桐田啓

小説を書きたい https://filmarks.com/users/kilidak…

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    毎日更新です。

  • 或る芸人の話

    実際にあった話です。

  • 路上の意味ないおれら - EP

    人生というのは基本的につまらないものです。おもろくなるかおもろくならないかはあなた次第ですが、大きな物語に安直に飛びつくのはよくありません。大切なのはあなたの物語をあなた自身が生きることです。

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路上の意味ないおれら

例えば、傘をさす。雨が降ってた、その日は。で、カップルがいた。いや、まだ付き合ってはない。男の子と女の子。微妙な距離感。でも話したいから二人は近くに寄る。それだとぶつかる、だから傘を相手のいない方に傾ける。すると、雨が入ってくる、肩が濡れる。で、その濡れた肩を、その濡れてもいいと思うのを、愛おしいと思った。でも、原始時代には傘はないからこの話は無し。そんな感じの話を、李有はした。 李有とは、海で出会った。五ヶ月降り続いた雨は、渋谷に大きな水たまりをつくった。人々はそれを海と

    • 日記(20230804)/夏

      夏になると何故か理由もなく唐突に連れ立って、暑いですねMOROHA来たかと思いましたよ遂に、などというのは微塵も聞いておらず、ちょっと腰掛けようやここは排除ベンチではあるが、お前はただ横にいてくれればいい、それでいいと言い目を瞑りそれっきり黙してしまったので、ただただ往来の人々の波を眺めているしかなく、それにも飽きて自撮りなどをするも虚しく、遂には蒸し暑い空気で自分の身体が腐ってしまったのではないかという妄想にまで耽り、その心中を察してか、手の甲に蠅が止まる。最後まで本心を見

      • 鉄パイプで殴られたことがない

        ぶつ切りの肉食い続ける 若者等骨軋む 安モンの薬与えられ 一億総不能化す あの輝かしい災難の痕 私は鉄で打たれ 錆の味 青黒い皮膚が残る 膝に鈍痛走る 核落とされる お母さんにその都度伝える もう何も見えない 風の音も聞こえない 己は生き残りですよ!

        • 日記(20220517)/破片

          丸丸をしていると、生活のすべてが罰罰罰罰に包括されるような気がしてくる。もっというと、存在、すなわち自分自身の過去現在未来の時間のすべてが、罰罰罰罰の穴にはまってしまってどうにも身動きが取れないような気がするのだ。丸丸丸丸、とはいうが、実際は高高で欺欺欺欺欺ような感覚に陥る。 今現在、東京には愛愛愛愛しかないし、愛愛愛愛を紹介する人人人人人人しかいない。 街街街街に向かう道すがら、突然足の裏に何かが刺さった感触がした。冷や汗が一気に身体中を走り、おれは街街どころではなくな

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        路上の意味ないおれら

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        • 路上の意味ないおれら - EP
          6本

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          たったひとりで暗闇に沈んでいくために

          その物語は後から付されたもの 間違った道を行くことも 誰の手も跳ね除け たったひとりで暗闇に沈んでいくために 存在は酷 むしろ不在にしてしまうことでその存在が色濃く 残る はずもなく ここでひとつひとつ蘇らす必要がある始末 効率厨の言葉 凍りつくその場 堆積した記憶の中でひとつ 腐った地層が チン毛の下部組織 悪口裏垢界隈 両者にさほど違いはない 義理を通す 日々おもう 心の廃墟に雨が降る 僕らがあんまりにもネガであったために

          たったひとりで暗闇に沈んでいくために

          日記(20220331)/英語の単位を落として留年した話

          僕らは、三月のけたたましい陽気の中、14号館へと続くアスファルトの上を一列になって項垂れてゆっくりと歩いていた。僕ら、必修英語の単位を落として留年が確定した者ら、吸武、霧ヶ丘、僕の三人組は、TTに連れられた戦争捕虜のようだった。僕の手には、無いはずの鎖が実体として見えるような気がした。それは吸武と霧ヶ丘と僕を繋ぎ、TTがその末端を固く握っているのだった。そして慈悲深い太陽の下、陽の光が隅々にまで行き渡っているこの大学の中には、逃げられる場所はどこにもなかった。おそらく僕らの祖

          日記(20220331)/英語の単位を落として留年した話

          せ〇れ募集

          私は山の上にいて、世界を眺めている。地球には緑が広がり、かつての人類の営みなど跡形もない。あれから何年経ったろうか。その年、未知の流行病が全世界で猛威を振るった。私はまだ二十歳だった。目の前で人が倒れ、死んでいくのを幾度となく見た。ワクチンをつくり、特効薬をつくり人類は抵抗したが、そのウイルスは変異を繰り返し、ついに人類は死滅した。私を除いて、である。ある医師が死の間際に残した報告書によると、私の遺伝子を分析したところ、私が人類で唯一ウイルスの抗体を持っていたということがわか

          せ〇れ募集

          呪術海鮮/白湯子の証言──「或る芸人の話」第三部

           上記は、ブッダ中村こと中村楓汰が、山手線五反田駅〜目黒駅間で偶然出会った高校の後輩白湯子が捲し立てたのを録音し、書き起こしたものである。水曜の夜、数年ぶりに中村からメールがあった。  メールの文章はこれだけで、音声ファイルが添付されていた。それが上に書き起こしたやつだ。僕と中村のコンビ、「海鮮市場」はお笑いで賃金を得たことはなかった。むしろエントリー費、ネタ中の誹謗中傷による訴訟、慰謝料などマイナスだった。中村が頭が足りないのか、ふざけて言っているのかわからなかったが、僕

