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リハビリテーション専門職のための災害支援豆知識

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リハビリテーション専門職(特に言語聴覚士)が災害支援に関わる上で知っておくと良いかもしれないことをまとめています。
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災害時の医療支援団体と連携方法

災害時の医療支援団体と連携方法

災害時の医療支援には、さまざまなチームがある。本章では各チームの概要と、連携について述べる。

1)災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team;DMAT)
Disaster Medical Assistance Teamの頭文字からDMAT(ディーマット)と呼ばれている。DMATとは、大地震や航空機・列車事故等の災害時に被災者の生命を守るため、被災地に迅速

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被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜コミュニティ形成〜

被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜コミュニティ形成〜

9)コミュニティ形成
 復興期の活動には、ソーシャルキャピタルの視点からの検討が必要である。ソーシャルキャピタルとは、人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、 「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴のことである5)。
災害による環境の変化は、慢性疾患を持つ人は通院が難しくなる、災害後に定期的な受診が妨げられたことで死亡が増加するなど健康に長期的に影

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被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜精神保健〜

被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜精神保健〜

8)精神保健
大規模災害後の被災者において、精神健康被害の中でも不眠はきわめて多い訴えである。急性期不眠への医療的介入は長期的にPTSD の発症・移行を促進する可能性もあり、慎重に行うべきである。一方で、生活環境の悪化は不眠の遷延因子であるばかりか、PTSD 発症促進因子となることも知られているため、避難所生活や物資の不足、インフラの寸断、情報の不足などは、可及的早期に整備する必要がある4)。

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被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜聴覚障害者への対応〜

被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜聴覚障害者への対応〜

7)聴覚障害者への対応
 高齢者では難聴の方も多く、そのような方は避難所で大きな声を出すと迷惑がかかると思いコミュニケーションの機会が少なくなりやすい。普段は補聴器を使用していても避難の際に持ちだせなかった、電池がなくなってしまった等、使用が継続できない場合がある。
避難所においては、アナウンスのみでは物資や食糧の配給の情報が分からないため、手話通訳・要約筆記などの情報・コミュニケーション支援が必

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被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜コミュニケーション障害の方への対応〜

被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜コミュニケーション障害の方への対応〜

5)コミュニケーション障害の方への対応
日本PIC研究会と知的障害・自閉症児者のための読書活動を進める会が共同で作成した大災害時に、コミュニケーションがとれずに困っている人を支援するための災害用に使用するコミュニケーションボードも作成されている。大阪市の災害時コミュニケーションボードよりダウンロードもできる1,2)。
被災地の看護師、保健師など医療職や介護職・ヘルパー、行政担当者の方々のために、障

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被災高齢者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜生活不活発病〜

被災高齢者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜生活不活発病〜

4)生活不活発病

 避難所では、活動制限が起きやすい。床生活による立ち上がりの困難さ、トイレが十分に使えない、トイレの場所が遠い、自宅と違い仕事がない、やることがない、他にも周囲の人への遠慮から静かに過ごすといった理由により、これまで行っていたADL動作が行いづらくなることが少なくない。

 避難所生活が長引けば、それが原因となり被災前に介護サービスが必要なかった高齢者が生活不活発病を発症して要

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被災高齢者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜低栄養〜

被災高齢者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜低栄養〜

2)低栄養
発災早期は食料や水の確保が不十分である。また、配給される食事は、パンやおにぎりが中心であり、高齢者にとっては咀嚼や嚥下がしにくい場合も多い。その結果、喫食量が低下して低栄養を引き起こしやすい傾向にある。福祉避難所では、配給が毎食届かないことも少なくない。

届く配給内容は、水とパンやおにぎりなど炭水化物が中心である。高齢者にとっては、ペットボトルの蓋が開けられない、パンやおにぎりが食べ

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被災高齢者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜肺炎予防と口腔衛生〜

被災高齢者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動 〜肺炎予防と口腔衛生〜

1)肺炎予防・口腔衛生
災害関連死で最も多いのが肺炎と報告されている。災害時には、浄化された水の確保や洗面台の数等の問題と物品不足から口腔衛生環境が悪化しやすく、誤嚥性肺炎を発症しやすい。被災者の中には、避難時に歯ブラシや義歯、義歯洗浄剤などを持って出られず、口腔衛生物品が不足している者も多い。また、避難所で提供される歯ブラシが硬くて使用できない、義歯保管ケースがないため装用したまま就寝していると

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被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動

被災者に起こりうるリスクと言語聴覚士の活動

被災された高齢者や障害を抱えた方にに起こりうるリスクは非常に多い。そのうち、特に言語聴覚士が専門性を発揮できる部分を9項目挙げた。1項目づつ記事にしてます。

1)肺炎予防・口腔衛生
2)低栄養
3)嚥下障害者への対応
4)生活不活発病
5)コミュニケーション障害の方への対応
6)発達障害児・自閉症児や母親
7)聴覚障害者への対応
8)精神保健
9)コミュニティ形成

これら9項目の記事で使用して

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災害支援とリハビリテーション ことはじめ

災害支援とリハビリテーション ことはじめ

少しずつリハビリテーション専門職の中にも、災害支援活動に参加する方が増えてきたように思う。

日本は中国・インドネシア・イランに次いで地震大国である。1995年1月17日、阪神・淡路大震災が起こった。兵庫県を中心として関西の広域で甚大な被害を及ぼしました。小学生だったが、テレビに映る壮絶な光景はなんとなく記憶している。

その後、2011年3月11日、東日本大震災は宮城県を中心とした東北地方に津波

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被災地と災害医療

被災地と災害医療


1)災害のフェーズ
2)フェーズごとの言語聴覚士の役割
3)避難所の種類と状況

1)災害のフェーズ

災害時のフェーズは6つの区分に分かれている。

0期:発災直後:発災~6時間

1期:超急性期:72時間まで

2期:急性期:1週間程度まで

3期:亜急性期:1ヵ月程度まで

4期:慢性期:3ヵ月程度まで

5期:中長期:3ヵ月程度以降                 

である。

 主に

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