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#文学
ザ・ウィッシュボーン
この世界で語られる言葉は、自らに込められた意図やその目的を、自らの意志で語り始める。
――第1の願い
第2願望期。夏。フランツの駆るバイクは打ち捨てられた廃墟の街を走っていた。辺りには霧のように濃い砂煙が舞っている。並び立つビルは水底の海藻に似て、輪郭だけがおぼろに揺れていた。
フランツは分厚いゴーグル越しに前方を睨んだ。昼間だというのに辺りは暗い。空にわだかまるねがいの分厚い層に阻まれて
ウィキ・ザ・デスペディア
1. ナジャドは追われる身だ。走り去る列車に飛び乗って追っ手を撒いたこともあれば、神父に化けて検問を突破したこともある。百戦錬磨とは言わないまでも窮地を脱するだけの才覚はいつでも持ち合わせていたし、何より彼には集合知が味方についていた。集合知とはつまり、ウィキペディアのことだ。彼は脳幹に搭載したHDDをウィキペディアと同期していて、そこから尽きせぬ泉のように情報を汲み出すことができる。
ナジャ