          呪術海鮮/白湯子の証言──「或る芸人の話」第三部

          日記(20211215)/掴み損ねた

          掴み損ねた、と男は言ったはずだ。幾重にも分岐する道の上で。女は俯いて腕を引き、下がった。ここにいたい、そう言っているように聞こえた。小さくて聞こえなかった。故にそれは男の妄想かもしれないが、ともかくそう聞こえたのだ。声が、こんなにも近くに居るのに、寄っているのに、聞こえなかった。聞こえづらかった。一方で男の発する言葉は物事の表面を滑るのみで、女の内部へと浸透していないような気がした。熱を帯びた身体は休息を欲していた。男はそれを認めたくないようで、怒号を飛ばしながら歩みを進めよ

          日記(20211215)/掴み損ねた

          日記(20211208)/誰も知らない街の路傍で誰にも知られずに倒れて死にたい

          sakanajade a.k.a. 真斗からメールが届いた。俺は窓を開けた。どうにもならない風が吹いてきて、壁に貼ったメモが全部落ちた。2016年の頃に比べれば、心不全の患者は増加している。それは高齢化によるせいが大きい。らしい。俺は道端で倒れて死にたい。なんでもかんでも心不全にすればいい。その理由を男女問題、経済・生活問題、健康問題、家庭問題、勤務問題、学校問題の6タイプに分類すればいい。 ここ数日、ろくに眠れなかった。カフェインの過剰摂取で吐いたりした。気持ち悪かった。や

          日記(20211208)/誰も知らない街の路傍で誰にも知られずに倒れて死にたい

          余は如何にして芸人となりし乎──「或る芸人の話」第二部

          はい獰猛、UnKoUです。  余が芸人を始めるきっかけになった話を載せようと思う。これは高校の卒業文集に載せた文章であり、拙いところもあり、少し気恥しいが、芸人としての余を語るにこれ以上のものはないと思う。「或る芸人の話」として何者かが余のことを投稿していたが、どこの誰が書いたかもわからないあんなものよりも本文を読んで欲しい。一応参考にその馬の骨が書いた「或る芸人の話」もここに貼り付けておこうと思う。いずれにせよ判断するのは文章を読む君であり余には関係ないことだけど。  

          余は如何にして芸人となりし乎──「或る芸人の話」第二部

          Blüte/開花する樹海

          故障かな、と思った。 あるいは愛。 死ぬために買ったロープが、自らを。 すべては流れる。流れである。流出する。流入する。流行する。先も後も無い。端は無い。ただ、一方向に流れ続ける。流れだけがある。 基準。ひたすら流れ続ける今に一本のピンを立てようとする。 -------------------------------- 失敗し続ける男が、他人に成功の秘訣を説いていた。私から見れば失敗でも、彼からすれば成功しているのかもしれない。真実はそれぞれの中にある。 -----

          Blüte/開花する樹海

          第六章 愛

          犬を連れているんだか、犬に連れられているんだか。引っ張られてるおばあちゃん。同様に、膨張した陰茎を女に握られて、男が散歩している。カップルがそう見えた。男が、楽しそうで、情けなく見えた。これは私の話だったか。私を見る私か。違うはずだが。 人生が、カチカチ小さく音を立てて逆回転するような感覚に襲われてのち、現実は不調のパソコンを通してみているようになった。ある時には私は強制シャットダウンのように眠りについたし、再起動のようにすぐに覚醒したりした。 ゴツゴツゴツゴツゴツゴツゴツゴ

          第六章 愛

          表象文化研究概論の感想

          1945年8月、原子爆弾が投下された。それから75年後のことである。その日、表象文化研究概論では、原爆の表象についての授業がなされていた。まさに猿山と呼ぶべき420教室に僕はいた。 講師はしどろもどろ、つっかえながら話していたが、その熱量や想いのようなものは伝わる。レジュメの内容の濃さも、ただ原爆を戦争を批判するだけではない。 「あーし、この授業3回休んで2回途中で帰ったんよね」 左後ろから高周波不協和騒音が聞こえたので、僕は反射的に自らの2本の指で鼓膜を破った。精神が汚染さ

          表象文化研究概論の感想

          この丘からはかつて多くの人々が転がり落ちた。人々はゆっくりとゆっくりとでんぐり返しをしながらやがて球体になっていった。どこへ辿りつくのかは誰も知らない。人々は自ら志願して球体になるのだった。その理由は誰にもわからなかった。ある日、その球体の儀式があると聞き、少年は丘へとそれを見に向かった。丘には多くの人々(彼らの多くは男性であった)が射的の的のようにきれいに整列していた。その中に詩人もいた。詩人とは家が近所で、少年が幼い頃からの付き合いだった。彼が物心のつく頃には詩人に詩を教

          日記(20201026)/ゴーストライダー

          下に横断歩道が通っているのに、歩道橋に登りたくなって。橋は、揺れていた。下を時速70キロで車が通り過ぎていく。ここから落ちてしまえばどんなに楽であろうと思った。もし死ねずとも現在は変容するはずだ。思っただけだ。別に苦しいわけではないのだ。夜風が体温を冷やしていく。身体が底から冷え、徐々に思考も冴えていく。来る日も来る日も金を払っている。生活のために。知らないやつに、金を払っている。ここでは絶えず金を払わねばならない。誰しもが、存在=金を当たり前と思い込み、暮らしている。幼い時

          日記(20201026)/ゴーストライダー