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サーチファンド#01:個人が中小企業をM&Aする新しいアントレプレナーシップのかたち

年に数回、「サーチファンドについて聞かせてください」という問い合わせがくる。
知人からの紹介もあれば、全く知らない方からの突撃も。
多くが日本人だが、たまに外国籍の人。MBA在籍中もしくは卒業生が多い。

私がサーチファンド活動をしたのは2014年。
おそらくサーチファンドという名前を掲げて活動したのは日本初だったと思う。
試行錯誤しながら、結果的に良い企業と投資家にめぐりあうことができ、企業買収と企業価値向上を実現することができた。

当時から4年以上たった今でも日本ではあまり例を聞かないが、サーチファンドという仕組みは経営者を目指す若手にとって、また中小企業にとっても大きな可能性のある仕組みだと思う。

ニッチなテーマだが、情報や事例がほとんどない中、これからサーチファンドを志す人の参考になればと思い、当時の経験を整理して公開することにした。

サーチファンドとは?

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サーチファンド(Search Fund)とは、個人版PE(Private Equity)ファンドと呼ばれることもある、いわゆるバイアウトファンドの一種。

通常PEファンドでは、投資家からまとまった買収資金(通常、少なくとも数十億円以上)を預かり、その資金で複数の企業を買収する。
一方サーチファンドでは、買収資金を集める前に、有望な買収先企業を探すサーチ活動を行う。有望な企業が見つかったら投資家にプレゼンし買収資金を得る。サーチ活動が先にあることからサーチファンドと呼ばれており、サーチファンドの活動を行う人はサーチャーと呼ばれる。

シンプルに説明したが、実際の仕組みはもう少し工夫されている。

サーチ活動には当然時間がかかる。お金もかかる。したがって、サーチャーはまず投資家候補に「絶対によい投資先を見つけてきます。なので、それまでの活動資金だけ、私に投資してください」と、当面のサーチ資金だけ出資してもらう。ここでサーチ資金を出資した投資家は、サーチャーがよい投資先を見つけてきたときに優先的に投資できる権利を得る。
この最初の小さなコミットにより、サーチャーは当面のサーチ活動が可能になり、投資家は小さなリスクで有望な投資ができるオプションを手に入れることができる。
この出資コミットまでのリスクテイクの工夫が、サーチファンドという仕組みのキモである。

以上が、大まかなサーチファンドの仕組みである。

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日本ではあまり例のないこの仕組み、実はアメリカでは30年以上歴史がある。起業ではなく、中小企業を買収しオーナー兼経営者になるという、新しいアントレプレナーシップの形として、MBA生などの間で定着してきている。
事業承継や、経営者/リーダー育成などのテーマが取りざたされている日本においても、大きな意義とポテンシャルのある仕組みだと思っている。

私のサーチファンドの経験と、これから書くこと

2014年当時、サーチファンドというコンセプトを知ってからの活動は試行錯誤の連続だった。日本語はもちろん、英語での情報も限られている。また、誰もこのコンセプトを知らず、分かりやすい実績も前例もない。
投資家などに提案するために、私なりに整理したデータ、事例、実際に苦労した個人的な経験を共有できればと思い、次回以降、下記のようなテーマで整理してみようと思う。(※変更する可能性あります)

02:サーチファンドのはじまりと成功事例
03:データでみるサーチファンドの広がり、実績、リターン
04:サーチファンドに必要なバックグラウンド、必要なスキル
05:私の経験(1/4) -きっかけ、投資家まわり
06:私の経験(2/4) -投資先企業探し
07:私の経験(3/4) -ファンド設立・運用の実務と意味
08:私の経験(4/4) -ヨギーとの出会い、投資実行、経営
09:日本でのサーチファンド浸透のために

公開する内容は、一部2014年当時の調査・データを参考にしている。おそらく内容の主旨に影響はないが、最新のデータで分析をやり直したわけではないので念のため。

追記:
サーチファンド・ジャパンを設立しました

米国のサーチファンドの動向をまとめてみました

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