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『かげりとあかり』あとがき的反省会と、今後の展開について

芋子「今回は、当方128さんの連続小説『陽キャになれる島』第二話までの反省会をしていきましょう」

小野「連続と言えど各話ごとに独立したストーリー……にする予定だったけど、アイドルの話『かげりとあかり』は結局第二話までかかってしまったね。アイドルの話は当方さんがずっと前から書きたかったそうなので、ようやく実現できて今頃安堵していると思うよ。早く続きを書けって話だけど」


1.「行って帰る」の「行く前」の物語

芋子「そもそも『陽キャになれる島』がどんな話かというと、あらすじは第二話の文末にてようやく明かされました」

 地下アイドル、ヤングケアラー、アラフォー童貞……悩める陰キャたちにインターネット放送局の田中丸雅之たなかまる まさゆきプロデューサーが声をかけ、無人島企画の出演をオファー。その島に行けば誰でも陽キャになれるが、代償として家族・友人・恋人から住居・学校・職場まで現状の全ての環境を捨てねばならないとしたら、陰キャたちは最後に誰と向き合い、何を伝えるのか。それぞれの“陰キャ最後の日”の物語。

第二話より引用

小野「あらすじを第二話まで隠しておいたのはわざとで、『誰でも陽キャになれる無人島』というファンタジー要素がありながら、実は物語のメインはそこでは無かったというギミックがある。それを最初にネタバレしたくなかった」

(※ちなみに、謎のまま終わった『陽キャになれる理由』については第三話で少しだけ説明する(かもしれません))

芋子「『行って帰る』って皆さんご存じですかね。主人公が日常から非日常に『行って』、また日常に『帰ってくる』構成は小説に限らず漫画・アニメ・映画など数多の作品に当てはまり、物語の基本中の基本と言われています」

小野「ところが今回の『かげりとあかり』は、無人島という非日常の世界に行く前で話が終わっているんだ」

芋子「そう考えると序盤も序盤ですよね。話が大きく動かない範囲の中だけで物語が終始している。あえて自分から制約を作り、その中で面白い話を書こうとしたわけですから、難しいことに挑戦したのではないかと思います」

小野「あえて“陰キャ最後の日”をメインに書きたかったわけよ。無人島はキャラを動かす為のきっかけ、舞台装置に過ぎない。アイドルを辞めねばならない状況に追い込まれたからこそ、影里は最後に明里と向き合い、謝罪と感謝を伝えられた。書きたかったのはそこね」

2.禁じ手を2つも犯す(定期)

芋子「創作小説は何を書いても自由だ! と思う方も多いでしょうが、禁じ手と言われているものが最低でも2つあります」

【創作小説の禁じ手?】
(1)キャラに説明させる
(2)設定の後出し

とあるnoter様の持論です。諸説あると思います。

小野「そして当方さんはこの2つの禁じ手を使ってしまった。まあいつものことなんだけど」

芋子「キャラに説明させると台詞が不自然に感じてしまうこともあります。例えばこのへんとか」

「お久しぶりです」

「お久~。西永福とか良く分からん地名言うから何時間かかるのかと思ったけど、早かったねー」

「意外と40分くらいで着きました」

第一話より引用

「いいっていいって。俺は何もしていないから。それより家まで送ってくれた明里ちゃんに感謝しなよ」

「もちろん彼女にも言いましたし、タクシー代も払いました」

第一話より引用

「ちなみに当日はどんなスケジュールになる予定?」

「11時からカラオケで2時間自主練、13時半Zepp集合、14時半ゲネプロ(通しリハ)、休憩と着替えを挟んで18時本番、20時半特典会、たぶん打ち上げもあります」

第二話より引用

小野「これね、小説を書いたことある人なら分かると思うけど、キャラに説明させるのはかなり便利なんだよ。説明を全部地の文で長々と書いてしまうと読みづらい文章になる。ある程度キャラに説明させることで、地の文と会話文のバランスが丁度良くなるんだ。あと単純に文字数の削減にもなる」

芋子「ましてやネットの小説なんて、地の文と会話文の間を一行開ける人が多いですから、会話文を多めに織り交ぜた分だけ空白行も増えて読みやすさが増します」

小野「だとしても、キャラのセリフが不自然な文章を良いとは思わないけどね。そのへんの塩梅にも気を配ることが当方さんの今後の課題かな」

芋子「2つ目の禁じ手『設定の後出し』については今回の場合、影里と明里は単なるアイドルグループのメンバーという関係だけではなく、実は高校時代の友達でもあったということですかね」

小野「ここはどうすべきか迷ったと思うよ。終盤に『実はこうだった』みたいな驚きポイントを何か持ってくるには、その設定しか無かったんじゃないの?」

芋子「せめて伏線があればね……お互い下の名前で呼び捨て合っていることくらいでしょうか。伏線としては弱い」

小野「まあ影里の使い方は良かったんじゃないの? 陰キャならそもそもアイドルになるのはおかしいって思う読者も居たかもしれないけど、本当の夢は歌手だったと分かれば腑に落ちる。序盤から伏線を散りばめていたから、この設定後出しは許せる気がする」

