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期待

今どこにいる?

夜突然かかってきた電話。どこにいる?なんて聞かれても家に決まっているでしょと言う時間。セフレなのかソフレなのか、それ以外なのかわからない曖昧な関係の私達。付き合ってない、彼は付き合う気がない事だけはハッキリしてる関係。そろそろそんな事やめたくて頑張っている私。早く俺から卒業しなよと言いながら全然させてくれない彼。    そんな彼は5日ほど旅行で遠くに行っていた。物理的な距離があるとやはり私の気持ちは安定するし、もう関係を終わらせたいという意志も強くなる。彼がなんのストーリーをあげても気になる事はなく、どんなLINEが来ようとスタンプか既読無視で終わらせられた。しかしそうやって距離を置くと彼は途端に寄ってくることは最近の傾向で予想できていた。その予想はしっかり大当たりとなる。冒頭の電話をかけてきた彼は、旅行から帰ってきて今最寄り駅についたと言った。電話からは駅のアナウンスや人々の声が流れてくる。そんな雑音に乗ってお土産を渡したいから今から家に行くという彼の声が耳に流れる。気づけば、わかったじゃあ下に降りるねと言う私は今日も意志が弱い。いや、多分彼からの電話を取った時点で既に弱かったのだ。

一人暮らしをする娘を案じた両親が契約してくれた駅徒歩3分の賃貸マンション。上着を着てエントランスを出ると曲がり角から彼が出てきた。気持ちやメイク、洋服を整える暇すらないじゃないか。今日ばかりはこの好立地が憎い。キャリーバックを携えて見慣れた洋服を着ている彼はこちらに手を振ってやってくる。相変わらず可愛い笑顔だなぁと思ってしまう私は今日もしっかり彼の事が好きなんだろう。ただいまという彼におかえりと返す私。疲れた〜としゃがむ彼をつい撫でてしまう。私の手を掴んで冷たいよちゃんとあったかい格好してと笑う彼。そのまま繋がれた私の右手は途端に暖かくなり心はまた冷えていく気がした。何をしてるんだろう。

これお土産と言って渡してきたお菓子は私が好きなブランドのもの。このお菓子が好きって知ってたの?!と驚く私に当たり前じゃん覚えてるよと笑う彼。いつ言ったのかも覚えてない私に、他の人には買ってなくておもちにだけだから秘密ねと笑う彼は今日もずるい。旅行からそのまま私の家に直行する時点でかなりずるい。最寄りが同じ女の子を送ろうか迷ったけどすぐ行きたくてさと笑うのもずるい。そのずるさに甘えて、この関係をやめたいと口だけ、最早思うだけになっている今の私は本当に弱い。

期待をし過ぎるといつの間にかそれは相手への願望の押し付け、つまりは要望になってしまうらしい。私が彼に期待してしまう期間はとっくに過ぎ去った。もう相手への期待はない、要望もない。寂しいからと電話をする事も遊びに行く事も、同じ家に帰る事も一緒に寝る事にも期待しないし、もう私からは望まない。もしかしたら振りむいてくれるかも、付き合ってくれるかもなんて期待は本当に無くなった。それでも好きでいてしまう私。諦めが悪くて気持ちの消し方が未だにわからない私。20年ちょっと生きてるはずなのに全然上手に生きれない。ただ最近は相手へのちょっとした期待、もはや要望がある。

彼女が欲しい、俺の事を好きになってくれる人が欲しい、好きな人をずっと好きでいちゃうおもちみたいな人に愛されたい

なんて私に言わないで欲しい。早く諦めをつけたいから彼女を作ってほしい。こんなに一緒に時間を過ごしている私でダメなら早く本命の子を見つけて幸せになって欲しい、なんて思うようになってきた。自分から諦められない私はもう環境的要因で諦める事を目指す。

まぁ、多分?いや絶対。その子より私の方が君のことが好きだし幸せにするけどね。なんて思いながらヨシヨシと頭を撫でられる私。         私の事を好きになってくれる人を好きになれたら楽なのに、なんて思う私。多分彼もそんな気持ちなんだろうと思う。私の事を好きな人の事を好きになれない、好きな人に好きになってもらえない。多分この関係で私たちは成り立っている。       寒いから暖かくして眠るんだよという彼を見送る。モコモコの部屋着に布団2枚、加湿器がよくきく7畳の部屋は今日も寒い。


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