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投資のすすめ① ~株式への投資③~

20代前半からやましい気持ちで
株式投資を始め、
何年かのブランクを経て

せっかくだから
身近なところに投資してみよう、
と考え

どこに投資しようか、
最終的に決めたのが


「総合商社」。


「総合」なので、どこも色々なことをやっていた。
当時、それまでの商社の稼ぎ頭であった資源ビジネスがどこも奮わず、
業績が低迷していて、各社次の稼ぎ頭を探していた。

海外企業との提携や買収、
ITシステム開発、物流インフラ、食料資源、
EC、小売業らとの提携や買収。

色々な分野を模索しているようだった。


その中で、ある商社がトップダウンで非資源の強化と投資を指示し、
原料調達から最終消費者までの各段階に強く関わる方針を示した。

ファッションについては、
原料、糸、生地、付属資材などの背景から
ブランドやアパレルメーカーによるデザインと

生産、検品、物流から
最終消費者への販売までの一連の流れ、
いわゆるサプライチェーンを強化していく、
という方針。


そのトップは有言実行で、
善は急げとばかりに服飾資材の卸会社やアパレルメーカーを
次々と買収したり、出資していった。

その一環で、当時わたしも関わっていた
その商社が出資する海外ブランドの展示会に
わざわざトップが直接現場を視察していた。

展示会とは新作のお披露目と商談をする会で、
華やかと言えば華やかだが、

有名人やモデル、メディアを招待するような、
いわゆるファッションショーのような
華やかさと盛大さはない。


大手総合商社ともなれば10兆円を超える売上規模。
さまざまな事業分野がある中の、繊維分野のファッションの
位置付けはというと。。。

売上はそこそこ大きくなく、
利益効率は良くなく、全体への利益貢献度も
高くないと見られていて

事業縮小したり、売却するなど本体から切り離している
大手商社も増えている状況。

その中で、1ブランドの展示会にまで
足を運んで現場を確認していたのを見て、

「あのトップは本気だ、やる男だ」と感じた。

だから、その商社株に投資をしてみた。
これは、当たった。

数年単位で見ると、今では購入時の4倍以上の株価となった。

もちろん、投資した金額は大きくないので
夢のような利益ではないけれど、
それでも数十万円の評価益になった。

その商社は、時にはえげつないな。。と思うような
仕方の買収もしながら、ブランドや企業へ出資して
子会社間での合併などもしつつ、効率化を図って

利益を伸ばしたり、次のステージに上げたり、
価値を高めて他社へ売却していた。

ここまで記して社名を出さないのもどうかと思うので
念のため記すと、その会社は「伊藤忠商事」。

総合商社なので、色々なことを手掛けている中、
もちろん、失敗していることもある。

中国市場への巨大投資をタイの企業と行った事業は
失敗に終わり、損失を計上する羽目になっている。

中国14億人市場は大きいけれど、
社会主義・独裁国家のリスクも大きい。
そこを楽観視して見誤った。

ただ、その失敗を認め、業績のいい時に
損失処理を行っている。


そういった対応の早さも、時代の流れを見極める力や
決断力の早さと評価できる。

このトップが引退したときは、潮目が変わるときかとも思う。



いずれにしても
こういった実体験を通し、自分が関わる業界に近いと

ニュースや雑誌などの公開情報と
自分の肌感覚の両面からの評価、判断ができるので
すごく投資にも生かせ、勉強になると思った。

もちろん、これはうまくいった例なだけで
失敗もたくさんある。

ただ、往々にして失敗した事例は
一攫千金を目指し、短期的に行った
自分と直接的な関わり合いがない
企業への投資だった。


何をしていて、どんな企業なのか、というより
株価が動きそうで、動いたらいくら儲かるのか
という視点で選んでいた。


これはもう、投機。

機関投資家など、
より大きな金額を動かすプロがたくさんいる中で
素人が勝ち続けるのは難しい。

そういった失敗から省みると

少しでも接点があって
何をしていて、どんな企業で
自分が魅力的に感じ、

「顧客に選ばれる努力をしている企業である」

という、視点で選ぶことができれば
失敗は少ないと感じている。

もちろん、高騰したときに掴んでしまっては
いくら魅力的であっても、マイナスになるけれども。


また、長く投資をしていて
投資金額に余裕が出たときには
リスク分散のために、
異業種に複数投資しておくといい。

異業種の理由は、市況や政策などは特定企業でなく、
