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「免疫学の第一人者が反ワクチン本「偽情報」のカラクリを解説」

TONOZUKAです。


免疫学の第一人者が反ワクチン本「偽情報」のカラクリを解説


以下引用

新型コロナウイルス及びワクチンに関する誤った情報を伝える、いわゆる「反ワクチン本」が跋扈しており、そこではデータの裏付けのない仮説や強引な解釈など、牽強付会の主張が繰り広げられています。3月31日発売の最新刊『新型コロナの不安に答える』(講談社現代新書)著者で、免疫学のエキスパートとして知られる宮坂昌之氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)も、こうした状況を憂慮する一人です。本書の中から、宮坂氏が実際のフェイクニュースの例を取り上げ、そのカラクリを解き明かした部分を抜粋してお届けします。 ----------

不適切な引用や印象操作に騙されない
「ワクチン接種者が2年以内に死亡する」「新型コロナワクチンは人口削減の目的のため作られた」といった荒唐無稽なトンデモ言説を見抜くのは難しくありませんが、実際に広がっているフェイクニュースはもっと巧妙でもっともらしいものです。

 具体例を紹介しましょう。

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「動物全滅! だから実験中止」
イードン博士が欧州医薬品庁(EMA)に提出した嘆願書にはこう書かれている。「動物実験が失敗した(死亡した)主な原因はADE(抗体依存性感染増強)による。これはワクチンにとって深刻だ。たとえばアカゲザルは重篤な急性肺障害に陥った。しかしワクチン接種しなかったサルには見られなかった。マウスの肺には好酸球の浸潤を伴う病変を起こした」
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 これを読むと新型コロナワクチン開発の動物実験ではADEが発生したかのような印象を受けます。しかし、イードン氏が提出した嘆願書には、次のように書かれています。

 「ADEがコロナウイルス一般、特にSARS関連ウイルスで共通に存在する問題であることが多数報告されている。ADEはコロナウイルスワクチンでは重大な問題であり、これが、ワクチン開発がうまくいかなかった主な理由である。たとえばSARSウイルスのスパイクタンパク質で免疫されたアカゲザルがSARSウイルス接種を受けたときには急性肺障害が見られ、一方、ワクチン接種をしなかったサルではこのようなことは観察されなかった」

 つまりこれはSARSウイルス(SARS-CoV-1)のワクチンでの話であり、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の話ではありません。しかも、起きていたのは肺への好酸球浸潤であり、何らかの細胞性免疫の異常によるものです。一方、ADEは感染促進性抗体による感染の促進であり、肺炎を悪化させますが、好酸球浸潤などは起こしません。

 ということで、これは、開発途中だったSARS-CoV-1ワクチンの問題であり、新型コロナ(SARS-CoV-2)ワクチンの話ではなく、さらにADEの話でもありません。あたかもADEが起きていると誤解するような効果を狙った不適切な引用です。ADEのリスクについては今後も十分注意を払うべきですが、事実をねじ曲げるようなことをしてはいけません。

 また、新型コロナワクチンの臨床試験で使われた実験動物がワクチンの毒性によって異常死を遂げたという事実も確認されていません。

 ファイザー社やモデルナ社はワクチンの開発にあたり、新型コロナワクチンを実験動物に投与してその毒性を調べていますが、有害事象による死亡例はみられませんでした。

 また、実験動物の各臓器の変化を調べましたが、ワクチンによる明らかな毒性は認められませんでした(※1, 2)。SNSでは、「ワクチン接種された実験用のネズミやネコがすべて死亡した」などの情報が飛び交っていますが、これを裏付ける事実は確認されていません。

雑誌名すら間違ってる...

 さらに、次のようなフェイクニュースもあります。 ---------- 「無症状者の感染例はゼロ!」……この論文が2020年11月20日、科学誌『ニューロ・コミュニケーションズ』に掲載されました。……そして、新型コロナウイルスに感染していて、発症しない人(無症候性感染者)が他者に感染させた事例は「皆無」であったと結論づけています。 ----------  そもそも雑誌名が間違っています。正しくは『Nature Communications』。また、当該論文を実際に読んでみると、発症しない人(無症候性感染者)が他者に感染させた事例は「皆無」などと決めつけてはおらず、無症候性感染者は他者には感染性を持たなかった可能性が高いと推論しているだけでした。  しかし、その後のいくつもの解析から、この推論自体が誤りであり、新型コロナウイルスは無症候性感染者でも感染を広げることが明らかになっています。

