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第1章 @MTR Lab 「こんにちは!」屈託のないいつもの笑顔で達也が調布市仙川町にあるMTR Method™️ Labに現れたのは、日差しが初夏を思わせる二〇一九年五月。黒く焼けた精悍な顔つきが元Jリーガーの面影を残す岡本達也は、三二歳になるビジネスパーソンだ。共通の話題も多く、知り合ってからすっかり縁が深まって弟のように可愛がっている好青年だ。ジュビロ磐田の下部組織で育ち、高校生でトップチームデビューを飾ったサッカーエリートだが、思うような結果を残すことができず、一旦プ
第2章 元サッカー日本代表 石川直宏 「ミオンパシーの均さんです」 「なんだ、それ笑。それじゃ全然意味わかんないだろ!?」 「すみません。色々やられてるので何と紹介すればいいかわらなくて笑」 達也をはじめ、私に近い人たちが誰かを連れてきたの紹介はだいたいいつもこんな感じで進む。 「はじめまして。色々と研究している起業家で、昔はインターネットマーケティングで、今はホモ・サピエンスをテーマにしてます笑。えーと、なでしこジャパンのエースだっけ?笑」 「いえ、まだレギュラ
第3章 施術家 石川直宏が調布市仙川町にあるサロンを訪れたのは、二〇一七年四月一一日のことだった。CRIACAOのアスリートカレッジが三月三一日だったので初対面から二週間も経っていない。機会があればぜひと言った彼の言葉を社交辞令と穿った自分を恥じた。この時も達也が動いてくれた。達也が一緒にサロンに来て施術を受けるという段取りだった。 初回は山内という新人のセラピストが担当した。ミオンパシー整体術自体は二〇年以上の歴史があったが、私のサロンはできてまだ一年経っていなかった。今
第4章 筋肉のロックと栄養 「前十字靭帯を損傷するメカニズムが少し見えてきたかな?筋肉が硬くロックして伸縮しなくなるから、体が歪むほどバランスが崩れるんだよね。ところで、子どものころって痛い場所あった?うちのサロンには早い子で小学生の低学年で来店するお子さんがいるけど一般的にはレアケースだと思うよ。子どもはまだ硬い筋肉が少ないから不調が痛みとなって顕在化することはない。じゃあ、硬い筋肉が蓄積していく年月に個人差が出てくるのはなぜだと思う?」 「スポーツとか運動をやる回数が影
第5章 筋肉チューニング 梅崎司の施術は、腰の不安定さを乗り越えてからはゆっくりだが順調に進捗していった。週二回、浦和でのクラブのトレーニング後に調布のサロンまで足を運び、二時間の施術を受ける。夜遅くなることもあったが、それでも休まずに、体中の筋肉のロックを解除すべく施術を重ねていった。 石川直宏と梅崎司。この二人のプロアスリートの施術で私たちが得たものはとてつもなく大きかった。これまでの施術は疼痛を患っている顧客の痛みの緩和に主眼をおいていた。しかし、石川と同時進行で施術
第6章 それぞれの結末 一一月は石川直宏と梅崎司のそれぞれの結末に向けて鮎川史園はフル稼働だった。私のサロンには、経験がやっと一年になる二人のセラピストと、デビューしたばかりの一人の新人セラピストしかいなかった。鮎川は他組織に属する個人事業主だったが、プロアスリートを任せるにはこの男以外に他はいない存在だった。数ヶ月に渡って鮎川の施術を間近に見ることができ、大きなヒントをいくつも得ることができた。その一つが、セラピストのロールモデル化だ。二人のプロアスリートとのセッションによ
第7章 タンパク質 「そもそも論だけど、三大栄養素って知ってるよね?」 「糖質、脂質、タンパク質!」 「良かった、知ってて笑。さっきのビタミン・ミネラルは補酵素、正確にはビタミンが補酵素で、ミネラルが金属補因子。つまりこれらは”補”が付くとおり補助的な役割なんだよ。主役は何だと思う?」 「糖質ですか?エネルギー源だから私たちは炭水化物の摂取についてはカーボローディングとか諸々指導されてます。」 「なるほど、やっぱりそっちにいくかー。ぼくも昔はそうだったんだけど、この仕
