見出し画像

わたしの海外旅行紀 ベトナム編13



プラスチックのチープなイスとテーブルが路上に並ぶころ、西から昇る太陽が東へ沈むまでの間はどの世界でも同じ太陽なんだと、どこにいても同じ太陽なのにとても強い日差しのようにジリジリと肌を焼いてゆく。



太陽の位置で時間を予想し答え合わせするように腕時計をみると、時刻はチェックインの時間を迎えていた。

私は足早にゲストハウスへ向かう。
併設している飲食店もオープンしていて、後でここにも行ってみようと思いながらチェックインを済ませる。


私が二ャチャンにきた理由は、リゾート地で大麻を吸いたかったから。
ファングーラオに到着してすぐにマリファナは向こうからやって来た。
求めれば来ると言う根拠のない自信が根拠を招いているようで、どこに居ても欲しけりゃ求める。

ここは場所が悪いのか、私が当てにしていたバイタクの声掛けが無い。
人は多いがファングーラオのような怪しさが感じられない。
活気はあるがなんとなくマイナー感。
とりあえずは必殺『歩き』。
私は普段は快便ではないのだが、海外に来ると快便になる。
一日二回出る時もあるくらいだ。
海外に来ると、ああ電気代を払わないと、とか明日は早いから早く寝ないとなと言う世俗的な考えをしなくて良いと言うストレスから解放されて快便に繋がるのかなと。


単純に海外に来るとたくさん歩くので腸の調子が整うのだ。
あと、野菜を食べることも多くなっているのかもしれない。
肌も良くなる気がする。


そんなこんなでひたすら歩き大麻を探しつつ観光をする。
午前中から二ャチャンの日差しは絶好調で暑さには多少強いと思っていた私でも時折クラクラ来る。
二ャチャンに来て初めてベトナムコーヒーを飲んだ。
街中の少し高級なホテルにある屋外カフェ。
暑い日差しをパラソルでカットした道路沿いに面したお店。

暑さで熱った体と汗をかいてエネルギーを消耗した体にコンデンスミルクとベトナムコーヒーの甘さが沁みる。
この環境で飲むから尚うまい感はあるがなんにせよ美味しかった。


さて、エネルギーも補充したので目的のブツでも見つけないとな。


ファングーラオではすぐに、それも向こうからやって来たからか、ここ二ャチャンでも楽勝で手に入るだろうと思っていたが、歩けど歩けどお声が掛からないのだ。
暑いし早く手に入れたいし、でも声は掛からないしで私は焦ったくなりその辺のバイタクの運転手に自ら声を掛けた。
『Hello』
『I want marijuana』


『??』

『I want marijuana』
『Happa』
『Ganja』


『???』


だめだ、全然通じない。
マリファナもハッパもガンジャも通じない。
てかこいつ知らないな。
そこで私はアプリでベトナムに翻訳した『私は大麻が欲しい』を彼に見せる。
それでもピンとこない。
それならばと大麻の画像を見せるがそれでも通じてない感じ。
そうこうしていると茶髪の若者が数人集まってくる。
よし、こいつらなら通じるかもと思う反面大丈夫かなと思いながらも彼らに話をしてみる。
何回かああだこうだしてようやく伝わり、最終的には近くにあった出店のおばちゃんが誰かに連絡をしていた。

数分後、大麻を手に入れるための準備が整ったようでバイタクの運転手が『さあ後ろに乗れ』と言ってきた。
私は『どこに行くんだ、大麻は手に入るのか、いくらだ』と聞くが帰ってくる言葉は『大丈夫だ、安い』。
うん、絶対大丈夫じゃない。
絶対ぼったくられるなと言う空気が満々と出ているのに彼は『大丈夫だ、安い』とそれだけ。
もう、完全に怪しいけど乗りかかった船だしこの先がどうなるか気になったので乗っかることにした。
『大丈夫なんだな。本当に安いんだな』と念を押せば『大丈夫だ、安い』
そして『帰りもきちんと送ってくれるのか』と聞くと、『大丈夫だ、ちゃんと送る』と。
周りの若者を見ても出店のおばちゃんを見ても、もう俺を騙そうとしている様にしか見えない。
もう後には引かん。
ポケットに入っているお金は3000円くらい。
私は言われるがままバイクの後に乗り込む。
彼は再度『大丈夫だ、安い』と言ってバイクを走らせた。

二ャチャンの海沿いをバイクの後に乗り込み風を切って走るのは気持ち良いが、私はこれからぼったくられるかも知れない。
赤信号で止まれば降りてその場から離れることもできるけど、ワンチャン大麻が手に入るかも知れないので最後まで行く。
いよいよ目的地に近づいた頃、バイクに乗った小太りな男がこちらに手を振り私たちの前について先導する。
時速はゆっくりで細い路地、人気の少ないところに案内したところでバイクは止まった。



私はバイクから降りると小太りな彼が速攻でお金を要求してきた。
『〜〜ミリオン』


ん?ミリオン?
多分ミリオンって言った。
ベトナムの通貨は桁が多いとは言えさすがにミリオンは言い過ぎだろ。
私は『No money』と言う。
いくらならあるんだ的なことを言ってくる。
私は『No money』と言う。
やつは、そんな訳ないだろう的なことを言ってくるので『先に大麻を見せろ』と言うと小太りはポケットからタバコの箱を出しこの中に入っていると言う。
私は『中を見せろ』と言うが小太りは『先に金だ』と。
もう確信的に怪しいけど私はポケットから2000円を出し小太りに渡す。
引き換えにタバコの箱を受け取ると小太りとバイタクの運転手は『ブゥーン』と去っていった。
奴らの小さくなっていく背中を見ながら今完全にぼったくられた私が佇む。
が、一応ブツは受け取ったので大通りに続く細い路地内で箱の中を見てみると。







はい、完全によもぎです。
よもぎです。

ですよね。
ぼったくりですよね。
分かってましたよと。


やはりやられたなと思いながら大通りへ出ると、リクシャーの運転手が『Marijuana』と声を掛けてくる。
シカトしていると『Happa!Happa!』と必死に声を掛けてくる。
おそらくさっきの奴らに『あいつに声を掛けろ』とでも言われたんだろう。


私は約5kmの来た道を大きなホテル群とビーチを横に歩いて帰る。

分かってはいたけどぼったくられると少しだけ残念だ。
何せ大麻が手に入らなかったのだ。



ゲストハウスに着く頃には辺りは夕暮れで少しだけ涼しい夜がやって来た。
私は併設しているカフェに入りビールとご飯を頼んだ。

二つで250円。

ベトナムでは2000円もあれば三食ご飯を食べてビールも飲んでホテルにも泊まれる。
明日覚えておけよ、なんて思いながら二ャチャンの夜風を浴びる少しセンチメンタルな夜を過ごした。


おいしかったよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?