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【読書感想文?】星新一「こんな時代が」【『夜のかくれんぼ』掲載】

・感想文?の前に…

 日頃から記事のヘッダー画でお世話になっているTOMOさんが先日、熊本にある閉店になる個人書店についての記事を掲載されました。

 この記事を読んで我が家の奥地?から掘り出したのが、
『夜のかくれんぼ』

(文庫は1985年、単行本は1974年発行)

 せっかく掘り出したので、巻頭に掲載されている
「こんな時代が」の感想文を掲載します。
何十年ぶりに読んだかな…。


【読書感想文?】星新一「こんな時代が」【雑な粗筋編】

 独身と思われる男が、寝そべってテレビを視ている。
テレビは快適な映像を流している。
 掃除にマッサージ、さらにピアノの演奏やゲームの相手そして電気自動車の運転を行うのは、一緒にいる「精巧な万能ロボット」。
寝ずに防犯の担当もこなし(ただし犯罪そのものが起きないらしい)、
ゲームでは適度に負けてくれるとのことで、
この時代に暮らす人間がストレスを感じないように工夫いるらしい。
なお、アシモフのロボット三原則らしき存在(下記参照)も出てくる。

 だが、文中に示される問題点がふたつ。
 ひとつは、主人公の男が寝たままテレビの映像から切り替えた
テレビ電話で友人と話している時の次の会話からうかがえる。
主人公
「平穏のくりかえしのなかで、月日が流れてゆく。ひとつ、なにか、
ぱっとしたことでも起ってくれないかなあ
友人
「大事件というやつがか」
主人公
「まあ、そんなところだ」
友人
それは危険思想というものだぜ。もっとも、そんな考え方の人も
かなりいるだろうな。
しかし、ことを起こすために自分で行動に走るやつなんか、
あるわけない。
だから、いくら期待したって、むだというものだ。
危険思想じゃなくて、時代遅れの感覚というべきかな。
わかりきったことじゃないか」
 もう少し続いた主人公と友人との会話を聞きつけたロボットが、
ピアノ演奏や本の朗読、そして電気自動車でのドライブを提案した。

 ここで、もうひとつの問題が登場する。
 食料の配達ロボットがやってきて、一週間分の食料が届く。
家のロボットがそれを受け取りその一部で料理を作り始める。
 その食料も、住んでいる「快適な部屋」も、万能ロボットも、
世界中みな平等に支給されている。肉体的な労働など、しなくていい。

 しかし、食料だけがたりない。
コンピューターによって正確きわまる公平な配分がなされている。
それは生きているだけがやっとという、わずかな量なのだ。

ロボットが話しかける。
「空腹感については、わたしにはわかりません。
同情のしようがありません」
 ちきしょう、どこかへ食料を盗みにゆくか。男はそう思う。
だが、思うだけなのだ。
そんな余分な体力はない。
第一、五十メートルを歩けるかどうかも自信がない。
ねそべっているのが一番だ。

 だから、犯罪者など出るわけがない。
まして、戦争などという大それたこととなると、
できるやつなど、世界にだれひとり……。
(了)
※上記太字は、引用者による。


【読書感想文・本編】 

 アシモフのいわゆるロボット三原則が適用されていると思われる、
この世界。


 確かにこの話におけるロボットは、人間に対して敵対的な行動は取っていない。
 主人公の男も、生存に必要な最低限の食料は得られている。

 だが、ただ生きているだけ。
 ただ、生かされているだけ。

 そしておそらく家庭用ロボットは、上記三原則の第1条

 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

にある「危険」に、この話の状況は該当しないと判断するように造られているのだろう。

 しかし、その「危険」は誰がどのように判断しているのだろうか?

 AIが判断?
 AIは与えられた条件と情報に従って判断するだけなのでは?


(2018年の記事)

(あまり事態が変わっていないことも窺える、2024年2月の東京新聞の記事)

 星のこの作品は、正確なことは分からないが1974年以前に発表されたものなので、
「今の世の中はAIがあるから、…」
という声が出るのは分かる。
 でも、そのAIは与えられた条件により情報収集・判断も大きく変わる。
 例えばnoteにアクセスしたとき、TLの上位に掲載される記事が
①ログインしてからTLにアクセスしたとき
②ログインせずにTLにアクセスしたとき
…とでは、かなり異なる。
 これは、①においてはそのクリエイター向けに情報の選別を行なうようアルゴリズムが働いていることを示す。noteという企業の選択としては、当然のことで、ここに

「AIに与える条件・情報が変わることによる選択の変化」

の存在が窺える。
 そして現実的な問題として、既に政治過程の世界における壁のようなものが存在していることを、下掲『デジタル・デモクラシーがやってくる』が指摘している。

(2020年発行。やっぱ学士助手スゴイと思った)

 シンギュラリティが来たら、変わるのかもしれない。
 でも、それは断言できない。

 ひょっとしたら、もっと巧妙な条件付けが誰かによって行なわれるかもしれないし、もしかしたらAIに勝手に与えられた世界に順応しないと生きていけないという「悪い方のSFみたいな」世界になっているかもしれない。

 星の本作はAIこそ出てこないものの、そんな世界の到来を見据えているのかもしれない。懸念していたのかもしれない。
 上掲『東京新聞』掲載記事のような動きで果たして変わるのだろうか。
 分からないとしか言いようがないが、ひょっとしたら?とも思う。
 願わくば、星の懸念を乗り越える日が来てほしい。
 たぶん私は、時間切れだろうけれども。

 なお、上記の
「深刻な見方」
とは別に、星の考えた・予想した未来と現代が多少違うことが同作から窺える。
 例えば、同作においてはオールインワンといえる一台の万能ロボット。
 でも現代は、各目的・各機能ごとにシステム開発が進んでいる。
 例えばヘッダー画にある、ルンバ。
 電気自動車は自動運転の方向へと進んでいる。
 星の予想と少し違う進化は、結局どんな世界へと進むのだろうか?

(感想文は、ここまで)


【 余 談 】

 『夜のかくれんぼ』を発掘する前に、AIを使って遊ぶ記事を中心に掲載している田中勇道さんが、アインシュタインが現代に来たら?という記事を掲載されています。

 アインシュタインはたぶん、ルンバが何で存在するのか理解できないかもしれないかなと思います。なんでロボット造らないの?と。
 だってルンバは、こんな事態もあるからね😙

 ルンバ開発陣は、こういう事態を想定したのかな?🤣🤣🤣
 万能ロボットだったら、確かに大丈夫ですね。

 もうひとつ、星とは別の見方を。
 小説家・谷俊彦さんが、AI主導で決めているとみられる社会において男性を主人公にした話を出されています。この話には、星が取り上げなかった女性と子供も出てきますので、参考までに貼り付けます。

 なかなかシュールですね…。

ではでは(_,''' ▽ '')

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