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「英国、新型コロナの経口薬モルヌピラビルを承認、重症化リスクある軽症から中等症向け」

TONOZUKAです。


英国、新型コロナの経口薬モルヌピラビルを承認、重症化リスクある軽症から中等症向け

以下引用

英医薬品規制庁(MHRA)は、2021年11月4日、経口投与の抗ウイルス薬「Lagevrio」(モルヌピラビル/molnupiravir、開発番号:MK-4482/EIDD-2081)を承認した。同薬は米Merck社が米Ridgeback Biotherapeutics社と共同で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化リスクを有する軽症から中等症の患者を対象に開発していた。COVID-19の軽症から中等症の患者を対象に経口薬が承認されるのは、日米欧の主要国で初めてとなる。

 経口薬の登場は、医療提供体制や財政などに利益をもたらす。これまで国内外で複数の抗体医薬(中和抗体)が承認されているが、投与に際して薬剤の調整をしなければならない上、点滴や皮下注射が必要となり、医療者の人手や時間がかかる。それに対して、自宅療養や宿泊療養中に患者自身で投与できる経口薬は、人手も時間も必要としない。服用によって重症化する患者が減少すれば、医療提供体制にも余裕が生じる。さらに、抗体医薬より安価に製造できる点も長所だ。ただし、後述の通り、モルヌピラビルはあらゆる軽症や中等症の患者に投与できるわけではなく、少なくとも1つの重症化リスクを有する軽症から中等症の患者であることに注意が必要だ。

 今回の承認のベースになったのは、日本を含めたグローバルにおいて行われた第3相臨床試験(MOVe-OUT試験)の結果だ。同試験は、入院をしておらず、少なくとも1つの重症化リスクがある、発症から5日以内のCOVID-19の軽症から中等症の患者1550例を対象に実施された、ランダム化二重盲検化プラセボ比較対照試験である。モルヌピラビル800mgを1日2回服用する群とプラセボ群に割り付け、12時間に1回、5日間(計10回)経口投与するデザインで実施された。

有害事象の詳細は論文発表前で未開示

 米Merck社とRidgeback社は2021年10月1日、同試験に2021年8月5日までに登録された775例の被験者を対象に、あらかじめ予定されていた中間解析を実施した結果を発表した。モルヌピラビルの投与を受けた被験者が29日目までに入院あるいは死亡した確率は7.3%(28/385例)だったのに対し、プラセボの投与を受けた被験者が29日目までに入院あるいは死亡した確率は14.1%(53/377例)となり、「入院や死亡のリスクを約50%低下させた」と説明していた(p=0.0012)。

 また、モルヌピラビルの投与を受けた被験者が29日目までに死亡したケースはなかったが、プラセボの投与を受けた被験者は29日目までに8例が死亡した。さらに、被験者のうち約40%においては、ウイルスのシーケンスデータが取得でき、モルヌピラビルがガンマ株、デルタ株、ミュー株の変異株に対して有効性を示していることも確認された。米Merck社は、中間解析で肯定的な結果が出たとして、独立したデータモニタリング委員会の推奨や米食品医薬品局(FDA)との協議を経て、同試験への被験者登録を中止している。

 中間解析で確認された有害事象の発生率は、モルヌピラビル群で35%、プラセボ群で40%と同等だった。薬物関連の有害事象の発生率も、モルヌピラビル群で12%、プラセボ群で11%と同等だった。ただし、現時点で論文が発表されておらず、有害事象の詳細などは明らかではない。

 今回英国で承認されたモルヌピラビルの投与対象は、COVID-19を発症し、少なくとも1つの重症化リスクを有する軽症から中等症の患者。具体的な重症化リスクとして、MHRAは、肥満、60歳以上の高齢、糖尿病、心臓病などを挙げている。加えて、症状が出てからできるだけ早く、5日以内の投与開始を推奨している。用法・用量は、200mgカプセル4個(800mg)を12時間に1回ずつ、5日間(計10回)経口投与する。

 英国政府は、米Merck社から48万コース(48万人分)のモルヌピラビルの供給を受けることで合意しており、2021年11月にも供給が開始される見通し。その後、全国規模の研究を通じて、モルヌピラビルの有効性の追加データを得た上で、追加の供給を受けるかなどを検討するとみられる。ただし、一部報道によれば、モルヌピラビルの供給が開始されても、国民医療サービス(NHS)が全国の重症化リスクのある軽症や中等症の患者に対して、迅速に流通・配布するのは簡単ではないとみられている。

 なお、米Merck社とRidgeback社は、2021年10月11日、米食品医薬品局(FDA)にモルヌピラビルの緊急使用許可(EUA)の承認申請を行ったほか、2021年10月25日には、欧州医薬品庁(EMA)による審査(Rolling Review)が開始されたと発表している。日本では、米Merck社の日本法人であるMSDが特例承認の取得を目指して承認申請する予定で、「鋭意、承認申請の準備を進めている」(同社の広報担当者)としている。

 モルヌピラビルは、体内で活性代謝物に変換された後、ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害して、ウイルスの増殖を抑制する経口投与の低分子薬だ。もともと、米Emory University傘下の非営利企業である米Drug Innovation Ventures(DRIVE)社において、インフルエンザウイルス感染症などRNAウイルスが引き起こす感染症を対象に創製され、開発されていた。COVID-19に対しては、DRIVE社から米Ridgeback Biotherapeutics社がmolnupiravirを導入し、その後、米Merck社と提携して開発を進めている。


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