笑わない男
僕は18歳から10年間、正月を家族と過ごしたことがなかった。
だが、当時の僕の環境ではこれは普通のことだ。
スキーをしている大学生は、年末年始こそが練習時であり、雪山で新年を迎えるのが当たり前なのだ。
そして、僕がアシスタントをしていたスキー学校では、年末年始には毎年激しい飲み会が開催されていた。
その飲み会では、色んな人からの差し入れで焼酎や日本酒の一升瓶が並び、後輩たちは先輩やスキー学校の先生に勧められるままにお酒を飲まなければならない。
中でも、"ゆく年" と手書きのラベルが貼られた一升瓶は必ず年が変わる前に飲み干すさなければならないし、
"くる年" のラベルの一升瓶は必ず年が変わってから飲み干さなければならない。
僕は大学時代はイジられることが多かったため、お酒一気飲みのコールをバンバンかけられ、胃に溜まったお酒をいち早く処理すべくトイレへ駆け込んだ。
しかし、この飲み会の恐ろしさはお酒だけではない。
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