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「COVID-19と脳卒中の合併、国内症例の臨床像は」

2021/03/30


TONOZUKAです。


COVID-19と脳卒中の合併、国内症例の臨床像は



以下引用

第46回日本脳卒中学会学術集会(STROKE2021、3月11~13日、福岡国際会議場とウェブのハイブリッド開催)で日本医科大学大学院脳神経内科学の西山康裕氏らは、脳卒中を併発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の臨床的特徴について、国内症例36例に基づいた解析結果を報告した。患者は高齢で複数の心血管危険因子を持ち、脳主幹動脈の閉塞による脳梗塞が多かった。適応となる症例には血栓回収療法が行われていたが、COVID-19に伴う重度肺炎などのため25%は入院中に死亡するなど、転帰は不良だった。

 パンデミック初期の2020年4月、中国武漢からCOVID-19重症例の5.7%に脳卒中の合併を認めたと報告された。「国内でも患者数が徐々に増加しており、我が国での実態の把握が必要」と判断した同大学脳神経内科教授の木村和美氏と西山氏らは日本脳卒中学会の公認を経て、脳卒中を併発したCOVID-19の症例登録研究を開始した。同学会が認定している全国の一次脳卒中センター(PSC)975施設に研究への参加を依頼、うち563施設の同意を得て、脳卒中を併発したCOVID-19症例について、患者背景因子、血液データ、臨床症状、治療内容、脳卒中の病型、転帰などを登録してもらった。

 今回は、研究を開始した2020年4月から2021年3月5日までに登録された36例を対象とした中間解析の結果を発表した。脳卒中を併発した患者の発生時期は、国内のCOVID-19流行と同様なパターンを示した。患者年齢の中央値は72歳で50歳未満は8.3%と少なく、男性が61.1%を占めた。心血管系の危険因子として最も多かったのは高血圧(58.3%)で、以下、脂質異常症(38.9%)、糖尿病(30.6%)、喫煙(27.8%)などだった。複数の心血管危険因子が集積していた患者が多く、70歳以上、高血圧、脂質異常症、糖尿病、腎機能低下(クレアチニンクリアランス<50mL/分)、喫煙の5因子に注目した場合、3因子以上集積していた症例が52.8%と半数に及んだ。

 COVID-19関連の自覚症状としては、37.5度以上の発熱(41.7%)、呼吸困難(33.3%)、咳嗽(19.4%)が主で、味覚嗅覚障害は5.5%とわずかだった。52.7%が酸素投与を受けており、I-ROADで分類した肺炎の重症度は中等度以上が41.7%を占めた。36例中11例は人工呼吸器を、うち2例はECMOを装着していた。


 脳卒中とCOVID-19の診断の順序は、脳卒中発症をきっかけに医療機関を受診しCOVID-19と診断されたケースが38.9%、COVID-19で入院中に脳卒中を発症したケースが61.1%だった。脳卒中の診断後にCOVID-19が判明した症例が4割に上ったことから、西山氏は「脳卒中においても初期診療からの、個人防御具を用いた適切な感染予防の重要性を示すものだ」と強調した。

 36例中31例が脳梗塞で、病型は心原性脳塞栓症が13例、アテローム血栓性が6例、ラクナ梗塞が2例、その他(原因不明)が10例だった。心原性脳塞栓症やその他の病型が多かった点について、全身の凝固線溶異常や血管内皮機能障害を惹起するとされるCOVID-19の病態によるものなのか、原因の精査に限界があったためなのか詳細は不明という。

 脳梗塞だった31例中11例は内頸動脈ないし中大脳動脈水平部(M1)の脳主幹動脈の閉塞であり、うち9例には血栓回収療法が行われていた。ただし、通常よりも時間を要し、病院到着から血管穿刺までの時間は148.2分だった。

 院内死亡率は全36症例で25.0%と不良であり、3人に2人(66.7%)は改訂Rankinスケール(mRS)で4以上(中等度以上の障害が残存または死亡)だった。主な死亡原因はCOVID-19肺炎の悪化と考えられた。

 なお、検査値の中ではD-ダイマー高値が特徴的だった。36例中34例が基準値とされる1μg/mLを超えており、10例は血栓性疾患の全身的な精査が必要とされる10μg/mL以上で、うち2例は100μg/mL以上だった。

 宮本享氏(日本脳卒中学会理事長、京都大学大学院脳神経外科学教授)とともに本研究の主任研究者を務める木村氏は「まだ中間解析の結果だが、脳卒中を発症したCOVID-19患者の背景因子や脳卒中の病型などは海外の既報と同傾向で、COVID-19を合併していない脳卒中患者より高齢で、心血管危険因子が集積した重症例が多かった。しかし、米国から報告され一時注目された若年者の大血管閉塞の増加は、今回は認められなかった。今後も登録を続け、より詳細に検討していきたい」と話している。



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