビニ 【「禍話」リライト42】

【怖い話】 お迎えコンビニ 【「禍話」リライト42】

 最近、やたらとコンビニが建っている。あなたの住まいからちょっと歩けばコンビニがあるだろう。コンビニの近くにコンビニができていたりさえする。
 適度な広さの土地さえあればすぐにコンビニが建つ。細胞が増殖しているかのようである。

 ただ、そのコンビニがどんな場所に建っているのかは、ちゃんと知っておいた方がいいかもしれない。 

「単位も稼いでましたし、そろそろいいかな、って思ってたんですよね」
 

もっとみる
【怖い話】キャンプの嘘話【「禍話」リライト37】

【怖い話】キャンプの嘘話【「禍話」リライト37】

 

 暑い夏だったという。

「やべーな、暑いなオイ」
「マジで夏だよな」
「なんか、夏休みっぽいことやりてーな」
「やりてーな。川とか海に行くとか」
「スイカも食いてぇし花火もしてぇな」
「バーベキューもいいよなぁ」

 この体験をしたRさんはいわゆるヤンキーで、同じような仲間5、6人とつるんで車を飛ばしたりパチンコをしたりして日々を過ごしていた。
 ただし「不良」というほど悪くはない。チャ

もっとみる
【怖い話】9人いるゥ……!【「禍話」リライト35】

【怖い話】9人いるゥ……!【「禍話」リライト35】

「少年自然の家って言うとさ、私も、なんていうか……つらい体験したことがあるんだけどね」

 居酒屋で、少年自然の家(山にある児童宿泊施設。小中学校のレクリエーションに使ったりする)にまつわる怪談をしていた際、出てきた話。
 耳や鼻にいくつもピアスをつけ、カラコンを入れているタイプの、ヤンチャめなお姉さんがそう切り出した。
 名前を仮に、Oさんとしておこう。
「もちろん、今みたいになってない頃の話ね

もっとみる