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サーチファンド#07:私の経験(3/4) -ファンド設立・運用の実務と意味

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投資ビークルとしてのハコ

投資家まわりと案件探しに加えもう一つ、目立たないが非常に面倒であり、また重要だった業務は、ファンド組成・運営にあたってのハコづくり、金融庁への届け出、出資契約などの実務である。

そもそも、お金を集めて投資をするのに、どういうハコを用意すればよいのか?組合を作る必要があるのか?株式会社ではだめなのか?合同会社は?

一般的に日本で投資ファンドを運営する場合、出資者の権利や義務、税務上の理由、法人格の有無などの理由から、資金を集めるハコとしては「投資事業有限責任組合」という形式をとる場合が多い。私もこの形式で組合(=ファンド)を設立した。

詳細は省くが、「投資事業有限責任組合」という名の通り投資事業を行うのに適したハコで、比較的使いやすいのだが、詐欺などの不正を防止するための手続きや制限も多い。適格機関投資家特例業務という比較的簡易な制度(というかほとんどの人にとって現実的はこれ)もあるのだが、それでも必要な手続きは多く、なかなか手間が大きかった。

参考:投資事業有限責任組合の概要はこちら
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/to/A02551.html
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/kumiaihou.html

参考:適格機関投資家特例業務の概要はこちら
http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/kinshotorihou/tokurei.htm

このあたりは、小規模なサーチファンドで苦労するところの一つだと思う。私は、学びのためにと思い手続きのほとんどを自分で行ったが、小規模のファンド運営をサポートするなんらか効率的なサービスなどがあるとよいなと思う。また関係者のニーズ次第だが、必ずしもファンドという形式にこだわる必要は全くない。

ちなみに、ケイマンなど外国籍ファンドの設立は一瞬だけ検討してやめた。一案件数億円などの小規模ファンドでは、設立と維持の費用や手間が全く割に合わない。

出資契約

また出資契約も、面倒だが重要な手続きの一つだ。
通常の投資ファンドの出資契約で重要な
-投資期間(出資を約束してもらえる期間、エグジットまでの期間)
-ファンド運営フィー
-成功報酬
などに加え、サーチファンドに特有の仕組み(サーチ時点と買収時点に分けた取り決めなど)を検討することになる。

ちなみに通常の投資事業有限責任組合のモデル契約はwebで入手可能である。
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180402006/20180402006-2.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/lps_model2211.pdf

一般的な条文と検討のポイントが記載されているので参考になる。

目立たない仕組みや形式を考える意味

さらに細かい話が続くが、買収完了後にも存在していた少数株主から株を買い取る(スクイーズアウト)手法があったり、ファンドへの投資家にリターンを分配するときの手続きがあったり・・・。

ダイナミックな事業の話の裏にあるこういった目立たない業務についての今回のnoteは、単に私の行ったプロセスので記録であり、各仕組みそのものの内容はさほど重要ではないと思う。詳細は他のサイトにもたくさん説明がある。全体として「そんな業務もあるのね」くらいに捉えてもらえばよい。

ただ、こういった仕組みや座組の一つ一つの意味を理解し戦略的に考えることは、投資家やオーナーへの提案の引き出しにつながったり、事業運営をスムーズに進めるための(もしくは妨げる)関係者のモチベーションにつながったり、あとあとの資本戦略の自由度に影響したり、思わぬところで効いてくることが多い。
今回のnoteで伝えたいメッセージは、表に見える華やかな事業の裏にも、戦略的に考えるべき目立たない業務がたくさんある、ということだと理解してもらえればと思う。

(※ ひとつひとつの仕組みや形の裏にある戦略的判断は、webでは公開できないことも多いのでご了承ください。誤解を生まない形でオフレコでお話できる機会があれば、検討させていただきます)

追記

ここに記載した内容は、単に私が行ったプロセスの記録であり、この形式である必要は全くない。できるだけシンプルなやり方が可能であればそれに越したことはない。「ファンドだからこう・・」と固く考えず、常に目的に立ち返り、それを実現するための手段は柔軟に考えることをお勧めする。

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サーチファンドに関する他のnoteはこちら
01:個人が中小企業をM&Aする新しいアントレプレナーシップのかたち
02:サーチファンドのはじまりと成功事例
03:データでみるサーチファンドの広がり、実績、リターン
04:サーチファンドに必要なバックグラウンド、スキル
05:私の経験(1/4) -きっかけ、投資家まわり
06:私の経験(2/4) -投資先企業探し(ソーシング)
08:私の経験(4/4) -ヨギーとの出会い、投資実行、経営
09:日本でのサーチファンド浸透のために

追記:
サーチファンド・ジャパンを設立しました


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