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サーチファンド#05:私の経験(1/4) -きっかけ、投資家まわり

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私がサーチファンドというものを知り、サーチ活動開始から、投資実行までを行ったのは2014年。2014年の末に、株式会社ヨギー(旧社名㈱ロハスインターナショナル)に投資をし、約4年ハンズオンで経営をリードした。

私がどのようにサーチファンドを知り、投資家や投資対象企業を探し、投資実現に至ったのか。またその後の経営における経験をサーチファンドという視点から整理する。

サーチファンドに出会うまで

サーチファンドを始める前、そもそもの私のキャリアの礎はマッキンゼーとベインキャピタル。それぞれ4年弱、5年半在籍した。(※よく間違えられますが、ベインキャピタルはPEファンド。コンサル会社のベインアンドカンパニーではありません)

ベインキャピタル退職後、中小企業をターゲットとしたPE投資に興味があり、起業家なども所属するコンサルティング会社に在籍しながら投資事業の立ち上げをあれこれ模索していた。1年以上、コンサルティングと並行してファンドの構想を練っていたものの、個人で実績もない若造が億~十億単位のお金を集めるのは難しかった。

悶々としていたころに、本当にたまたまネットサーフィン中に見つけたのがSearchFund。もう、どこからたどり着いたのかも思い出せないほど、本当に偶然だった。
聞いたことのない言葉で、カタカナで検索しても全くヒットしない。
英語の情報でさえ限られていたが、なんとか散らばった情報をつないで理解してみると、買収資金調達を後回しにできるPEファンドのような仕組みらしく、「中小企業向けのPEファンドをやりたいが、資金集めに苦労している」自分の状況に非常にフィットする仕組みのようだった。

私が中小企業PEをやれるとしたらこれしかないという消去法的な理由と、これが実現されれば中小企業PEの世界に大きなインパクトになるという前向きな理由の両方にドライブされ、その後一気に活動を加速させることになる。

投資家まわり

さて、サーチファンドを始めようということで、まず始めたのは投資家探し。コンサルティング活動も行っており、コンサル会社からのサポートは頂いてたため、当面の生活費という意味では困っていなかったが、ゆくゆくサーチファンドが広まっていくためには、このコンセプトを理解してくれる第三者の投資家から、きちんとしたサーチファンド契約に基づくサーチ資金の出資を得ることが重要だと考え営業活動をはじめた。

機関投資家、オーナー系の事業会社トップ、エンジェル投資家など、様々なタイプの投資家にサーチファンドのコンセプトを説明し、出資のお願いをさせていただいた。お会いした方はおそらく20~30くらいだったと思う。

結論から言うと、きちんとした形での契約、つまりサーチ費用や生活費を含めた出資を第三者にコミットしてもらうという契約には至らなかった。何度も提案を重ね、惜しいところまで行った投資家もいるが、結局だめだった。

正確には、並行して行っていた案件探しに先に進展があり、案件とともに買収資金のめどがついたため、途中で純粋なサーチファンド契約を目指す活動は打ち切りになったのである。ファンド組成と買収ができたことには間違いがないので、ある意味成功ではあるのだが、当初目標としてた「アメリカ式のスタンダードなサーチファンドの組成」はできていない。

サーチファンドの投資契約が困難だった理由

「サーチファンド、初めて聞いたけどおもしろいね」とは言ってもらえるものの、最終的な契約には至らない、そもそもの私への信頼というハードルに加え、サーチファンド特有の理由だと感じたNG理由は主に4つだったと私は思っている。

1. 案件あたりのアップサイドが小さい
「うまくいったら、どこまで大きくなるの?」
中小企業に投資するサーチファンド一件で得られるアップサイドは限定的である。もちろんホームラン案件になる可能性もあるが、基本的にはPE投資なので、10倍、100倍の可能性を見込むベンチャー投資と比べると、案件あたりのアップサイドは限定的である。
5億円が5倍の25億円になるサーチファンド投資より、50億円が2倍の100億円になる中堅企業投資の方が、絶対額としてのリターンはよい。

