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散歩

 確かあのあたりに高校があったはずだが、好奇心のまま別の道に逸れたのがいけなかった。気づけばあたりに何もない田んぼに出ていて、こんなことなら最初から地図を見ておけばと、これを思うのももう何度目かわからない。地図を開き、来た道とは逆を行く。この辺りでは見かけない大きな滑り台が見えてきて、こんな田舎に随分と都会的な建築だなと感じ、また私は地図を見なくなるような気がした。その公園をぐるっと一周し、道を逸れる前に見かけたあの黄色い旗に向かって突き進む。あの時ふと見かけたあの旗を信じて進んでいればこんなに時間を消費しなくて済んだのにと、今度は逆に後悔の念に駆られる。旗を超えると、ようやく高校が見えてきた。私の行ったことも入ったこともない高校。私がなぜこんな田舎の辺鄙な村の高校に来たのか、それは愛だよ、と誰かの声が聞こえてきて、私はその周辺をしばらく徘徊した。年末というのに陸上部は練習に励んでいて、部活もやっていない学生はニャースの声真似をして笑い合っていた。
 私ももう少し勉強していればこんな楽しそうな高校生活を送れただろうか。今ある不幸は、全部自分が作り出してきたのではないかと錯覚するほどそれは眩しく、また苦しい。
 そんな彼らを背に、歩いたことのない通学路を進み、下校した。

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