かぐや姫は地球に行きたい 3-1
長い髪を振り乱し、四足歩行の怪物と見間違える様で籠から這いずるように出てきたその姿。人目を気にすることなく、従者の持つタライにダバダバと胃の内容物を吐き出し続けるその娘の姿に、さすがに月の王は可哀想に思った。
「どうせ睡眠薬でも飲んで、帰り道も罰になると期待してはいなかったのだが……調薬の記憶は戻らなかったのかい?」
声をかければ、彼女は口元を手で拭いながら振り返る。口端からヨダレをこぼしつつもどこか勝気なその顔を見て、ようやく王は自分の娘が帰ってきたことを実感した。