希与実

こんにちは。希与実(キヨミ)と申します。よろしくお願いいたします。不定期にて作品を投稿…

希与実

こんにちは。希与実(キヨミ)と申します。よろしくお願いいたします。不定期にて作品を投稿させていただきます。ご興味をもっていただければ幸いです。

最近の記事

短編読切「親転地」

「こんにちは。沢木大志と云います。初めての所で何も分かりません。色々と教えてくれたら嬉しいです。仲良くしてください」  転校生の大志はクラスの皆に挨拶をする。  クラスの皆とは直ぐに打ち解けていた。 「えっ?もうスマートフォン持ってるの?」 「えっ?逆に持ってないの?」 「でもそれって見守る的な?」 「違うよ。そんなのダサいでしょ、コレ」 「うわ~最新モデルじゃん。もしかしてゲームとか」 「まあ制限はあるけどある程度繋がる」 「ああ、良いな」 「まあ、今度

    • 「HOTEL315」 17/17最終話

        ウエルカム・ドリングを飲んだ同じ場所で航大と愛実はカウンター越しで対面する。航大はカウンター内で膨大なお酒を背にして立つ。   愛実は横一列に並ぶカウンター席のほぼ中央の席に座る。そのシチュエーションは前に訪れた時と外見的に何も変わらない。しかし2人の内面はこの数時間で大きく変化した。遠い昔の思い出。それはお互いの宝の記憶。その時期とその時の感情に戻れるはずも無いが、今目の前にいるのがその宝だった事を認識できた事は、長い間気になっていた空洞が埋められたと思える瞬間だった。

      • 「HOTEL315」 16/17話

          サービスワゴンを押すスタッフが数人会場に姿を現わす。そして各テーブルに少し間を開けスタンバイすると、最後にパティシエール安良佳仁が同じようにワゴンを押して会場に入る。  佳仁は国王・王太后が映るスクリーンに被る事なくそれを背にしてサンズ一族の方を向いてスタンバイする。少し開けてその横には沙奈、未来がそれを見守っていた。佳仁がサンズ一族の方へ一礼する。沙奈程大きなコック帽は付けていない為、沙奈程普通とは違う礼ではない。 「本日の最後を担当させていただきますパティシエの安良佳

        • 「HOTEL315」 15/17話

          〇HOTEL315  8・夕刻 ディナー最中 肉料理から   スタッフがサービスワゴンを各々のテーブル目指してディナー会場に登場すると、少しテーブルとの間隔を保ち駐車させる。平たい銀プレートと少し大きめの陶器の器。更にテーブル人数分のプレート。子供がいるテーブルには既に盛り付けられた料理が別にあり、先に子供の前にその料理を運ぶスタッフ。 「本日のメイン、肉料理は最高の牛から最高の部位をそれぞれにお分けいたしました。お子様にはフィレ肉、リブ、サーロインをミンチにして直火したハ

        短編読切「親転地」

          「HOTEL315」 14/17話

           いまにも泣きそうな表情でその一戦をテレビ放送で見る尚美。健司はテレビに見入っている尚美を見つめ、そーっと立ち上がる。それは尚美の視界から外れるように。それも違和感なく自然とフェードアウトするように静かに横移動をしながら。それは時にパントマイムで空気のガラスか壁を手で固定しながら身体をずらしていくような少し異様な動き。 「セブン・エイ・・」   武士がスクッと立ち上がる。それはあの衝撃を受けたのがウソのように勢いよく。 「あっと、立った、立ちました。エイト・カウントをレフリ

          「HOTEL315」 14/17話

          「HOTEL315」 13/17話

          〇HOTEL315  7・夕刻 ディナー最中   サンズ一族のディナーは進み、テーブルからスープの容器が下げられる。大人にはコンソメスープ、子供にはコーンクリームスープが提供されていた事が下げられた容器の後に確認できる。   別のスタッフがワゴンを押してくる。その上には蓋をしたオバール型の銀容器が運ばれる。また別のスタッフが枠に模様が施された大きく少し底が深い皿をそれぞれの参加者の前に置く。 「アチッ!」   その皿を触ったサンズ一族の1人が云う。その皿の上にソースを引き詰め

          「HOTEL315」 13/17話

          「HOTEL315」 12/17話

            「ではこのHOTEL315が用意してくれた最高の時とサンズ一族に、乾杯」 『乾杯』   スクリーンでは国王と王太后がお互いのグラスを当てて衝撃音を発しシャンパンを飲む。会場のサンズ一族はそのまま飲む者、グラスを当てる者、飲まずにそのままグラスを置く者、それぞれ。   そして会場内には拍手が轟く。それは各々の感情が現れたような拍手。サンズ王妃もそれほどでは無い拍手を送る。スクリーン画像では満面の笑みで拍手する2人。その最中会場袖から沙奈が現れスクリーンに被らないように立

          「HOTEL315」 12/17話

          「HOTEL315」 11/17話

           武士と尚美はホテルの一室内で小さな丸いテーブルを境に対面するように椅子に腰かけていた。武士の前にはビールの缶が。尚美の前には湯呑がテーブル上に確認できる。 「もう十分だから、今からでも帰ろ」 「今日、今日で最後だから」 「それは知っとる。でもその最後の意味が違うから。だから今から帰ろ。もうこんな世界にいる事はないから。もう十分楽させてもらったから」 「今日、今日だから」 「勝ったらどうなるか知ってる?帰って来れないんだよ。何もなくなるんだよ。武士を失うのは無理!」   尚美

