多様性が理解される時代に必要なこと
最近「多様性」「ダイバーシティ」という言葉をよく見聞きするようになりました。その意味は、企業などの組織においては「個人の属性にかかわらず、さまざまな人々が自分の個性を生かして活躍できること」と理解されています。
しかし、日本でこの理解が一般的になってきたのは、2018年に経済産業省が「ダイバーシティ2.0」を提唱して以降のごく最近のことです。2010年頃、まだ私が企業の人事の責任者をしていて、私は「個性を生かした活躍」をダイバーシティとしていましたが、多くの企業では「女性活躍推進」をダイバーシティと呼んでおり、採用活動の会社説明会で学生のみなさんに理解してもらうのに苦労した思い出があります。
多様性が理解されるということはすなわち、正解が一つではなくなるということです。
組織においては、人それぞれの考える「仕事に対する考え方」「働き方」「人間関係」「自分のキャリア」などがちがうということです。そしてこれらの違いを互いに尊重し合いながら協働していくという世界観なのです。
しかし日本の現実の職場では、上司や先輩が仕事に対する考え方、働き方を押し付ける、仕事に必要な最低限の人間関係しか作らない、自分のキャリアが迷子になるなど、多様性が理解されているのとは程遠い世界があいかわらず展開されています。
一人ひとりが自分の考えを表明できない
なぜ多様性が頭で理解されていても、日本の現実の職場ではそうならないのか?
一つの正解を探すという仕事のスタイルから変化できていないなど、いくつか理由はあるのですが、その中で今回は、一人ひとりが自分の考えを表明できないことを取り上げようと思います。
多様性が理解されると、一人ひとりが自分の考えを表明することが求められます。また、一旦表明した考えを変えるときには、合理的な説明を求められます。
そのためには、自分の考えが明確になっていなければなりません。そしてなぜそう考えたのかという自分の価値基準(価値観)が明確になっていなければなりません。
自分の考えや価値基準を明確にして、それを表明するのは大変です。誰かが言っている考えに相乗りするほうが楽です。
でも、多様性が理解される時代の流れが止まることはありません。大変ですが、そうせざるを得ないのです。
多様性が理解される時代を生きていくために
多様性が理解される時代を生きていくために必要なことが3つあると思います。
1つ目は「自己理解」です。自分の価値基準、強味、弱み、仕事観、人間関係の作り方、自分のキャリアなどを理解することです。これがないと、自分の考えをまとめることができません。
2つ目は「表明すること」です。自分の考えを表明しない限り、多様性として認めてもらうことはできません。日本社会、特に日本の組織は「同調圧力」が強く、表明することには勇気が必要かもしれません。
3つ目は「俯瞰的な視点」です。多様性が理解されるということは、自分と異なる他者の考えも尊重するということです。自分の考えと他者の考えのどちらが優れているかを争うのではなく、自分の考えと他者の考えを総合してよりよい高いレベルの考えを生み出さなければなりません。
そのためには自分の考えに固執することなく、自分に対する他者の評価を意識することなく、常に俯瞰的な視点でものごとを見ることが必要です。
吉田善実
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