芋子「問題は明里ですね。彼女も歌手を目指していたけど諦めたことは第二話の後半でやっと明かされる。終盤の本音をぶつけ合うシーンに繋がる重要な設定ですから、明里の過去はもっと早く明かすべきだったかもしれませんね」

3.作者の伝えたいことをキャラに代弁させているだけ

小野「その終盤だけどさ、ただ二人が本音をぶつけ合うだけなのは芸が無いと思うよ」

芋子「しかもほとんど会話文だけなんですよね。まあ今回は執筆にあまりにも時間をかけすぎて焦りが生まれ、早く終わらせるためにも終盤は勢いで書ききるしか無かった(定期)のでしょうけど」

小野「例えばベタだけど、オフの日に二人で会って、一日中ショッピングとか映画とか遊園地とか色々行って楽しんで、徐々に高校時代の距離感に戻していって、その上で最後にカラオケに行く展開にすれば、あんなに長台詞にしなくても少ない言葉で和解できたんじゃないかな」

芋子「その長台詞も『明るいってだけでみんなに好かれて、陽キャってだけで上手く生きられて』とか『陽キャが何かと得をする世の中』とか、当方さんが伝えたいことをキャラに代弁させているだけなんですよね。あまり直接的過ぎるのもどうかと……」

小野「もっと言うと、影里の『憎んでごめんなさい、優しくしてくれてありがとう』は、ちょっと単純な着地になっちゃったね。陰キャの陽キャに対する憎しみの強さは、そう簡単に解けるものではない(マジで)。もう少し深い話にする予定だったんだけど、明里が優しすぎて憎む理由が無くなっちゃったんだよね」

芋子「実は当初、明里をここまで優しくするつもりは無かったのです。ただ、明里が何かしてくれないと文章を書けないのですよ。例えば↓とか」

「影里は?」「えっと……ヨー、グルト」

 明里はちゃんと、話の輪に入れない私にも振ってくれた。それでも彼女に対する憎しみが消えない私は、目すら合わせず俯いたまま小声で微妙なレスポンスをし、「ヨーグルトって腸だけじゃなく美肌にも効果的だもんね」とフォローしてくれるまでが毎回のテンプレである。

第一話より引用

小野「当たり前だけど、アイドルのライブを文字だけで表現するのって凄く難しいのよ。だからMCとか会話だけのシーンに頼りがちなんだけど、明里が優しいってだけで143字も書けちゃうわけよ」

芋子「体裁だけでも小説っぽく書くことが第一になっていて、大事なはずのキャラ作りが二の次になってしまっています。この書き方だと後半でストーリーの整合性が取れなくなる危険性もはらんでいます」

小野「まあ結果的には『陽キャは心に余裕があるから人に優しい』『影里は友達だから優しくしている』みたいな解釈もできるから、整合性はギリギリ取れたんじゃないかな。読者に伝わったかは不明だけど」

芋子「余談ですが、明里の『夢を諦めてから人生が楽しくなった』は妙にしっくりきましたね」

小野「陽キャが言うと説得力があるね」

4.今後の展開

芋子「反省はこれくらいにして、『陽キャになれる島』の今後の展開についても少々触れましょうか」

第三話『ヤングケアラーくらみ』(仮題)
第四話『遅すぎた青春』(仮題)
第五話以降 未定(残された時間次第)

小野「まず第三話から。無謀にもヤングケアラーというかなり難しい題材に挑戦しようとしています。参考書籍を買ったり、図書館で借りたりもして勉強している最中です」

芋子「昨年のnoteを読んでいただいた方はお分かりかと思いますが、ちゃんとモデルも存在します。該当記事は現在非公開ですか、頃合いを見て公開に戻すことも検討中です」

小野「どう足掻いても賛否両論になると思うので、次回の第三話は批判コメントも受け付けます。荒らしやスパムでも無い限り、どんな意見も真摯に受け止め、コメ返するつもりです」

芋子「締切まで時間も無いですし、もう引き返せないことだけは確かです。他の題材も思いつかないので、このまま書くしかありません。本気で向き合っていきますので何卒……」

小野「そして第四話『遅すぎた青春』は、当方さんの自己投影MAXでいきます。おそらくほとんど実話になるかと」

芋子「前職の小売店で起きた出来事を赤裸々に綴ります。noteでは職種を伏せてきましたが、それもついに明らかになります。そもそも隠すほどのものでもありませんでしたけど」

小野「第三話も第四話も鬱展開になりそうだね……」

芋子「アイドルの話を最初に持ってきたのは英断だったと思いますよ。あの着地ならそもそもアイドルである必要性があったかは疑問ですけど、結果的にはそのお陰で暗くなり過ぎず、エンタメに昇華できていたと思います」

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