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サーチファンド#04:サーチファンドに必要なバックグラウンド、スキル

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「サーチファンドをやりたいのだけど、どんな経験やスキルが必要ですか?」
私への相談でよく聞かれる質問の一つである。

サーチファンドの世界で活躍しているサーチャーは、主にMBA後の若手ビジネスマンが多いようだが、彼らはどのようなバックグラウンドで、どのようなスキルを持ってサーチファンドの世界に飛び込んでいるのだろう。

アメリカのサーチャーのバックグラウンド

アメリカのサーチファンドの歴史における、サーチャーのバックグラウンドを見てみよう。

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2002年以前のサーチファンドでは、コンサルティングファームや投資銀行出身のサーチャーが多かった。これが、2008年以降になると、プライベートエクイティ(PE)ファンド出身のサーチャーが増えてくる。
この背景には、サーチファンドへの適性以外に、MBA在籍者の構成、外部経済環境など様々な要因がからんでいるため、安易な示唆は出せないが、M&Aの一連のプロセスすべてに精通しているPEファンド経験者が、サーチファンドを始めやすいことは間違いない。
ちなみに、他のバックグラウンドとしては、起業家、マーケティング、営業、オペレーションなど多岐にわたる。

PEファンドの経験は理想かもしれないが・・・

魅力的な企業を探し、適切な企業価値を判断し、そのオーナーに株の売却を納得させ、適切なスキームと条件で投資を実行し、その後の経営までリードする。しかもほぼ一人で。

このサーチファンドの活動の全体像をみると、理想の経験やスキルは「すべて」であり、このすべてを経験できるPEファンドは確かに理想のバックグラウンドかもしれない。
が、PEファンドにいたとしても、よほど活発に投資できている組織に長く所属していない限り、すべてのプロセスを経験できるケースはまれであるし、そもそもPEファンドの採用自体が少ない。

なので、サーチファンドに必要な一連のプロセスのうち、いくつかでも得意だと思えるものがあれば、他の部分はなんとか補うしかないのが現実的な答えだろう。足りないものが知識であれば勉強する、まわりに応援団がいるならサポートを求める、など。

もし、○○の経験がないからサーチファンドができない・・といったマインドであれば、アントレプレナーシップが必要なサーチファンドに向いていないかもしれない。

人間力、企業との相性

個人的な意見では、必要なスキルの中でもっとも補いにくいのは、いわゆる人間力のような性格というかソフトスキルの部分だと思う。特に中小企業相手のサーチファンド投資において(大企業でも同じかもしれないが)は、オーナーの説得や投資後の経営の場面で、ロジック以上に信頼感、素直さ、巻き込み力のようなソフトスキルが必要なケースが多く、これは一朝一夕で身に着けることも、周りの人任せにするのも難しい。

また、人の性格や企業文化には相性があるので、どんなに人間力のある人であっても、タイプによってうまくいくケースもそうでないケースもある。ある企業で成功した人が、別の企業で結果を残せるとは限らない。
よい企業と出会い、よい結果が残せるかは、デューディリジェンスや戦略の良し悪しに加え、あなた(経営者)と企業との相性の見極めが非常に重要だと思う。

これからサーチファンドを始めようと思う人に

繰り返しになるが、優秀な人でも、サーチファンドに必要なスキルや経験を一人ですべて保有している人は、なかなか稀だと思う。という現実を踏まえて、今後サーチファンドを志す者が増え、サーチファンドが普及するためには、サーチャーをサポートできる組織なりアドバイザーの存在がカギになってくると考えている。

いろいろと偉そうに書いているが、私自身たまたまPE投資を長年経験し、一通りのM&Aの全体像を経験していただけで、至らないところや苦手なところが多くある。日本で初めてサーチファンド活動ができたのは、完ぺきなスキルがあったからだとは全く思わない。たまたまのタイミングである。もっとうまくできる人は大勢いると思う。
私がもっていたようなM&Aについての知識や勘所は、実際に経験したり教えてもらえば、ある程度身に着けられるものだと思う。そこをサポートし、補ってくれる存在さえ見つけられれば、サーチファンドの一連のプロセスの経験がなくても、アントレプレナーシップと人間力のある多くの人がサーチャーとして活躍できると考えている。

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サーチファンドに関する他のnoteはこちら
01:個人が中小企業をM&Aする新しいアントレプレナーシップのかたち
02:サーチファンドのはじまりと成功事例
03:データでみるサーチファンドの広がり、実績、リターン
05:私の経験(1/4) -きっかけ、投資家まわり
06:私の経験(2/4) -投資先企業探し
07:私の経験(3/4) -ファンド設立・運用の実務と意味
08:私の経験(4/4) -ヨギーとの出会い、投資実行、経営
09:日本でのサーチファンド浸透のために

追記:
サーチファンド・ジャパンを設立しました


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