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写真展は出会い「だから写真はやめられない」

はじめまして、写真家の紀成道(きの・せいどう)といいます。
「だから写真はやめられない」と題して、写真にまつわる身の回りのことを書き綴っていきたいと思います。

写真集「Touch the forest, touched by the forest.」より

■写真に関わったことで見えた○○

日本に横たわる社会問題から前を見つめるドキュメンタリーを主に撮っています。

前作「Touch the forest, touched by the forest.」では、自然の場を活用して社会復帰を目指す森林療法を実践する病院を取材させていただきました。
現在は、技術伝承と高度経済成長をテーマとした作品「Mother」に取り組んでいます。いわゆる「団塊の世代」が退職を迎えた製鉄所や町工場を舞台にまとめているところです。

さまざまな縁が重なって写真家を続けています。軽い気持ちでこの世界に飛び込みました。ご存知のように写真は始めやすくやめやすい、趣味でも問題ないけれど仕事にもできる稀有な存在です。
私も写真の仕事から離れたい時期が何度かありましたが、タイトルにあるように「写真はやめられない」ほど魅力たくさんの分野だと思っています。

闇雲ではなく頑張るべき路線をしっかり見出せば、きっと報われる世界だと言い切れます。

そして、ドキュメンタリーに携わるからか、写真は私に人生の大切なことを教えてくれています。もし関心を抱いてくれる人がいらっしゃればと

・写真に関わったことで見えた日常
・写真に関わったことで見えた仕事
・写真に関わったことで見えた世の中

をこの場に言葉としてつづっていきたいと思った次第です。

写真集「Touch the forest, touched by the forest.」より

■写真と音楽の世界は構造的に似ている

突然ですが、写真は音楽業界と類似してきていると個人的に思っています。

インターネットによって、曲が無料で出回り、CDの売り上げは減った一方、体験を得られるライブは衰えを知らず、そこで販売されるグッズは思い出を含むため価値を高めています。

ここで

曲   = 写真
CD  = 写真集
ライブ = 写真展
グッズ = 写真集

とすると、私にはしっくりきます。
ですから、作家は展示でないとできないような場を生かした表現を行い、写真集には特別な意味を込める傾向が強まっています。特に

ギャラリーでの写真展は作品公開の場であるだけでなく、出会いの場です。

来場者ご自身の思いを聞かせていただくことで、作品の裏にあるエピソードを言葉でお伝えできますし、そこから話が広がって今後の作品の着想を得ることにもつながります。

例えば、前作の展示で花の香りをかいでいる写真をじっと眺めて「おばあさんの写真をもっと見てみたい」と、とても気に入っていただいた方がいらっしゃいました。
私は当時、2020年にオリンピック・パラリンピックを控えている東京のいまを撮りたいと考えていました。いただいた意見から、高齢化社会がどんどん進む中で、地方の限界集落ではなく都市の高齢化も合わせて、年を経た人と街を前向きにとらえられる写真プロジェクトを進めるようになりました。
同じ会場に旧友が偶然訪れることがあって、とても嬉しかっただけでなく、行き詰っていた別の企画が突然開けたこともありました。詳しくはまた今後お伝えしたいと思います。なので

遠慮なく、在廊している作家に声をかけてください。

私は結構ひと見知りなのですが、うまいことお応えできるよう頑張ります。

写真展は出会いの場。
だから写真はやめられません。

写真展「Touch the forest, touched by the forest.」より

■追記

最後にひとつ宣伝させてください。

10月2日(火)から15日(月)まで、東京・新宿にあるニコンの「THE GALLERY 1」で、今年の木村伊兵衛写真賞を受賞された藤岡亜弥さんの写真展「Life Studies」が開かれます。藤岡さんが2007年から約5年間にわたって滞在したニューヨークで撮影した作品で、詳細はこちらです。

10月5日(金)午後6時30分から、同会場「THE GALLERY 1」で、出版社である赤々舎さんの厚意により、私のソロトークイベントをさせていただくことになりました。(無料です)

木村伊兵衛写真賞の受賞作「川はゆく」(赤々舎刊)は、原爆が落とされた広島のいまを捉えた作品です。5日のトークイベントでは、同じ広島でも岡山との県境にある地方都市・福山が舞台の「Mother」と、前作「Touch the forest, touched by the forest.」について、みなさんとお話しできればと考えています。

ぜひお越しください。よろしくお願い致します。

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