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『Ponniyin Selvan 2』

4月28日(金)、公開初日の夜にさっそく見てきた。

『Ponniyin Selvan』とは
1954年にKalki Krishnamurthyによって書かれた同名の小説を原作とした超弩級歴史活劇。
インド南部に実在したチョーラ王朝が舞台で、約1,000年前に全盛期を迎えたスンダラ・チョーラとその子どもたち、彼らの側近やライバルを中心とした宮廷模様や権謀術数が描かれる。
タイトルの「Ponniyin Selvan」とは「カーヴェリー川の息子」という意味で、国民から深く愛されている王子の1人アルルモリのあだ名。幼い頃、カーヴェリー川で溺れていたところを謎の女性に助けられたことに由来する。

公開初日の夜ということで、映画館は大盛況。
タミル人に古くから愛されてきた作品の映画化ということで、高齢者も多く年齢層が幅広い。

今回は英語字幕付きで何となくの内容は理解できたが、地名や人物名が難解でちゃんと覚えきれていないので、細かいあらすじは書けない。
そのうち、インド映画に詳しい人による正確なあらすじがネット上に出てくると思うので、この記事ではぼくが感じたこの映画の魅力を2つ紹介する。

前半と後半のコントラスト

インド映画は途中で休憩が入る。
この映画は165分の作品なので、ちょうど真ん中の80分くらいのところで休憩時間になった。
そして、前半と後半で映画のトーンがガラッと変わっていた。

前半は、お祭りや宮廷の煌びやかな様子が多く、全体的に楽しくて明るい雰囲気だった。
コミカルな場面も多かったし、乱闘シーンもほぼ流血がなくて(ジャッキー・チェン風)ほのぼのと観れる感じ。

一転、後半に入ると映画のトーンが全体的に暗くなる。
シリアスな場面が多くなるし、戦闘シーンでは派手に血飛沫が上がるようになる。
クライマックスに向けて、観客の気持ちを一気に煽り立てているような感じだ。

南インド映画でよく観られる、派手な色彩の祭り、明るく勇壮な音楽、コミカルなシーン、血潮たぎる乱闘などがふんだんに盛り込まれていて、インド娯楽映画の王道であると感じた。


Karthiの好演

この映画は、チョーラ王朝の最盛期を築き上げた2人の王子が主役ではあるものの、物語を進めていくのはKarthi演じるVanthiyathevanという人物。

彼は2人の王子の親友でありながら忠臣で、伝令係となって領地内を駆け回る。
道中、謀反の計画を漏れ聞いたり、命の危機に陥ったりしながらも、持ち前の機知で何とか切り抜けていく。
王女と良い雰囲気になったりしながらも、決して出しゃばることがなく、ちゃんと2人の王子の引き立て役に徹していて、キャラクターとしてのバランスが取れていると感じた。

Karthiの丸顔で目がクリっとした風貌も愛嬌があって親しみを感じやすく、物語の展開を軽快に進めていく忠臣役として、かなり適役であるように感じた。




さて、この映画は日本人の方と一緒に観たのだが、観終わった後に日本だったら何がテーマになるだろうかという話をした。
つまり、日本人なら誰もが知っている歴史的な出来事で、尚且つ登場人物が現代人にも愛されているような史実は何か。

中世の戦乱ということを念頭に置くなら、源平合戦や応仁の乱、戦国時代あたりか。
王朝の対立や危機に着目するなら、承久の乱や元寇、南北朝時代といったところ。
あるいは登場人物の知名度でいうと、明治維新や戊辰戦争なんかが当てはまるのかもしれない。
ちょっと方向性は変わるが、現代人に愛されているキャラクターという点では、『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』あたりも候補に上がるのかもしれない。




『Ponniyin Selvan』の俳優陣はタミル映画をはじめとして、南インド映画界を牽引するような豪華キャストが揃っている。
それぞれが演じるキャラクターも個性あふれるものであるが、決して役柄を食い合っている感じがしない。
物語は今回のPart 2で完結したが、もう彼らに出会えないのが惜しいくらい魅力溢れる作品だった。

間違いなく、タミル映画史に残る傑作として語り継がれていく作品になることだと思う。

日本でも一部で自主上映がされているようなので、興味のある方はぜひ。


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