業種全体で影響を受けることが多いから。


いずれにしても、自分の利害に関わることとなると
情報収集や分析など、必死に考えることが多くなるので
今までとは違った見方や情報収集も意識するようになる。

これが、自分の仕事にもつながる考え方になる。



ここからは、今現在、
改めてわたしが携わっていた各業界について
報道と肌感で感じていることを
私見として記してみる。



小売業の百貨店等の企業については
合併や買収によって効率化され、店舗の閉鎖、
事業縮小や業態変更が行われてきた。

コロナ禍後、業績は回復傾向にあるけど
粗利率の低いラグジュアリーブランドや宝飾品、
食料品が売上額の大部分を占めているので
依然として、収益力は高くないと思う。

そして、お金持ちの顧客に営業を掛ける外商についても
売上分母は大きいけれど、値引も多く発生しているので
収益源としては少し疑問が残る。


それでは本丸の店頭販売はどのようになっているか。

そもそも、彼らは売場の多くが家電量販店と同様、
ブランドやメーカー側から販売スタッフを
派遣してもらって運営し、成り立っている。

接客サービスや商品知識を支えている大部分は
百貨店雇用の社員ではない。


自力で店舗運営ができない、接客サービスができない中で
顧客満足や上質なサービスを自社の強みとしていたら、
そこには矛盾がある。

商品仕入も消化仕入が基本となっているので、
百貨店側は在庫リスクを負わない。

すると、商品選定の主導権は在庫リスクを負う
ブランドやメーカー側にあり、
百貨店側の品揃えや目利き力を誇れる状態にはなっていない。

黎明期の百貨店は自前で買付け、自分で接客販売し、
売れないなら売れるまで工夫したり、値引販売をして
リスクを負いながらリターンを享受していたと思う。

だから、理想と戦略と行動が連動していた。


ただ、途中からそれが崩れ、リスクを他社にかぶせた。

そして今も崩れたまま、商業不動産業のような形で
小売業を標榜している。

だから、長期的には事業モデルか中身を変えないと
将来は危うい、と今も思っている。

過去百貨店業界が絡んでいた話の余談として、
ライセンス契約で日本に進出した
高級セレクトショップの
バーニーズ ニューヨークは
何とも言えない道のりを辿っている。

アメリカ本国では既に資本が変わってからも
立て直しが出来ずに倒産、全ての路面店は消滅した。

日本では当時、伊勢丹が立上げ、住友商事連合に売却された後、
今話題の7&i HD傘下に入ったが
そごう西武らとのグループ内相乗効果を引き出せず、
2023年5月にラオックスHDに売却されている。

中規模小売業だから、激しい親会社の変更に
巻き込まれる、というのもある。
百貨店 → 商社 → 小売・百貨店 → 家電量販店


ブランドビジネスをする上で販売先が
こういった資本関係に変わったことを押さえ、

かつ親会社の影響力や
投資余力がどの程度なのか、も見極めて
ビジネス戦略を立てていく必要がある。

なぜかというと、
場合によってはそのお店で販売することが
ブランドイメージのマイナスに働く可能性もあるから
そのお店に販売しない方が良い、ということもある。


バーニーズのこれらの親会社の変遷を見ると
主力客層が異なる小売業同士の合併や提携による
相乗効果を発揮させることが、如何に難しいかを
とても考えさせられる。

こういった事例も、それぞれの会社の状況を
想像するのに役立つ。


話は変わって、商業不動産はどうか。
都市部の開発はピークは迎えたのではないか、と思う。

小売業の売上がほぼ、直接販売100%だった時代から
ECや通販比率がどんどん上がってきている中、

商業不動産は現地で現場でモノやサービスを
消費してもらわないと成り立たない。


国内の消費力が大きく伸びていないとしたら、
商業施設は各地域のパイの奪い合いをしているだけで

商業施設を作るための投資と回収の期間の均衡が
取れなくなっていくような気がする。

用地買収から施設のオープンまでは
何年もの時間を要するので、
良くない部分が表面化するには
まだ多くの時間がかかるとは思うけれども。

都市部の開発は厳しく、テナントを埋めきることが
できるのか、疑問符がつく。

東京都心はどこまで開発するのか。
丸の内、表参道、銀座、日本橋、六本木、
虎ノ門、渋谷、新宿、八重洲、築地。

消費者がついていけているのだろうか。



そんな中、一部例外もあって
地下も作らない、地上も低層でタダみたいな土地に
行政の補助金を投入してもらって納税も優遇してもらうような
投資額が抑えられた郊外型商業施設であれば、
投資回収速度が遅れても何とかなりそうだけど。




