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ザ・ノンフィクション3 ~悪びれない容疑者確保しました~

4月に異動と同時にマネージャーを拝命し、
5月中には、任された部署の年間方針を示すべく、
下調べしながら、資料をまとめていた。


忙しくても、
微々たる手当でも、
みなぎるやる気によって

無敵状態。


しかし、営業部門としての
管理面の確認をしている中で、

「おや?」

「おやおや?」

と、気になる点が増えてくる。


そして、衝撃的な事実を目の当たりにする。

日常的に行われていた、売上に関する粉飾


日常的に
売上に関する操作である「粉飾」
行われていた


法令遵守、コンプライアンス、
虚偽、粉飾決算、黒字倒産などなど

ニュースなんかでよく騒がれるようになった昨今、

何の疑いもなく、日々の業務の中で
担当者の裁量によって、悪びれることなく
行われていたことに驚愕した。


これは、「無敵状態」じゃない。
社内に敵ばっかりだ、と
自分の血管に強めの圧が
かかったことを感じる。

売上関連については、
「取引関係のある二社間の処理において
計上時期のずれを最小化する」

という方針の下、細かい実務ルールを
組み立てていった。

実地棚卸の実態


そして、現場で起こっていた最後のひとつ。
⑥消化取引(店頭商品も自社資産)の実棚実績が合わない。


これについてのノンフィクション・ドキュメントを
綴っていく。

商品売買の取引形態の中の、「消化取引」については、
店頭でお客さまが購入されるまで、卸側の資産となる。

つまり、お店側は、卸側の預かり資産を並べているだけで、
店頭販売を持って、所有権の移転も行われる。


ということは、卸側の「棚卸対象資産」となる。

では、その管理がどのように行われていたのか。

ルールは、明らかにぼやっとしていて、少なかった。

  1. 売場担当営業と売場に派遣されている販売スタッフにて棚卸を行う

  2. 中間決算、本決算は管理本部主催、その時期を除く四半期ごとの棚卸は営業本部の主催で行う

  3. 差異があった場合は書類にて申請し、訂正する

概ね、こんなところ。

残念ながら、RFICタグなどは導入されておらず、
またJANコードは使用していたものの、
各売場にスキャナーやハンディのようなものは
用意されていなかった。


だから、本当にアナログ作業ばかり。

そして、報告書の書式はさすがにあったけど、
実棚を行うシステム上の在庫と照合する資料については
各々が個別で良かれと思った資料を基に
棚卸が行われていた。

アナログ作業が多い分、
多少のミスは起こり得る。
それくらいは許容範囲。


ただ、基本ルールがずさん過ぎて、
ここも、不正が横行していた。

そもそも、
自分の担当先を、普段売場にいるスタッフと、
担当者自身が棚卸を行うということは、
いくらでも手心加えられる、ということ。

そこには、チェック機能が働かない。
監査的牽制機能の緊張関係がない。


そして、実際に起こっていたことは、
データ上の在庫と実在庫の不一致。

それを書類上虚偽報告を行って、
隠すのは、まだかわいい。


いずれ、担当者が代わったりすることで
発覚するから。


怖いのは、これには裏技によって
もみ消す手段があったこと。

棚卸粉飾の手口

どのような手段か。
在庫管理や売上管理に使用していた基幹システムで、

なぜか、消化売上は卸価格が手入力
任意の金額で計上できた


そして、消化の売上には、お取引先の伝票が発行されない
手掛かりは、お取引先からの支払明細

支払明細に記載されるのは、
日にちと売場コードと金額、だけ
経理も確認するのはこの点のみ。


商品の自社品番も、売上げた点数、
つまり数量も記載されない

この条件で、何ができるのか。


足がつかないデータの調整」ができる。

何かおかしい、と初期段階で気付く点は、
大抵、売上金額と入金に差異が見つかった時点。

だから、お取引先からの入金額
社内の計上金額さえ揃えておけば、

あとはデータ上の
在庫を減らしたい品番を選び
ちょうどいい数量に調整し

店頭販売金額に相当する卸金額に
卸単価をうまく合わせ


計上すれば、足がつかない

強い疑念を持って、1品番ずつ調査をすれば
もちろん、不正は発見できるが、
通常の監査では、そこまで見ない


日々、マネージャーもそこまでの確認や照合はできない。
そもそも、お取引先から取れる情報も限られているから
成す術なし。


犯行者が、いた。

そして、いた。
実際に。
悪びれもせず、これを堂々と行っていた者が。


店頭で盗難や紛失した商品ロスをもみ消し、
自分の懐に何かを入れていたかどうかは、確認できないけど
疑われるようなことをしていたことは、間違いなかった。

本来ならば、懲戒相当だが
モラルの低い社風もあったので、
簡単に上司に報告し、

モヤモヤが残ったが、
厳重注意に留めた。


再発を防ぐ


一方で、再発させてはいけない。


仕方なく、その担当者の売上計上業務については
一定期間、こちらで引き取ることにした。


そして、棚卸については
担当者以外が現地に行って、
実施することにした。


営業マンとしては、
何とも情けない話である。

周囲としては、
その営業マンの面倒を見なければならなくなった。

理不尽な世の中。。


窓口の一本化

こういったこともあって、
経理から、本人宛に確認していた
入出金や売掛債権についても、

今後、
宛先は全て、わたし宛てにしてもらうよう、
経理に依頼した。

また
それに対する返答も
担当者でなく、わたしから報告する
経理に伝えた。


こういった、笑えない事態が
発生したときは、
迅速かつ、徹底的に。

それでも、本人はヘラヘラしていた。。。
ダメだ、こりゃ



最後までお読み頂き、ありがとうございます。

マネジメントでお悩みの方、
管理職になって日が浅い方、
上司の考えに「?」と思っている方、
カッチカチに古い体制の会社に疑問を持たれている方、
などなど。

お仕事でそんなお悩みを持たれている方に向けて
発信していきたいと思います。

 きのした


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