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「SARS-CoV-2感染後に免疫介在性神経障害が増加」

TONOZUKAです。


SARS-CoV-2感染後に免疫介在性神経障害が増加

以下引用

英国Oxford大学のXintong Li氏らは、新型コロナワクチン接種後と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者の免疫介在性神経障害のリスクを調べる大規模コホート研究を行い、SARS-CoV-2感染後の人ではベル麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群のリスクが増加していたが、ワクチン接種によるリスク増加は見られなかったと報告した。結果は2022年3月16日BMJ誌電子版に掲載された。

 欧州では5種類の新型コロナワクチンが使用されているが、市販後もまれな有害事象についての監察と報告は継続されている。2021年6月末までにJanssen社のAd.26.COV2.Sワクチンを接種した2100万人のうちの108人と、2021年7月末までにAstraZeneca社のChAdOx1 nCoV-19ワクチンを接種した5億9200万人中833人が、ギラン・バレー症候群を発症していたことが報告された。これを受けて欧州医薬品庁は、ギラン・バレー症候群を、これらワクチンの接種後に発生するまれな副反応に追加した。また、ウイルスベクターワクチンだけでなくmRNAワクチンでも、接種後にベル麻痺、脳脊髄炎、横断性脊髄炎が報告されている。

 そこで著者らは、ワクチン接種後にこれらの神経障害のリスクが増加するのか、たまたまワクチン接種後に見つかっただけなのかを検討するために大規模集団での発症率を調べることにした。

 利用したのは、英国のプライマリ・ケア診療データベースClinical Practice Research Datalink(CPRD)と、スペインでカタルーニャ州の住民の80%をカバーしているプライマリ・ケアの診療データベースInformation System for Research in Primary Care(SIDIAP)だ。両国でCOVID-19ワクチン接種が開始されてから、英国では2021年5月9日まで、スペインでは2021年6月30日までのデータを調べ、ワクチン接種を受けた人とSARS-CoV-2感染者を同定した。年齢は18歳以上で、少なくとも1年以上診療記録がある人を対象にした。

 主要評価項目は、ベル麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎の発症率とした。2017年1月1日~2019年12月31日までのデータから、4つの疾患の一般母集団での発症率を求め、ワクチンの初回接種後21日間と、SARS-CoV-2感染から90日間の発症率を比較することにした。また、免疫介在性の神経障害を発症した人々のみを対象とするセルフコントロールのケースシリーズ研究も行った。2017年1月1日以降、ワクチン接種の21日後まで、もしくは初回SARS-CoV-2感染から90日後までの、どの時点で発症していたかを調べて、ベースラインと比較した調整発症率比を推定した。

 一般母集団の発症率を推定するためのデータがCPRDには965万1568人、SIDIAPには467万8512人登録されていた。COVID-19ワクチン接種を受けた人のコホートには、CPRDから547万7859人、SIDIAPから285万2638人を組み入れた。受けたワクチンの種類は、AstraZeneca社のChAdOx1nCoV-19が437万6535人、Pfizer/BioNTech社のBNT162b2が358万8318人、Moderna社のmRNA-1273が24万4913人、Janssen社のAd26.COV2.Sが12万731人だった。ワクチン接種者のうち59万4407人は、初回接種を受ける前にCOVID-19を発症していた。ワクチン接種を受けていないSARS-CoV-2感染者のコホートは73万5870人だった。

 各々のワクチンの初回接種後21日間、またはPCR検査による初回のSARS-CoV-2感染陽性から90日間の発生件数が5件以上だった場合に、標準人口に調整した一般母集団における自然発症率と比較した。

ChAdOx1nCoV-19初回接種後21日間のベル麻痺は、英国のコホートに117件発生していたが、一般母集団の自然発症率に基づく予測値は164.5件で、標準化発症率比は0.71(95%信頼区間0.59-0.85)だった。同様に、スペインのコホートでは27件発生しており、予測値は82.6件で、標準化発症率比は0.33(0.22-0.48)だった。2回目の接種後の標準化発症率比はそれぞれ、0.26(0.18-0.39)と0.21(0.11-0.39)だった。

 一方で、SARS-CoV-2感染から90日間のベル麻痺の発生件数は、英国のコホートでは53件で、予測値の39.8件より多く、標準化発症率比は1.33(1.02-1.74)になり、スペインのコホートでも1.70(1.39-2.08)になった。

 脳脊髄炎も同様で、英国のChAdOx1nCoV-19初回接種群における標準化発症率比は1.45(0.80-2.62)、スペインでは0.82(0.34-1.97)で、SARS-CoV-2感染陽性者ではそれぞれ6.89(3.82-12.44)と3.75(2.33-6.02)だった。

 ギラン・バレー症候群は、英国のChAdOx1nCoV-19初回接種群における標準化発症率比は0.74(0.41-1.33)で、SARS-CoV-2感染陽性後の標準化発症率比は3.53(1.83-6.77)だった。

 横断性脊髄炎の発症者はまれで、英国でもスペインでも、ワクチン接種コホートもSARS-CoV-2感染者コホートも5人未満で、正確な発症率の比較はできなかった。

 セルフコントロールのケースシリーズ研究は、検出力の限界から、ベル麻痺についてのみ行った。英国、スペインのいずれのコホートでも、ChAdOx1nCoV-19ワクチン初回接種後およびBNT162b2初回接種後に、ベル麻痺の発症率の上昇は見られなかった。一方で、SARS-CoV-2感染前後の発症率は、英国では有意差を示さなかったが、スペインでは有意に上昇していた。

 これらの結果から著者らは、2カ国の800万人を超えるワクチン接種者を対象とする分析で、COVID-19ワクチン接種後に4つの免疫介在性神経障害のリスク増加は認められなかったが、SARS-CoV-2に感染した人では、ベル麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群の有意なリスク増加が見られたと結論している。この研究はEuropean Health Data and Evidence Networkなどの支援を受けている。

 原題は「Association between covid-19 vaccination, SARS-CoV-2 infection, and risk of immune mediated neurological events: population based cohort and self-controlled case series analysis」、概要はBMJ誌のウェブサイトで閲覧できる。




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