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【読書】『モネ 水の妖精(イメージの森のなかへ)』


名画を本で味わう贅。



印象派の巨匠モネの絵を、それにまつわるエピソードとともに楽しめる、大判サイズの本だ。

モネの絵は個人的にとても好きで、企画展があるといそいそと美術館に足を運んでいる。

だが、コーヒーを片手に読み物として楽しむというのもまた、なんとも胸が弾むものだ。


◇◆

この本の中で私が特に好きなページは、「印象・日の出」だ。

朝日に照らされた港湾に、小舟が浮かんでいる情景。

柔らかい日差しが水面に反射してゆらめき、すがすがしさとともに、幻想的な趣もある。

印象派の特徴ともいうべきか、風景全体がほんのり霞んでいて、港町が動き出す前の束の間の、朝特有の温かみを残している。

この本のもう一つの魅力は、それぞれの絵画に添えられた解説だ。
たとえば、「印象・日の出」の筆致については次のように説明されている。

この絵は詩のような、あるいはちょっと俳句の世界を思わせます。
そこで絵のまんなかあたり、小舟に人が二人乗っているところを切り取り、色彩を取り除き、ついでに表具をしてみますと……。逆光でシルエットになった人の姿が、サッサッとほんのわずかの筆のタッチでとらえられていて、まるで古い日本か中国の墨絵を見ているような気になりませんか。
ヨーロッパの絵画の伝統を離れた画家が、自分でも気づかぬうちにはるかな東の国の画家のたましいに近づいた瞬間です。

淡々とした作品紹介ではない、ストーリーテリングな書きぶりが、読み手の想像を掻き立てる。


この「イメージの森のなかへ」シリーズは、他にもゴッホやミケランジェロ、フェルメール、レンブラントなど全12巻あるようだ。

他の巻もぜひ、読んでみたい。



mie