木村世界

kimura sekai

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UNDERWAY あらすじ 【ジャンプ+原作大賞】

 国の研究所爆破事件について、調べを進めるジャーナリストのアル。夫の失踪と何らかの繋がりを睨んでいるアルは、取材の最中、娘が誘拐されてしまう。  必死に探すアルだったが見つからず、途方に暮れていると、目の前におかしな三人組が現れる。彼らは擬似身体を持った改造人間であり、超人的な力を持っていた。そんな彼らは爆破事件の生存者でもあり、夫を探すアルと共に旅をすることになる。そんな彼らの目標はただ一つ。研究所を爆破した、”脳みそ男”を殺すこと_。

    • 万引き犯

       万引き犯を捕まえた。 「あの、すみませんでした。」 「あなた、もう何度もウチの店でやってるでしょ。警察呼ぶから。」 「本当にごめんなさい。警察だけは、警察だけは、、、。」 「本当に悪いと思ってるの?」 「はい。」 「反省してるの?」 「はい。」 「だったら警察に行かなきゃね。本当に反省してるんだったら、警察に捕まって法に裁かれて自分の罪を牢屋の中で償うべきじゃない? それが反省だと思わない?」 「いや、でもっ、、、。」 「ていうかもう連絡してるけどね。」 ガチャッ。警察で

      • 【3分小説】 空を撮る人

         空を撮ってる人がいた。彼女はドラッグストアの前で寝巻きのようなスウェットを着て、片手に袋を持ったまま空に携帯を向けていた。交通指導のバイトをしていた私は、その人を見てから、同じようにその空の方角を見つめた。しかし、そこにあるのは暗くなったばかりの空だけであり、これと言って撮るべき対象があるように思えなかった。それから私がもう一度彼女の方を向くと、次はこちらにカメラを向けていた。  何も無い空の次は私か。確かに、私には何も無い。

        • 深夜散歩

           小学生の頃、スイミングスクールに通っていて、送迎は専用のバスだった。そのバスも各々の家までは行けないから、各自、一番家から近い場所で降りる。私は寂れたコンビニエンスストアでバスを降り、それから家までの100メートルもない一本道を駆けていく。  寂れていても微かに灯りはついていて、自販機の明かりがこんなにも安心したことはない。ここを飛び出すと、もう街灯はない。私は家までのこの暗黒の道を死に物狂いで駆けていく。お化けが私の足を掴むのではないか、殺人鬼が私を殺そうと襲ってくるので

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        UNDERWAY あらすじ 【ジャンプ+原作大賞】

          UNDERWAY 第三話 「黒服」

          「痛っ!」  アルは右肩を抑える。しかし青年は止まることなく、再びアルを突き刺そうと振りかぶった。それを見ていたジャックは、車内から窓を突き破って腕を伸ばし、その青年の首を絞めると、宙に持ち上げた。 「なんだお前、殺してやろうか?」  ジャックの問いに怯むことなく、激情している青年は口を開く。 「ああ、好きにしろ! 殺したきゃ殺せ! 俺は別に死ぬのなんか怖くない!」  青年が続ける。 「お前たち、国の人間だろ! 俺の両親は戦争で死んだ! 国を守るためでなく、自分達の地位や名誉

          UNDERWAY 第三話 「黒服」

          UNDERWAY 第二話 「赤旗」

          「本当に貰っちゃっていいんですか? この車。」 「ああ、俺にはこの店があるし、もう遠出もしないからな。」  マスターから貰った車には、アル、エレン、それからジャック、エメ、チーの五人が乗っていた。  喫茶店で食事を済ませ、もう夕方。暗くなる前に隣町に着きたい一同は早急にマスターに別れを告げ、走り出した。 「そういえばあなたたち、探している”脳みそ男”っていうのはどこにいるの?」  アルが訪ねる。 「さあな、知らん。」 「分かりませんわ。」 「え? じゃあどこへ向かえばいいのよ

          UNDERWAY 第二話 「赤旗」

          UNDERWAY 第一話 「遭遇」

          「……そうですか、わかりました。ありがとうございます。」  ジャーナリストのアルは、国の研究所爆破事件について取材を進めているが、これといって情報がなかった。  アルが車に戻ろうとすると、老婆は靴をつつき、右手で金を寄越せと手招いた。取材代だろうか、しかし何の情報も得ていない。アルは申し訳なさそうに頭を下げ、車に戻る。  夫は国の研究員だったが、詳しいことは教えてくれなかった。夫の失踪からしばらくしてのこの爆破事件。アルはこの事件と夫の失踪が何らかの繋がりがあると信じて疑わな

          UNDERWAY 第一話 「遭遇」

          散歩

           確かあのあたりに高校があったはずだが、好奇心のまま別の道に逸れたのがいけなかった。気づけばあたりに何もない田んぼに出ていて、こんなことなら最初から地図を見ておけばと、これを思うのももう何度目かわからない。地図を開き、来た道とは逆を行く。この辺りでは見かけない大きな滑り台が見えてきて、こんな田舎に随分と都会的な建築だなと感じ、また私は地図を見なくなるような気がした。その公園をぐるっと一周し、道を逸れる前に見かけたあの黄色い旗に向かって突き進む。あの時ふと見かけたあの旗を信じて