          「HOTEL315」 11/17話

          「HOTEL315」 10/17話

          4・格闘リーグ戦会場 準決勝戦再び 「ファイブ、シックス、セブン・・」   リング・レフリーがコーナーサイドで倒れている成牛選手にカウントを言い渡す。カウントしながら一向に動く気配がない成牛選手の近くへ顔を覗かせると、目は見開いたままだがそこに焦点は合ってはいない。   更に口を小刻みに震わせ泡が少量ながら噴き出してくる。それを確認したレフリーがすーっと背筋を伸ばし頭の上で左右の手を交差、そしてまた手を広げまた交差。その動作を繰り返ししながら叫ぶ。 「ストップ、ストップ

          「HOTEL315」 10/17話

          「HOTEL315」 9/17話

          4・昼を過ぎた頃・カジノバー   また宴会場のような部屋の前に着くと両開き扉で、どちらかと云うとヒッソリと存在する、そんな部屋の外見。航大は左側の扉を引き通路を確保すると右手で中へ誘導して軽く頭を下げる。  サンズ王妃はその誘導先に足を踏み入れると、その中は外見の地味さとは異なり、ついさっき居た宴会場とも異なる豪華さ。壁の所々に鏡があり天井にはシャンデリア。奥にバーが設置されていた。 「ここは?」 「カジノです」   部屋の中央にはトランプ台が数台設置されていた。 「おや

          「HOTEL315」 9/17話

          「HOTEL315」 8/17話

          『大会新記録!』   前回のタイムをまた更新。海人は両手を上げて雄たけびを上げる。会場は祝福の拍手を海人に贈る。   しかし奈波だけは動じない。海人は奈波がいる最上段に目をやるといつもと違う奈波の様子が気にかかり自分もいつものように喜べない。 「なんだよ、なんなんだよ」   奈波の様子が気に入らない海人。海人はプールサイドに移動してすぐさま水と別れるとそのままレーン4へ移り自分の荷物を手にする。そしてまた奈波の方を向く。奈波は手を振ることも何かを合図する様子もない。 「海

          「HOTEL315」 8/17話

          「HOTEL315」 7/17話

            海人は扉を開いてそっと中を覗く。一歩中に入って扉を静かに、音がしないように閉めると少し奥の方に移動式の仕切りカーテンが確認できる。   奥には陽射しが気持ちよさそうに入り込み、そこに写る2人のシルエットが見える。海人は何かを感じたのか息を殺してその場に立ち尽くす。   やがて左側のシルエットが肩からノースリーブを脱ぐような仕草をし始め上半身から下部へ押し下げて行く。すると胸部分の豊乳が形よく映って見えた。海人は 『声は発しない』 という意味合いなのか右手で口を覆う。

          「HOTEL315」 7/17話

          「HOTEL315」 6/17話

          「おっとこれは大学生の新記録が出た!魚住選手、。魚住海人選手が男子大学生の歴代記録を塗り替えました~」   大会実況アナウンサーが海人の新記録を伝える。海人はコースロープに両腕で捕まっていたが自分のタイムを電光掲示板で確認すると右手を突き出して喜んだ。   観客席でその雄姿を見ていた同じ大学の水泳部関係者は大きな拍手と歓声を海人に送っていた。その中には海人の恋人、同じ大学で水泳部飛び込み部門所属の糸海奈波(イトウミ・ナナミ)の姿もあった。   海人は観客席に大きく手を振ってア

          「HOTEL315」 6/17話

          「HOTEL315」 5/17話

          「やあ沙奈」 「よろしくお願いします」 悟志は小さな白い陶器を用意してシャモジは入れたまま小さなレードルを使っって中のスープを白い陶器に移し替える。沙奈はそれをまた腰をおりながら両手で受け取る。     まず匂いを嗅ぎながら、少し息を吹きかけて温度を調節し口にする。目を見開き更にもう一口。小さく息を吐くと残ったスープを一気に飲みほした。 「あ~、結構なお点前で・・・」 少し息を吐くのと言葉が混じったように。 「それはどっちの意味かな」 「もちろん、美味しゅうございました、の方

          「HOTEL315」 5/17話

          「HOTEL315」 4/17話

            朝の会議が終了し沙奈が厨房に戻ってくると丁度朝のバイキング料理が厨房に下がってくるところだった。調理場の澄に調理をする邪魔にならないようなスペースが設けてあり、その台上に下がってきた銀食器に盛られた冷製料理、チューフィングに盛られた温製料理、パン類も飲み物も、載せられるだけそのテーブル上に料理人の手によって並べられる。   沙奈はその並べられた料理をひとつひとつゆっくりと眺めながら端から端へと歩いて行く。あと一口程度でなくなる料理もあればその大皿いっぱいに残っている料理も

          「HOTEL315」 4/17話

          「HOTEL315」 3/17話

           レストランレセプションにはマネージャー伊庭役郎(イバ・ヤクロウ)が立つ。 「おはようございますグランシェフ」#%$&! 「おはようございますマネージャー」*+&%$   その挨拶はお互い歯を食いしばったまま開く事なく口の筋肉だけで発せられ、その言葉の先端には鋭利な刃があるようにゆっくりとした口調ながら鋭く響く。   2人共顔では笑っているがその笑顔にはその言葉と同様に丸みが存在しない。何がこの2人をこうさせたのか? 沙奈はレストランから離れてパブリックスペースへ。   

          「HOTEL315」 3/17話