山茶花

山茶花を一本手折らん繁りあう枝より青き空に手を入れ

ゆるゆると壁這う蜘蛛の小さきは止まりてただに汚点となりぬ

短夜の童子の時を悲しみて樹木は齢をふかめいるらん

遥かなる記憶ゆすりて脳髄を突き抜けてゆく野風春風

血を流さず河の流れに逆らわず生きるや我は人形となりて

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