          洗い物と人生

           お気に入りのカップでコーヒーを飲もうとしたけれど、昨日の洗い物の中にカップがあったので、私は特に考えもせず別のカップを探し出していた。  とここで、昨日の洗い物を今ここで洗って仕舞えばいいのではないか、と思った。  思えば、それは何か欲しいものが見つかった時にも言えて、今お金がないから買うのはやめようと、私は特に考えもせずそれに代わる安い商品ばかり探すようになっていた。欲しいものがあるのなら、そのために一生懸命働くことができるのと同じで、お気に入りのカップを使いたかった

          洗い物と人生

          白色の目

           家に帰ると、壁に白い目が描かれているのを発見した。それは子供がクレヨンで書いたような目であったが、一人暮らしの私には点で見当がつかない。なぜだか私はそれを消そうとも隠そうともせず、そのままにして過ごすことにした。  ある時、部屋のゴミ箱につまづき中のゴミをばら撒いてしまった時のこと、どうして私はこうもゴミ箱にぶつかり毎度自分でそのゴミを拾わなければいけないのかと自問自答していた。そこで、くしゃくしゃに丸まった紙のの球を拾った時、なぜかあの白い目を思い出した。あれが描かれて

          白色の目

          メダカ売りを観に。

           午後からのサッカー観戦まで少し時間があったので昼食をとった。大きな屋根付きの会場が見え始めた頃、その近くでメダカ販売会というものがやっているのが見えた。まだまだ時間があった私たち一行は、さして興味のない、半ば冷やかしの気持ちでその販売会へと赴いた。  そこには入り口が二つあり、一つは行列、もう一つはガラ空きだった。どうやら皆、入場特典のメダカシールを求め長い列を作っていたようだったが、私たちは別に欲しくなかったのですぐに入り口から入ることができた。  中は想像の五倍は混

          メダカ売りを観に。

          塾にレクサス

           小学生の頃、塾に通っていた。長くは通っていなかったが、週に何度か自分の好きな時間に通うというプログラムに入っていた。  小学校低学年から中学生まで、幅広い子どもたちがそこに通い詰めていた。だいたい夜の方になってくると中学生の集団が来るので、それまでには終わらせて帰るのが日課だった。(小学生から見た中学生は巨人のように大きく見え、そして怖かった。)  塾の先生はとてもお淑やかで、綺麗な方だったと思う。自宅の一階が塾になっていて、たまにその家の子も学習しにきていた。何度か会

          塾にレクサス

          大嫌いなヨシくん

           小学生の頃、私のクラスではダンボール迷路が流行っていて、机に乗るくらいの段ボールに端材をくっつけ、ビー玉を転がして遊んでいた。  私はその迷路が好きで、休み時間にはよく友達とそれで遊んだのを覚えている。  ヨシくんの作る迷路は特別人気がなく、もう印象も薄いことから、それほどのものだったんだと思う。  「俺の家には、めっちゃでかい迷路があるんだよ。」  ヨシくんの言葉を誰も本気にしてはいなかった。あまり喋ったことのなかった私も別に本気にしてはいなかったが、迷路好きとい

          大嫌いなヨシくん

          あちらへどうぞ

           近所の交差点を進むと、Y字の歩道が現れる。その歩道は10メートルもすればまた合流するのだが、ほとんどの人は右側を進む。誰の目から見てもそちらの方が近く、左側の外回りの道をあえて行く人などいなかった。  しかし、左側の道は少し下り坂になっていて、そこを自転車で駆け降りると少しスピードが上がったような錯覚に陥る。ただそれだけのために私はよく左側の道を行った。  それがほんの少し前、私の他に左側の道を行く人を見かけた。私は歩きだったため右側の道を歩いていたのだが、その高校生は

          あちらへどうぞ

          私という名の絶対値

           水を飲もうとしてぬるいことに気づき、氷を入れて冷えるのを待っていたが、キンキンに冷たくなった頃にはもう水を飲む気分ではなくなっていた。  しばらくしてまた水が飲みたくなったが、もうその頃には氷の分、かさが少し増えただけのぬるい水に戻っていた。  キンキンに冷たくなった頃に飲む気分になればと思ったが、それは私の勝手だった。  そんなことを繰り返しているうち、とうとうカップは水いっぱいになって、雫がポタポタと流れ落ちていった。それでも氷を入れることをやめられず、浮き出た氷

          私という名の絶対値

          スイーツクラブ24時

           エクレアとシュークリームを交互に食べるというだけのクラブに参加していた時のこと、いきなり警察が乗り込んできた。  無愛想に部屋に入ってくるなり、「この部屋寒いねぇ」と言って肩を大袈裟に振って見せた。  スイーツは特性上、暑さに弱いものなので、私たちはより美味しくいただくためにこんな極寒の部屋で食事に勤しんでいるのだ。それをずけずけと入り込んできて、知ったような口を聞き上がって、私は目の前のエクレアに手をつけられずにいた。  「君たち、許可証申請してないでしょ、だめだよ

          スイーツクラブ24時