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【バー『デビ』】3ショートショート
今回はだいたい2000文字くらいのショートショートです。
2000文字読むのが平気な人は見ていってね〜
ヘッダー画像のイラストはcanvaだけです。
キャラクターもcanva素材です。
現在、キャラクターイラストが決まらない為、決まるまでの間は現状はこのキャラを貼ってます。
canva素材なのでイラストパターンが無いのが難しい
【バー『デビ』】
ここは悩みや暗い感情をもったお客様が相談にくる『バー』。
オーナー…。
『デビ』
中性的な見た目で女性にも男性にも見える。
その見た目もあってか、性別問わず話しやすいと好評。
「さぁ、今日も開店だ!」
『デビ』は、看板をだす。
![](https://assets.st-note.com/img/1720422330861-Cv4uvjitCT.png?width=800)
今日はどんな人に出会えるだろうか……。
雨も降ってるし……そんなにお客様は来ないかな?。
そんな事を考えて数時間後……。
ゆっくりと店の扉を開けて入ってきたのは……。
30代程の男性だった。
「いらっしゃいませ〜!」
「ここの席にどうぞ〜」
「…………………」
男性は無言で席に座った。
その手は震えていた。
『デビ』は、その震えを見逃さなかった。
全て理解していてあえて……声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「先程看板を出す時に雨が降っていました……」
「雨で濡れました?この季節でも冷えますよね……」
「……………あ……あ………う……」
男性は涙をこらえる事が必死で言葉が出せなかった。
震えている原因がある程度分かっている上での揺さぶりだった。
「無理に話さなくて大丈夫なんですよ」
「ここは『バー』お酒を飲むところですから(笑)」
「無理にメニューを頼まなくて大丈夫ですよ〜」
「何時間でもゆっくりとしてくださいね」
「……大丈夫ですから!」
『デビ』は、何度も『大丈夫』という言葉を重ねた。
…………。
男性がゆっくりと口を開く……。
「俺……彼女を捨てたんです……」
…………。
少し間をおいて『デビ』が言葉を返す。
「そうですか……」
…………。
「では……なぜ貴方は泣いているのでしょう?」
「当然、捨てたくなくて捨てたのでしょう?」
「そうでなくては涙は出ませんよ」
「理由があるのでしょう?」
男性は、また黙ってしまった。
しかし……『デビ』が話を続ける。
「………」
「お金が……無いのでしょう?」
黙っていた男性が再び口を開く。
「……『デビ』さんは、俺をどうしたいんですか?」
「俺は……自分の為にあの子を捨てたんです!!」
「そんな俺を慰めるんですかっ!!!」
『デビ』は笑顔で言葉を返す。
「えぇ……慰めたいですよ」
「貴方は悪い事をしたのかもしれない」
「でも……悪い事をしない人はいないですよ?」
……。
「それに悪い人は悪い事をしたなんて思いませんから!」
「自分のした事で涙を流す事なんて無いですから」
「だから僕は貴方を慰めたい」
「別に無理して話さなくて良いんですよ」
「話すのが辛いなら無理しなくて良いんです」
「でも……貴方は話したいはずですよ?」
「『彼女を捨てた』と僕に伝えたんですから」
男性は泣きながらも少し笑みを浮かべた。
「そうだね……俺は少しでも認めてもらって自分を肯定したいんだ……」
「俺は現実から少しでも逃げたいんだ……」
「……だから……ここに来たのかもしれない……」
『デビ』は笑う。
「良いじゃないですか〜、逃げられるだけ逃げましょうよ!(笑)」
男性に、ほんの少しだけ笑顔が戻った気がした……。
「『デビ』さんの言うとおり……俺には金が無い」
「アイツはいつも、『お金なんていらない』って言ってくれてた……」
……。
「だけどな……その言葉を聞くたびに俺が……自分が情けなくてよっ!!」
「満足に欲しい物も買ってやれねぇんだぞ!!」
「将来の事を考えても……子供の事考えてもっ!!」
「金がねぇと誰も幸せに出来ねぇんだよっ!!」
「アイツは……アイツは良い人過ぎるんだよっ!!」
「俺には……俺にはもったいなくてっ!!!」
男性は何かが切れたかのように泣きながら語った。
『デビ』が優しく言葉を返す。
「やっぱり貴方は悪い人じゃないね」
「貴方にとってその選択は正しかったんですよね?間違ってないと思って行動に移したんですよね?」
「その行動をおこすまでに沢山の葛藤があったと思います」
「確かに世の中貴方のような人を否定する人も沢山いるでしょう」
「でも必ず貴方の選択を正しいと思ってくれる人もいます」
「貴方は世界中の人から否定されるわけではないでしょう」
「少なくとも僕は貴方の事を立派な人間だと思ってますよ」
「だって色々な生き方がありますもの」
「お金が原因で悲しい結末を迎えてしまう夫婦……」
「子供を産んでもお金が無くて育てられない……」
「貴方は貴方なりに正しい事をしたんですよ!」
「うちのお客様は色々なものを抱えてる方が多いです……」
…………。
「でも……でも必死に生きてるんですっ!!」
「僕は思うんです!……必死に……懸命に生きてる人ほど素晴らしい人はいないって!!」
「だから……貴方も素晴らしいですよ!」
男性は泣きながら『デビ』の話を聞いていた。
「あ…あの……お話聞いて下さりありがとうございました!!」
「……もう……帰りますね……」
帰ろうとした男性に『デビ』が声をかける。
「帰る場所……あるんですか?」
「一日くらいなら寝る場所貸せますけど」
男性は笑って返した。
「これから色々なものを背負って生きてかなきゃいけないんでね」
「適当に野宿でもして頑張ります!」
「何も食べず飲まずで、ごめんなさい」
「本当にお金無いので……」
「それじゃ!!!」
男性は勢いよく店を飛び出して行った。
『デビ』が最後に叫んだ。
「うちは話聞くだけならタダですからねー!!」
「いつでもまた来てくださいねー!!」
最後に扉が閉まる瞬間、男性の笑顔が見えた……気がした。
…………。
「ふぅ……」
「大丈夫だと良いなぁ……」
「きっと大丈夫!!」
「それに……あの人のコートに5000円入れといたから!(笑)」
少し閉店時間を過ぎてしまった……明日に備えて寝ましょうかね。
![](https://assets.st-note.com/img/1720326636736-2bAxnMu85f.png?width=800)
……………【バー『デビ』】3……完。
ここまで僕の記事を見てくれてありがとうございました!
↓↓↓↓1話
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