2. 連続性、再現性が見えにくい
「伊藤さんに投資しようという判断はできるかもしれないけど、2件目、3件目はどうするの?」
案件あたりのアップサイドが限定的であれば、案件の数が増えるのかというのが次の質問になる。
通常のPEファンドでは、同じチームが多くの投資案件を担当する。したがって、チームの経験やノウハウが組織知となり投資に再現性ができてくる。
一方サーチファンドは、案件探しから、投資価値算定、経営までサーチャー個人がリードする。そしてその個人は当面、1件の投資先にフルコミットする。したがって、案件ごとにサーチャーは別人ということになり、ノウハウの蓄積や成功例の再現が難しい。
再現性が見えない新しいコンセプトに投資をするのは、(特に規模のある)機関投資家からすると、広がりの確度という意味で難しかったようだ。私の提案の中には2件目、3件目のサーチャーになりうる優秀な知人のリストはあったが、それだけでは再現性を納得してもらうのに不十分だった。

3. LP投資家の個別企業目利きスキル
「うちは案件ごとの良し悪しは判断できないかもしれない」
一番新鮮だったNG理由は、案件ごとの目利きができないというものであった。通常、PEファンドに資金を出資する投資家(LP)は、ファンド運営責任者(GP)に案件ごとの投資判断を一任する。つまり、GPチームを信頼して出資した後は、個別案件の目利きはGPが行う
が、サーチファンドの場合、サーチャーが案件を提案し投資家に買収資金出資の判断を仰ぐ。つまり、通常LP的な投資を行っている投資家に、GP的に案件ごとの目利きをしてくれと言っていることに近い。が、LP投資をしている複数の機関投資家から「自分たちにはGP的な目利きスキルがない」というコメントをいただいた。
案件を見てから投資判断できるという、投資家にとって一番のメリットだと思っていたサーチファンドのキモが、逆にネガティブな要素と見られることは、いろんな意味で残念でもあり新鮮でもあった。

4. 経済的リターン以外の戦略的価値
ベンチャーファンドなどに投資する投資家は、経済的なリターン以外に本業とのシナジーや最先端のトレンドとの接点など、戦略的なメリットを期待している場合が少なくない
一方、サーチファンドが対象とする企業は、普通の地味な企業が多い。また、事業領域も決まっているわけではない。となると、投資家にとっては経済的リターン以外の戦略的なメリットが見えにくい。

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当然投資家のタイプによって気にするポイントは異なるものであり、濃淡もあったが、サーチファンドの仕組みに起因するNG理由は上記のようなものであった。

もし、このまま日本での投資家集めに苦労したら、アメリカの投資家にコンタクトしようと思っていた。すでにサーチファンドが根付き、エコシステムが存在するアメリカでは、サーチファンドに投資するファンドというものが存在し、「日本初のサーチファンドに投資しませんか」という提案は魅力的に映るだろうと考えていた。
ただ、国によってファンド運営のための規制や手続きが異なるため、非常に面倒なことになるのは目に見えており、なるべく避けたかった。

幸いにして、アメリカの投資家にコンタクトする前に、並行して行っていた案件探しに進捗があり、それをきっかけに一気にファンド設立から投資実行まで達成することができた。次回は、案件探しから、ファンド設立の実務の経験をまとめてみたい。

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サーチファンドに関する他のnoteはこちら
01:個人が中小企業をM&Aする新しいアントレプレナーシップのかたち
02:サーチファンドのはじまりと成功事例
03:データでみるサーチファンドの広がり、実績、リターン
04:サーチファンドに必要なバックグラウンド、スキル
06:私の経験(2/4) -投資先企業探し
07:私の経験(3/4) -ファンド設立・運用の実務と意味
08:私の経験(4/4) -ヨギーとの出会い、投資実行、経営
09:日本でのサーチファンド浸透のために

追記:
サーチファンド・ジャパンを設立しました

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