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ぼくらは今日、結婚します

桜の花びらが舞う、よく晴れた午後。
青い空、白い雲、桃色の花びら、灰色の鳥居、赤い絨毯、たげでっけぇ神殿。
…あぁ、そうか、俺は今日、この神社で挙式するのか。もうすぐ本番なのに、夫婦になる実感がわかない。そういうものなのだろうか。

出会って10年。なんやかんやで飽きもせずに付き合いを続けた。
大学時代は、互いに若干心が躍っていたように思う。初めての恋愛だったからだろうか。一緒にいて、変に気疲れしない他人は、アイツが初めてだった。
なんというか、とてもかわいらしいのだ。

程なくして、白無垢の花嫁姿のアイツが現れた。
アイツは恥ずかしそうに、ほころぶ口元をギュっと固くしている。良い事があったときの癖だ。

「どう?」
「いいんでね?」
10年経つと、こんな会話になる。しかし、これが俺たちなのだ。

青森の神社の空の下、風に舞う桜の花びらが色節を彩る。
俺たちは互いの顔を見合い、神殿に向かって歩き出した。

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