文脈を無視した引用

---------- 「感染拡大第3波でワクチン接種した人の60~70%が死亡するか、入院する」 英国委員会が衝撃予測を行っている。英国コロナ対策委員会の下部組織「SPI-M-O」がワクチン接種の影響を調査した。その結果、「第3波の発生は避けられない」という。そして恐ろしいことに、死亡と入院の増加は「ワクチン2回接種した人」に集中して起こる、という。つまり「ワクチンを打った人ほど死亡し、入院する」と英当局が公然と認めたのだ。 ----------  これは、イギリス政府に対して感染症に関しての建議、提言、答申などをする機関である「SPI-M-O(The Scientific Pandemic Influenza Group on Modelling, Operational sub-group)」が2021年3月31日に発表した調査書(※3)のことを指しています。しかし、実際にその調査書を読んでみると、全然そのような意味では書かれてはおらず、明らかに前後の文脈をまったく無視して引用されています。  SPI-M-Oは、この調査書のなかで、イギリスで起こりうるさまざまなシナリオについてその蓋然性を一つ一つ吟味しています。その中で言っているのは、「イギリスではワクチンは高齢者優先で行われたので、高齢者はほぼ全員がワクチン2回接種を完了している。しかし高齢者は免疫学的に弱いことから、第3波がくるとワクチン接種済みの高齢者が感染して亡くなる可能性がある。すると、最悪の場合には、死者の60~70%がワクチン2回接種済みの高齢者となる可能性もあるので、注意をしたほうがよい。ただしその可能性は非常に低い」ということです。  つまり、第3波でワクチン接種者の60~70%が亡くなると言っているのではなくて、正しくは「高齢者に感染が及んだ場合にはそのほとんどがワクチン接種完了者であるので、全死者の60~70%がワクチン接種者となる可能性もある。しかし、これはほぼあり得ないシナリオだ」と言っているのです。  ワクチン接種者の多くが死ぬと言っているのではまったくありません。明らかに、イギリスの公的組織がワクチンの危険性を認めたと思わせようとする悪い意図がうかがえます。

自分にとって都合の悪い知見には知らん顔
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「ワクチン接種者は、未接種者の8倍もコロナ変異株に感染しやすい」(テルアビブ大学)。同大学研究チームによれば、2回接種者と未接種者が、変異株に感染する確率は、5.4%対0.7%で、接種者が8倍も高いという衝撃的な結果だった。これは、ワクチンこそ感染を爆発させる……という真実を証明している。
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 これは、『Nature Medicine』に載った論文(※4)にある記載の一部の引用です。この論文ではイスラエルでワクチン2回接種の7~14日後にのみ一時的にベータ感染の頻度が高かったことを報告していますが、この解析を行った時点での新型コロナ感染におけるベータの割合は全体のわずか1.6%しかありませんでした。

 その後、同国ではベータはたいして流行せずにファイザー製ワクチン接種の過程で完全に収まり、その後増えたデルタ感染もファイザー製ワクチン接種によって収まりました。この論文の中でも「調べたベータ感染者の数が少ないので、この結果の解釈には気を付ける必要がある」としています。

 結局、イスラエルではワクチン接種によってベータ、デルタの流行が収まったことから、この知見は「一時のあだ花」的なもので、実を結ぶことはなく、その後、現実に起きた結果はこの知見にあまり意味がなかったことを示しています。

 つまり、「ワクチンこそが感染を爆発させる」のではなく、逆に、「ワクチンこそが感染を収束させた」という結果になっているのです。ところが、前述の記述では、論文の中から自分に都合のよい部分だけを引用していて、その後出てきた自分に都合の悪い知見にはいっさい触れず知らん顔をしています。

 以上の例からわかるとおり、反ワクチン本には、都合のよいデータを都合よくパッチワークしたり、研究や論文の趣旨をねじ曲げて伝える記述が随所にあります。

(※4)Nat Med
, 27(8):1379, 2021 ●本記事執筆の宮坂昌之氏による最新情報「新型コロナの不安に答える」はコチラから! (特設ページ)→https://gendai.ismedia.jp/list/author/bluebacks/masayukimiyasaka

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