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「オミクロン株BA.2亜系統に有効な治療薬は?」

TONOZUKAです。



オミクロン株BA.2亜系統に有効な治療薬は?

以下引用

国立感染症研究所の高下恵美氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株の亜系統で、今後感染の主流になる可能性があるBA.2に対する治療薬の有効性をin vitroで調べ、抗体医薬ではカシリビマブ・イムデビマブ(商品名ロナプリーブ)、チキサゲビマブ・シルガビマブ、ソトロビマブ(ゼビュディ)はある程度の効果が期待でき、抗ウイルス薬ではレムデシビル(ベクルリー)、モルヌピラビル(ラゲブリオ)、ニルマトレルビルが有効と考えられると報告した。結果はCORRESPONDENCEとして2022年3月9日のNEJM誌電子版に掲載された。

 SARS-CoV-2オミクロン株(B.1.1.529)の感染は短期間のうちに世界中に広まった。2022年2月までにこの変異株は、BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.3という4つの亜系統に分類されるようになった。最も感染が広がっているのはBA.1だが、デンマーク、インド、フィリピンではBA.2が主流となっている。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まった時点で分離されたWuhan/Hu-1/2019株と比較すると、オミクロン株BA.2系統のスパイク蛋白質の受容体結合ドメインには、アミノ酸16個の置換が起きている。BA.2とBA.1は、それら16個のうちの12個を共有しているが、残りの4アミノ酸の変異(S371F、T376A、D405N、R408S)はBA.2に特有だ。このため受容体結合ドメインを標的とするモノクローナル抗体の中和活性が従来と異なる可能性がある。

 研究者たちは、米国でCOVID-19の治療に用いられているモノクローナル抗体のBA.2に対する中和活性を、VeroE6/TMPRSS2細胞を用いたフォーカス減少法による中和試験(FRNT)により検討した。BA.2としては、インドから日本を訪れた旅行者から分離されたhCoV-19/Japan/UT-NCD1288-2N/2022(NCD1288)を、比較の基準とする祖先株はSARS-CoV-2/UT-NC002-IT/Human/2020/Tokyo(NC002)を用いた。

 LY-CoV016(エテセビマブ)とLY-CoV555(バムラニビマブ)は、それぞれ単剤で用いた場合も、併用した場合も、BA.2に対する中和活性が低かった。これら2抗体について、著者らは先に、BA.1およびBA.1.1に対する中和活性も大きく低下していたと報告している。

 REGN10987(イムデビマブ)についても、先に、BA.1とBA.1.1に対する中和活性の著しい低下が示されていたが、BA.2に対する中和活性はある程度維持されており、中和に必要な抗体濃度は基準を対象とした場合の22.5倍だった。

 イムデビマブとREGN10933(カシリビマブ)の併用も、BA.1とBA.1.1に対する中和活性をほぼ示さなかったが、BA.2にはある程度有効だった。中和に必要な抗体濃度は、基準を対象とした場合の63.1倍だった。

 COV2-2196(チキサゲビマブ)とCOV2-2130(シルガビマブ)はいずれも、BA.2に対する中和活性を示し、これらの併用も有効であることが示された、併用した場合に中和に必要な抗体濃度は基準の4.2倍だった。

 ソトロビマブの前駆体であるS309の、BA.1およびBA.1.1に対する中和活性は、基準や他の変異株を対象とした場合に比べやや低いことが示されていた。BA.2に対する中和活性はさらに低かったが、中和に必要な抗体濃度は、基準を対象とした場合の49.7倍で、ある程度の効果は期待できると考えられた。

続いて、レムデムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルが、VeroE6/TMPRSS2細胞においてBA.2の増殖を抑制する効果を、基準およびその他の変異株と比較した。各ウイルス株の増殖を50%阻害する濃度(IC50)は、レムデムデシビルの代謝物であるGS-441524が2.85μM±0.31、モルヌピラビルの代謝物であるEIDD-1931が0.67 μM±0.22、ニルマトレルビル(PF-07321332)が6.76μM±0.69だった。基準および他の変異株に対するIC50と比較すると、レムデシビルでは2.5~4.5倍、モルヌピラビルでは0.7~1.6倍、ニルマトレルビルでは1.5~3.3倍で、安定した効果が期待できることが明らかになった。

 これらの結果から著者らは、臨床試験を行って、実際にこれら抗体と薬剤のBA.2に対する有効性を確認する必要があるが、得られた結果は、ソトロビマブ、カシリビマブ+イムデビマブ、チキサゲビマブ+シルガビマブは、BA.2にも有効ではあるものの、祖先株や他の変異株を対象とした場合に比べ中和活性は低いことが示唆されたと結論している。

 原題は「Efficacy of Antiviral Agents against the SARS-CoV-2 Omicron Subvariant BA.2」、全文がNEJM誌のウェブサイトで閲覧できる。


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