そして、
ブランドやアパレルメーカーは
どのようになっているか。

多くのブランドは独立資本で成り立たなくなっており、
合併や買収によって、以前に増して
企業グループに属すことが多くなった。

直近ではケリングがヴァレンティノの株式を取得したり、
コーチやケイトスペードを擁するタペストリーが
マイケルコースなどを傘下に持つカプリHDへ出資し資本業務提携したり、

海外ラグジュアリーブランドは顕著だけど、
日本もブランドや企業の合従連衡は進んだ。

例えば、世界的にも有名なヨウジヤマモト。
経営悪化によって、10年以上前に投資会社の傘下に
入っている。

裏原ブームを牽引したNIGOのベイシングエイプ。
同様に香港のファッション複合企業に買収されている。


ナチュラルビューティーやジルスチュワート、
ピンキー&ダイアンなどのブランドを擁した
サンエーインターナショナルは、

コンサバで健全だった東京スタイルと合併し延命したものの、
サンエー経営陣の刷新ができなかったために
外部コンサルに立て直してもらい、身ぎれいにしてから
更に男くさいブランドに強かった上野商会を買収し

上野商会出身者が、現TSI HDの経営を担うという
ユニークな状況になっている。
ここでもグループ化は進んでいる。

ある意味、資本で問題が起こるのは
所有と経営がうまくいかない点によるところが大きい。

だとしたら、所有(株主)と経営を分離し、
かつクリエイション(ブランドディレクターやデザイナー)も
きちんと分業し専門性を高められるかどうかが、
今後のブランドビジネス、アパレルの鍵だと思う。

そんな中で、異色の企業もある。
勢いがあるアパレルのマッシュHD。

グラフィックデザインから派生したアパレルが当たって
短期的に大きく成長した企業。

旧態依然としたアパレル業界ではなく
異業種から参入したことが業界の常識に
囚われなくてよかったのだと思う。


ジェラート・ピケのような「ルームウェア」という
新たなカテゴリー開発をしたり、
「ミラ・オーウェン」などデザイナーの
名前でもない響きの良い架空の名前を
ブランド名にしたり、とても斬新で先駆的なことが
できる企業。

今後は、増えてきたブランドの
ブラッシュアップとクローズ、
新規立ち上げのバランスをとることが
求められるのではないか。

一点気になる点は、
節税対策と思われる、飲食含む他業種への展開投資が
少し気になるところではある。
きちんと分業はできているのか、と。

いずれにしても、未上場だけど
勢いのある魅力的な企業。

一方で独立資本で運営している
コンサバなトレンチコートで有名な三陽商会は、

バーバリーとのライセンス契約終了によって
ボロボロになり、持っていた不動産などの資産を売却し
リストラしまくって、何とか継続出来ているが
人材の流出も進む中、次世代の基幹事業はつくれていない。

会社の掲げる方針と人事から推察するに、
そういった古い体制や思考が変わらない限り
厳しい未来が待っている気がする。

そして今のところ、それらは変えられていない。

独断と偏見によって、各業界の厳しい内容も記したけど
悪い予想は裏切ってくれるような
未来に期待しつつ、

今後の各業界を注視していきたいと思います。


あと、投資はあくまでも、長い目で。
期間を長く見れば、日々の上下は緩やかな動きと捉えられます。

日々、評価損益が出ても、売買するまでは想定損益です。
ちゃんとした企業であれば、一時的に下がっても
回復します。

一喜一憂しすぎないよう、ご注意ください。


いずれにしても、株式投資を通して
情報収集やその情報の捉え方、分析力を磨くことが
判断力を鋭くさせ、

リーダーシップを発揮させられることに繋がると思っています。



最後までお読み頂き、ありがとうございます。

マネジメントでお悩みの方、
管理職になって日が浅い方、
上司の考えに「?」と思っている方、
カッチカチに古い体制の会社に疑問を持たれている方、
などなど。

お仕事でそんなお悩みを持たれている方に向けて
発信していきたいと思います。

 きのした


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