日記(20201026)/ゴーストライダー

下に横断歩道が通っているのに、歩道橋に登りたくなって。橋は、揺れていた。下を時速70キロで車が通り過ぎていく。ここから落ちてしまえばどんなに楽であろうと思った。もし死ねずとも現在は変容するはずだ。思っただけだ。別に苦しいわけではないのだ。夜風が体温を冷やしていく。身体が底から冷え、徐々に思考も冴えていく。来る日も来る日も金を払っている。生活のために。知らないやつに、金を払っている。ここでは絶えず金を払わねばならない。誰しもが、存在=金を当たり前と思い込み、暮らしている。幼い時分、想像していた今はこのようなものであったか。中学の作文で、こんな時代に生まれたことが幸せであるというようなことを書いたことを思い出し、吐き気がしている。飼い慣らされた犬の、そのまた子の、純真な眼でみた世界。その世界にいる。まだ。あいつは金を払うことをやめた。それまでに常人の何倍もの金を費やし、そしてある時を境にぱったりとそれをやめた。あいつは古くなっていく。やめたからだ。ここに居る者は金を払い、更新し続ける。毎日という区切られた時間を更新する。朝起きる。飯を食う。風呂に入る。夜寝る。したくもないのに。金を払わなければならない。更新しなければならない。役所に手続きをしに、Tカードを更新しにTSUTAYAに、飯を買いに小売店に、家賃を払いにATMに、移動するために駅に。すべて金がいる。更新しなくてはならないし、金がいる。
橋の下を轟音と共に消防車が通り抜けていく。凄まじい速度だ。運転席に座っている僕は必死にハンドルを握っている。内心では「早く終われ早く終われ」と思っている。近くで火事があった。いや、なにか得体の知れない通報だったらしい。とにかく早く来てくれとの事だった。一台目、二台目、三台目と通り抜けていく。その運転席に僕は座っている。早く終われ早く終われ。人の命人の命。緊急車両通ります緊急車両通ります。

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