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【バー『デビ』】3ショートショート



今回はだいたい2000文字くらいのショートショートです。

2000文字読むのが平気な人は見ていってね〜

ヘッダー画像のイラストはcanvaだけです。

キャラクターもcanva素材です。
現在、キャラクターイラストが決まらない為、決まるまでの間は現状はこのキャラを貼ってます。

canva素材なのでイラストパターンが無いのが難しい








【バー『デビ』】



ここは悩みや暗い感情をもったお客様が相談にくる『バー』。

オーナー…。
『デビ』

中性的な見た目で女性にも男性にも見える。
その見た目もあってか、性別問わず話しやすいと好評。


「さぁ、今日も開店だ!」

『デビ』は、看板をだす。


今日は雨が強い。




今日はどんな人に出会えるだろうか……。

雨も降ってるし……そんなにお客様は来ないかな?。


そんな事を考えて数時間後……。




ゆっくりと店の扉を開けて入ってきたのは……。
30代程の男性だった。


「いらっしゃいませ〜!」
「ここの席にどうぞ〜」



「…………………」

男性は無言で席に座った。
その手は震えていた。


『デビ』は、その震えを見逃さなかった。
全て理解していてあえて……声をかけた。


「大丈夫ですか?」
「先程看板を出す時に雨が降っていました……」
「雨で濡れました?この季節でも冷えますよね……」



「……………あ……あ………う……」

男性は涙をこらえる事が必死で言葉が出せなかった。



震えている原因がある程度分かっている上での揺さぶりだった。


「無理に話さなくて大丈夫なんですよ」
「ここは『バー』お酒を飲むところですから(笑)」

「無理にメニューを頼まなくて大丈夫ですよ〜」
「何時間でもゆっくりとしてくださいね」

「……大丈夫ですから!」


『デビ』は、何度も『大丈夫』という言葉を重ねた。

…………。

男性がゆっくりと口を開く……。


「俺……彼女を捨てたんです……」

…………。


少し間をおいて『デビ』が言葉を返す。


「そうですか……」


…………。


「では……なぜ貴方は泣いているのでしょう?」

「当然、捨てたくなくて捨てたのでしょう?」

「そうでなくては涙は出ませんよ」

「理由があるのでしょう?」



男性は、また黙ってしまった。


しかし……『デビ』が話を続ける。


「………」

「お金が……無いのでしょう?」




黙っていた男性が再び口を開く。


「……『デビ』さんは、俺をどうしたいんですか?」

「俺は……自分の為にあの子を捨てたんです!!」
「そんな俺を慰めるんですかっ!!!」



『デビ』は笑顔で言葉を返す。


「えぇ……慰めたいですよ」

「貴方は悪い事をしたのかもしれない」
「でも……悪い事をしない人はいないですよ?」

……。


「それに悪い人は悪い事をしたなんて思いませんから!」

「自分のした事で涙を流す事なんて無いですから」


「だから僕は貴方を慰めたい」

「別に無理して話さなくて良いんですよ」


「話すのが辛いなら無理しなくて良いんです」


「でも……貴方は話したいはずですよ?」

「『彼女を捨てた』と僕に伝えたんですから」



男性は泣きながらも少し笑みを浮かべた。

「そうだね……俺は少しでも認めてもらって自分を肯定したいんだ……」
「俺は現実から少しでも逃げたいんだ……」

「……だから……ここに来たのかもしれない……」


『デビ』は笑う。

「良いじゃないですか〜、逃げられるだけ逃げましょうよ!(笑)」



男性に、ほんの少しだけ笑顔が戻った気がした……。


「『デビ』さんの言うとおり……俺には金が無い」

「アイツはいつも、『お金なんていらない』って言ってくれてた……」

……。

「だけどな……その言葉を聞くたびに俺が……自分が情けなくてよっ!!」
「満足に欲しい物も買ってやれねぇんだぞ!!」

「将来の事を考えても……子供の事考えてもっ!!」

「金がねぇと誰も幸せに出来ねぇんだよっ!!」

「アイツは……アイツは良い人過ぎるんだよっ!!」
「俺には……俺にはもったいなくてっ!!!」


男性は何かが切れたかのように泣きながら語った。


『デビ』が優しく言葉を返す。


「やっぱり貴方は悪い人じゃないね」

「貴方にとってその選択は正しかったんですよね?間違ってないと思って行動に移したんですよね?」

「その行動をおこすまでに沢山の葛藤があったと思います」

「確かに世の中貴方のような人を否定する人も沢山いるでしょう」
「でも必ず貴方の選択を正しいと思ってくれる人もいます」


「貴方は世界中の人から否定されるわけではないでしょう」
「少なくとも僕は貴方の事を立派な人間だと思ってますよ」


「だって色々な生き方がありますもの」


「お金が原因で悲しい結末を迎えてしまう夫婦……」
「子供を産んでもお金が無くて育てられない……」


「貴方は貴方なりに正しい事をしたんですよ!」


「うちのお客様は色々なものを抱えてる方が多いです……」


…………。

「でも……でも必死に生きてるんですっ!!」

「僕は思うんです!……必死に……懸命に生きてる人ほど素晴らしい人はいないって!!」


「だから……貴方も素晴らしいですよ!」



男性は泣きながら『デビ』の話を聞いていた。



「あ…あの……お話聞いて下さりありがとうございました!!」

「……もう……帰りますね……」



帰ろうとした男性に『デビ』が声をかける。


「帰る場所……あるんですか?」

「一日くらいなら寝る場所貸せますけど」




男性は笑って返した。

「これから色々なものを背負って生きてかなきゃいけないんでね」

「適当に野宿でもして頑張ります!」


「何も食べず飲まずで、ごめんなさい」


「本当にお金無いので……」


「それじゃ!!!」



男性は勢いよく店を飛び出して行った。




『デビ』が最後に叫んだ。


「うちは話聞くだけならタダですからねー!!」
「いつでもまた来てくださいねー!!」



最後に扉が閉まる瞬間、男性の笑顔が見えた……気がした。





…………。

「ふぅ……」
「大丈夫だと良いなぁ……」



「きっと大丈夫!!」
「それに……あの人のコートに5000円入れといたから!(笑)」



少し閉店時間を過ぎてしまった……明日に備えて寝ましょうかね。



雨は止んだね。





……………【バー『デビ』】3……完。






ここまで僕の記事を見てくれてありがとうございました!


↓↓↓↓1話


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