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哲学者だらけのコーヒー大会

ソクラテス:皆さん、今日はコーヒーのドリップ抽出をしていきましょう。せっかく参加してもらっているので、対話をしながら美味しいコーヒーを皆で淹れていきましょうね。
準備するものは、コーヒー豆、グラインダー、お湯、ドリッパーですが、揃っていますか?

タレス:万物の根元は水である。私は水しか用意しない

ソクラテス:タレスさん、それではコーヒーにはならないので、豆と道具も用意しましょうね。しかし、タレスさんの言うことは一理あります。コーヒーの99%は水であるので、使う水もいろいろ試してみるといいかもですね。

ハイデガー:そのグラインダー、ドリッパーとやらは使わないといけないのか?

ソクラテス:ハイデガーさんは道具に主導権を握られることで、自己が非本来性となることを嫌っているのですね。残念ながらこれらを使わないとコーヒーは淹れられません。むしろこれらは、あなた好みの味に調整できる優れものなのですよ。

ハイデガー:到来する結果に対し、道具的存在によっていかに見いだされるかということを現存材である私が予期する、ということか、なるほど。

ソクラテス:納得して頂けたようですね。それでは実際に淹れていきましょう。みなさん、抽出レシピは用意してきましたか?

サルトル:豆の挽き目は無段階、温度も88℃、89℃、90℃、、、時間も1分30秒、2分28秒、3分、、、いろいろやりようが多すぎて困るよ、自由の刑に処されている、!

キルケゴール:確かにレシピをつくりあげることは骨の折れる作業だ、私も何度も失敗し、絶望したよ。それでも、その苦しみを引き受け、自分を見失いそうな膨大なレシピの中でも、自分で選び決めることが大切なんじゃないか?こうやってつくりあげたこのコーヒー、ほら良い香りがするだろう?

サルトル:ほう、行動し自由のために戦った末にできたこの私好みの香り!、、、おえっ、しかしこの偶然的な味、求めていたはずなのに、、吐き気が、、、

ソクラテス:あら大変、そういえばサルトルさんは猫好きの猫アレルギーのように、偶然好きの偶然アレルギーでしたね。誰か、誰か完璧で必然的なコーヒーを!!

デカルト:待てっ!それは本当にコーヒーか?もしからしたらドリッパー内に雲ができて降らせた雨かもしれない。そしてその吐き気は本当に自分で感じた吐き気なのか?夢の中での幻想ではないか?
私が徹底的に疑いきり、理性を積み上げたこのコーヒーで落ち着きたまえ。

サルトル:ふぅ、落ち着いたよ、ありがとう。

ライプニッツ:何をごちゃごちゃやっているんだ。コーヒーなんぞ独立した黒い極小の点ではないか。そしてその点は性質を持っているから、難しいことを考えず、液体の世界にただそれを表像させればよいのではないか?

ハイデガー:なるほど、つまり豆自体の本来性に従う、ということだね。

スピノザ:それはいい考えだね。ただ、豆の善し悪しは条件の組み合わせによって決まるから、それぞれのコナトゥスが最大化する淹れ方にしよう。
今回の豆では、粗挽き・高温で淹れると華やかで美味しいよ。

ヒューム:スピノザさん、なぜ粗挽き・高温だと華やかといえるのですか?それはあなたがこれまで粗挽き・高温で淹れた経験、その事後、飲んだコーヒーが華やかだったという経験を結合させて勝手につくった信念ではないでしょうか。その信念を他人に押し付けたって誰も理解できませんよ。

カント:ヒュームさん、あなたの仰ることはごもっともだ。ただ、私は粗挽き・高温で淹れると華やかになる可能性があることを理解できる。たしかにそれらは主観であるのだが、我々は主観を認識し合うア・プリオリな規格を有しているのだよ。これによって我々は誰とでも理解しあい、新たな真理に向かって発展していくことができる。

ヒューム:誰とでも?

カント:そう、誰とでもだ。

ヒューム:じゃあ、あの人とでも、、、チラっ

藤岡弘、:ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、、、、、、、

ソクラテス:やれやれ、真理への道のりは長そうですね。

                             完



      


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