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「COVID-19治療薬では薬物間相互作用に注意を」 最も注意すべきはロピナビル・リトナビル

TONOZUKAです。


COVID-19治療薬では薬物間相互作用に注意を

最も注意すべきはロピナビル・リトナビル

以下引用

イタリアSalerno大学のValeria Conti氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に用いられた様々な薬の薬剤間相互作用(DDIs)がもたらす有害な影響を調べる系統的レビューを行い、現時点で利用が可能なDDIsチェッカーを用いれば、全てではないもの、実際に生じたDDIsによる有害事象や薬物有害反応(ADRs)を予測できるため、COVID-19のような緊急事態で他の疾患の承認薬を転用する場合も、DDIsを軽視すべきではないと報告した。結果は2022年4月19日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 COVID-19パンデミックの初期には、理論的な抗ウイルス作用を期待して、他の疾患の治療薬として既に承認を得ている薬をCOVID-19治療にも応用していた。ドラッグリポジショニングと呼ばれるこの戦略は、時として有効でないばかりか、DDIsにより、患者に害をもたらす可能性がある。DDIsによる有害な転帰やADRsの増加は、入院と医療費を増やす。DDIsチェッカーは、安全な処方を支援するために開発されたDDIsの可能性を調べるツールだ。

 著者らは、以下の4段階の手順を踏んで、COVID-19患者に有害なDDIsやADRsを起こす薬の組み合わせを検討した。第1段階では、欧州医薬品庁とイタリア医薬品庁のウェブサイト、ClinicalTrials.gov、文献を調べて、パンデミック期間中にCOVID-19治療に用いられた全ての薬剤を同定した。第2段階は、同定された個々の薬について、Drugs.com、COVID-19 Drug Interactions、LexiComp、Medscape、WebMDを通じて提供されている薬剤間相互作用チェッカーを用いてDDIsの可能性を検討した。第3段階では、文献の系統的レビューを行い、COVID-19治療薬の間に、またはCOVID-19治療薬と患者の基礎疾患に投与されている治療薬との間に生じたDDIsまたはADRを報告している論文を同定した。第4段階では、薬剤間相互作用チェッカーが、論文で報告されていたDDIsを同定できるかどうかを評価した。

 2020年3月から2022年1月までにCOVID-19治療に用いられていた薬剤は、46種類同定できた。ほとんどが、リポジショニングによるオフラベル処方や人道的使用、または、臨床試験における投与だった。

 それら46の薬剤を投与されたCOVID-19患者に、理論上発生したであろうDDI関連有害事象を分析するために、5種類の薬剤間相互作用チェッカーを利用した。用いたチェッカーが異なれば、同定される潜在的なDDIsの数やそれぞれの重症度は異なっていた。潜在的DDIsの検出件数が最も多かったのはDrug.comで、続いてMedscape、WebMDとなっていた。臨床的に意義のあるレベルのDDIs関連の有害な転帰の件数が多かったのもDrug.comで、続いて、LexiComp、COVID-19 Drug Interactionsとなっていた。
 DDIsとの関係が最も多く指摘されたのは、ロピナビル・リトナビルだった。続いて、ニルマトレルビル・リトナビルダルナビル・コビシスタット、クロロキン、アセタゾラミドヒドロキシクロロキンとなった。どのチェッカーを用いても、ロピナビル・リトナビルが最も重篤なDDIsに関係する薬剤となった。

 続いて、PubMed、Scopus、コクランを対象として、2020年3月1日から2022年2月28日までに発表されていた論文の中から、COVID-19と診断された患者における、DDIsに関連する実際の有害事象について記述していたものを選出した。

6917件の研究のうち、20件が組み入れ条件を満たした。それらは1297人の患者を登録しており、115件のDDIs関連有害事象を報告していた。DDIsは46種類の薬に認められたが、多くが、COVID-19治療薬と患者の基礎疾患に対する治療薬の間に発生していた。DDIs関連の有害事象の報告が最も多かったのは、ヒドロキシクロロキンとロピナビル・リトナビルだった。

 DDIsの多くは、QT延長をもたらしていた。重症のQT延長の報告は20件あり、うち12件は、QT延長に加えて他の有害な転帰も報告しており、うち8件で患者が死亡していた。

 DDIs関連のADRsのうち、11件は下痢と嘔吐、および肝障害だった。6件は神経障害または精神障害で、うち3件は脳出血だった。出血を経験した1人目の患者には、コルチコステロイド、ヒドロキシクロロキン、未分画ヘパリンが、2人目の患者にはそれらに加えてアピキサバンも投与されていた。3人目の患者に対する処方には、低分子ヘパリンが含まれていた。

 ヒドロキシクロロキンは、24件でロピナビル・リトナビルと併用されており、20件でアセタゾラミドと併用されており、15件でダルナビル・コビシスタットと併用されていた。ヒドロキシクロロキン関連のDDIs53件のうち、31件はQT延長と関係しており、うち4件で患者が死亡していた。

 論文に記述されていた全ての薬剤の組み合わせ(58組)に対して5種類の薬剤相互作用チェッカーを実施した。チェッカーの判定は必ずしも一致せず、予測したADRsの重症度もチェッカーごとに異なっていた。

 薬剤の組み合わせ58組のうち、15組(26%)のDDIsは、実施したチェッカーの全てにより同定された。また、1つ以上のチェッカーで同定されたのは29組(50%)だった。14組(24%)はどのチェッカーでも同定できなかったが、それらの多くは精神障害または皮膚の反応だった。

 WebMDとMedscapeによると、最も重症のDDIs関連有害転帰は、ロピナビル・リトナビルにアミオダロンを併用した場合と、これらにシンバスタチンを併用した場合に生じるとされた。実際に15人に、それら2剤とシンバスタチンが、1人にアミオダロンが併用されており、前者には肝毒性が、後者には起立性の失神が報告されていた。

 COVID-19患者は併存疾患を有する可能性が高く、基礎疾患治療薬とCOVID-19治療薬のDDIsによってADRsが発生するリスクは高い。薬剤間相互作用チェッカーは、重症で生命を脅かすイベントを含む、DDI関連薬剤有害反応を、全てではないにしろ同定できることを示した。COVID-19のパンデミックのような緊急事態においても、DDIsの可能性を無視してはならないと著者らは述べている。

 原題は「Identification of Drug Interaction Adverse Events in Patients With COVID-19 A Systematic Review」、概要はJAMA Network Open誌のウェブサイトで閲覧できる。

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