第8章 ヴィジョン 「どう?だいぶ自分の可能性、つまり足りないところが見えてきたかな?足りないところは伸びしろだから、客観的かつ論理的に精査し現在地を見積れると、やるべきアクションやアプローチの確度が高くなるよね。間違いなく栄誉改善は必須かな笑。 ところでニコルってどんな目的でサッカーやってるの?CRIACAOに入社したってことは、プロサッカー選手じゃないんだよね?日本代表の現役バリバリのトッププレイヤーがどんな心境で、どんな未来を描いてサッカーしてるのかってすごい興味ある
第9章 適量糖質高タンパク質 「これからNBWプロジェクトを始動するにあたってちょっと教えて欲しいことがあるんだけど。食事内容をスレッド(Facebookメッセンジャーを利用したグループチャット)にアップして欲しい。日々の生活、特に口から入る物が体を作るのでこれが一番重要ってのはもう理解してるよね。あのライザップがやってる感じで報告してみて笑。ぼくと三人のセラピストでチェックしてアドバイスするよ。ニコルは体質改善が急務だと感じるんだよなー。」 「了解です。食事については気
第10章 オーソモレキュラー 糖質制限を始めてから自分の体に様々な変化が現れた。明らかに疲れにくくなったのだ。朝起きた時の疲労の抜け具合が以前のそれとは全く変ってきた。そして、これまでは糖質の消化吸収で胃腸が疲れていたのかもしれないが、便通も明らかに改善してきた。こうした体の変化を目の当たりにしてから、ますます独自調査に熱が入ってきた。読書量も増えていきカンパニー内での私は、経営者というより栄養辞典みたいな扱いだった。インターネットも多用し研究をしていく中で一風変わったブログ
第11章 BORN TO RUN 「今日はいつもより緩みにくいです…」 二〇一八年一一月、鮎川が私の体を実験台として、チューニングの研究を始めてからそろそろ一年が経つ。一年以上続けてきた栄養改善や、チューニングによる筋肉ロックの低減で、私は近年稀に見る体調の良さを感じていた。しかし、なぜかこの調子にはムラがある。筋肉を触ることにかけて、絶対的な経験と知識がある鮎川の指先によると、同じ筋肉でもすーっと緩んでいく時と、なかなか変化しない時があるようだった。 「昨日は何時くらい
第12章 走る「ニコルの体脂肪率はどれくらい?男子サッカー選手は12%以下って制限して話題になった監督がいたけど笑。女子選手なら15%〜18%くらいか?」 「食事の量は変わってないか、むしろやや減ってるのに、ここ一年で体脂肪率が増えてます。22%を少し超えています。理由はちょっと分かりません。」 「なるほどね。きっと代謝の問題だな。浮腫みもあるみたいだから、老廃物などが溜まりやすく、うまく流れてない可能性はあるね。静脈側に問題があるのかな。それと、さっき話した脂肪をエネル
第13章 波動の会 量子力学という概念がある。まだ科学として証明されていないらしい。分子の話ということは何となく理解できる。オーソモレキュラーも分子栄養学と邦訳されるもの。分子がキーワードのようだ。 カンパニーでは「波動」が大流行りだ。スピリリチュアルやオカルトと混同する者もいるが私は至って大真面目だ。”引き寄せの法則”なる物に近いらしい。かなり大雑把に言うと同じ帯域の分子同士が引き寄せ合うとイメージしてほしい。偶然の出会い、予感がした、虫の知らせなど、誰もが科学では説明で
第14章 ランナーズハイ 二月は過去最長の324km、三月は300kmと一月から三ヶ月連続で月間走行距離が300kmを超えた。四月は疲労の蓄積を考慮して少し抑えて285kmに落としたが、その効果もあり五月は331km、六月は358kmまで距離を伸ばすことができた。二〇一九年上半期の走行距離の合計は、1,912kmと年間4,000km射程圏内に入るほど順調に走ることができた。この間、痛みはかなり低減していき、気になる筋肉のロックは左起立筋、左中臀筋、右脚外側広筋の三箇所に絞られ