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短歌

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#同人誌

短歌 風の歌

われもまたオブジェのひとつかもしれぬ美術館のロビーの椅子に

やまなみの裾をほのかに暮れ残す秋桜揺れてゆられてひとり

奥院のもみじ織りなす色の彩(あや)きっとサヨナラできるとおもう

死ぬほどに我れが欲しくば奪い去れますらおたちの三角四角

お笑いのコンビのようにこれからを吹きゆく風の歌をうたおう

こもごもの後に来るとう現身のたゆたうような眠りを愛す

九月の焦り

美しい記憶を欲りていたりけり堆積岩の不思議な模様

お隣の開け放したるドアごしに親子喧嘩が今日も聞こえ来

茜さすベランダゆえに鳴きとおすつくつくぼうしの九月の焦り

またひとつ取り残されてまたひとつ打たれ強くなるのもいいか

坂道を上り詰めた家もいいねほら借景になっている庭

たおやかに棹をしならせリール巻くカラカラ君の逞しき腕

風早の海また海も辛かろうわれとう港に流れ着かんか

今まさに

未曽有の
100年に一度の
1000年に一度の
前代未聞の

類を見ない形容詞を施され
前例のない災害が
史上最高の規模で
全世界的に起こっている

かつてないはずのことが
空前絶後といえるほどの
未到の頻繁さで
破天荒に起こっている

それは言い換えれば
もはや日常茶飯的な光景で
歴代陳腐な出来事に
今まさになりなんとしている

また超大型台風が接近してます
今夜も連続30日の熱帯夜でしょう

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山茶花

山茶花を一本手折らん繁りあう枝より青き空に手を入れ

ゆるゆると壁這う蜘蛛の小さきは止まりてただに汚点となりぬ

短夜の童子の時を悲しみて樹木は齢をふかめいるらん

遥かなる記憶ゆすりて脳髄を突き抜けてゆく野風春風

血を流さず河の流れに逆らわず生きるや我は人形となりて

寂しさを拭く

カラカラと紡ぎいる糸切れたままオイテケ堀に沈む夕焼け

誰彼のせいにしてしばし忘れたるも逃れられ得ぬ自らのこと

PCに埃たまりていることも寂しさのひとつ寂しさを拭く

アスファルトの下は全部土である・・・想い想われ九重連山

「鄙びた」とう演出もよし旅人である私は秘湯に浸る

誰よりも君の味方であることを忘れてないか今日問うている

風に舞うさくらひとひら地に還り何もなかったように時過ぐ

過去となる時の宿命(さだめ)を閉じ込めて物語りせん古きアルバム

空澄みてあるかなきかのたまゆらの風のかけらが髪に残りぬ

残業の疲れを纏う男らと並びぬホームの風を受けつつ

駱駝の瞑想

瞑想もいいが寂しき公園の膝を折りたる駱駝の背中

革ツナギ吊るせば丸き吾のかたち残しておりぬ抱き寄せてみん

ブタ草の季節にズーズー鼻鳴らす花粉症時期ブタと化したり

不思議なることのいくつか調べずにいれば神秘は神秘のままで

横長のバスタブ浅く湯を張れば日本列島の形に沈む

鉛筆を削れる世代というよりは器用な我と不器用な君

乗り越える少しの力の源は引きずるものの負荷にこそあれ

いつだって中途

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