【鶏舎-池尻大橋】夏を、終わらせにきた。
誰がなんと言おうと夏が嫌いだ。
なんなら夏に家から出なくていいように今の働き方を選んだ気もする。
今年も梅雨の時期から天気がおかしかったから、梅雨入り前からほとんど家を出ていない。滋賀にいた時は、そんなずっと家にこもっていたら気が狂いそうで、すぐ車に乗ってどこかに行っていたんだけど、東京の家、殊更今の家に引っ越してからは、家から出なければいけない義務感を一切感じない。マンションだから人の気配がするのと、窓の外にも絶えず人や車が行き来している感じがあるからかもしれない。
9月に入って日が目に見えて短くなると切なくなってしまう人も多いかもしれないが、一方で生きる力が漲ってくる私みたいな人間もいる。夏の間に行きたいなと思うお店とか色々調べておいて、秋に色々と訪れたいと思っている。
9月頭、世間的にまだ夏は終わってない気配がする間に、とりあえずわたしは、わたし個人的で今年の夏を終わらせようと、青葉台の中華の名店、鶏舎に向かった。
前日よりもだいぶ冷えていたこともあり、人は少ないんじゃないかと思っていたのに、行ってみたらちゃんと列ができていた。舐めてた。
夏で許せるものが2つある。「冷麺」と「スイカ」だ。
この2つだけを心の支えに日本で夏を耐えていると言っても過言ではない。今年のスイカはもう食べ納めをしたので、あとは鶏舎で「冷やしネギソバのネギ増し、スープ付き」を食べればわたしの夏は終わり。
いつきても店員さんの距離感が近すぎず遠すぎず、絶妙で素晴らしい。一方で並んでいる人は、特に平日は近くのオフィスで働く人が多く、基本的に愚痴っぽい人が1人は居る。大体15分は並ぶので、イヤホンを忘れると嫌でも前後に並ぶ、赤の他人の務める会社の雰囲気と人間関係を理解してしまう。
休みの日にこればこういう会社の人たちはいないかもしれないけど、代わりにカップルが増えて、並ぶ時間がもっと長いと思う。
さて今日は15分くらいで入れた。夏を終わらせにきたわたしを攻撃するかのような冷房直撃、一番奥の席。受けて立とうじゃないか。
鶏舎は、席につけばまずスープが出て来る。これはもう着席すぐにだ。そのあと、結構、それは結構に時間を置いて冷やしネギソバが出て来るので、その間1人だとどうやって時間を潰すかがポイント。今回は、今年の夏に思いを馳せた。
今年の夏のスタートは、やはり5月末頃からだっただろう。梅雨に入ってもないのに暑い日々。からのちょっと雨が降って、カンカン照り。気象庁を差し置いてTwitterで有吉さんが梅雨明け宣言してたの面白かったな。7月はただただ仕事してた気がするな。8月はコロナかかって大変だった。そこから溜まった仕事をこなしていたらあっという間に9月。今年こそ確定申告だの税務処理だの色々済ませておこうと思ったのに、あと3ヶ月で今年が終わるだなんて。気が滅入りそうになったところで冷やしネギソバが出てきた。
初めて鶏舎に訪れた時は秋の始めで、冷やしネギソバが終わってすぐの頃だった。仕方なく温かいネギソバを頼んでみたところ、上に乗っている貝割れ大根の、上側頭の葉っぱと、下側の切り口がどちらも揃っていることにかなり感動したとどこかで書いた気がする。味の重ね方、食感の多様性、ひいては全体のバランス、全てが考えられていて、なんだか汚いイメージがある街中華のイメージが一蹴された衝撃だった。そこから1年待って冷やしネギソバをついに食べて、また感動できたのはお店の実力そのもの。口当たりのいい細麺に香ばしいネギ油が絡んでいくらでも食べられる気がする。正直この量の麺を食べるのは鶏舎でだけな気がする。
エアコン直風の洗礼を受けながら全部平らげて夏を終えた。並んでいる間ずっと愚痴を言っていた人も「なにこれうまい」なんて言いながら黙々と食べていた。美味しいものは嫌なことを忘れさせてくれるよね。午後からも仕事頑張ってほしいな、と思ってお店を出たところから、私の今年の秋が始まった。
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