生姜、蜂針療法、そして漢方
先日の健康診断で、自分の体重を見てから、なんとなくずっと自分の身体について考えてしまっている。私は中学生の頃から下半身デブで、下半身に比べればましだと感じているが、勿論、顔や腕や腹もしっかり太る。とにかく人生で完全に自分の理想通りの身体でいたことがないと感じる程の、体型コンプレックスがある。もう30歳手前で、下半身の脂肪吸引もしたし、食べることは人生の最大の喜びであり、自分のむちむち具合にも納得していたと思っていたのだが全然違った。体重を数値として見てしまうとー表示されていた適正体重より僅かに数値は低かったにも関わらずー自分のことが太くて太くて仕方がないように感じてしまうのである。
20代前半の頃はそれなりにダイエットもこなし、筋トレにハマった時期もあり、食に気を遣っていた時期もあった。20代半ばで演劇活動をしていた頃は動いていたからか、そこまで体型に関しては気にしていなかったが、浮腫とはいつも戦っていた。そして、痩せている女の子の役の時に限って、ストレスでむくむくに太ってしまったことを覚えている。社会人になってから、職場の同僚たちのスタイルがあまりに良いので、YouTubeを見てエクササイズに励み、セルライトを破壊するというエステに行き、パーソナルジムに登録し、痩せたり太ったりを繰り返していた。現在の仕事についてからは、そこまで体型を気にすることはなくなったのだが、パーソナルジムの回数がまだ残っているのに、ホットヨガに通い出したりと、色々手を出した挙句、半年前に遂に脂肪吸引に至るのである。
脂肪吸引を行った理由には、体型がきっかけでの気持ちの浮き沈み、精神的な不安定さを改善したいというところも大きく、確かに半年間はダウンタイムを除いて、ほとんど体型を気にもせず(タイで水が合わなかったのか、食事が合わなかったのか連日脚がむくみでぱんぱんになってしまったことを除いて)過ごしてきたのだが、ここにきてやはり気になってきた。確かに太もものボリュームでつまって、以前は履けなかったスキニーパンツが履けるようになった。しかし脚のむくみ自体は変わらず、今度は腹回りにしっかり肉がついてきたような気がするのである。
経験談から言うと、私は半年ぐらいのサイクルで、緩やかに太ったり痩せたりを繰り返しているので、恐らくこのまま太り続けるのではなく、ある時にふとちょっと痩せたかも!と思う日がきてくれると信じているのだが、先日半年ぶりにパーソナルジムへ行き、自分の数値を見てみると、脂肪吸引前より体脂肪率が増えていた。そして、筋肉量ががくりと下がっていた。体重はほぼ一緒であった。
この半年でやめたことと言えばヨガである。それと夜の仕事でお酒を飲む量が増えた。しかし、この数値はそこまで衝撃的ではない。脂肪量や筋肉量の数字よりも何よりも、私が身体に違和感を覚えているのは、ずっと悩まされている冷えである。
私はただ身体が太いだけではなく、恐らく浮腫による水太りでもある、と言うのが最近の私のセオリーだ。身体が温まればすっと痩せていくのではないか、そう思って食事制限や運動はあまり考えず、冷え取りばかり考えている。しかし、すぐに末端から冷えていく身体には、電気毛布もカイロもお気に入りのレッグウォーマーもあまり意味がない。氷のような手足に、本当に寒い日は手がかじかじんで、キーボードをスムーズに打てなくなるほどである。思えば子供の頃は脚の指には必ず霜焼けができていたし、いつも紫色のゾンビのような手をしていた。体育館での集会など、もう身体が冷え切ってしまっていたし、体温が特別に低いわけではないが、内臓以外の場所、肩や腕脚はいつも冷たかった。
パーソナルジム2週目で、整体もわかるトレーナーさんに当たった。彼が身体を色々をほぐそうとしてくれ、素晴らしいストレッチとトレーニングだったのだが、やはり手足は冷たいまま。
ちなみに彼によると私は脚の歪みも顕著で、膝が内側に入り込むX脚からの膝下O脚だそうである。確かに膝はいつも内側を向いていて嫌だったが、X脚なんて思ったことがなかった。なぜならかつてよく遊んだ友達にX脚で真っ直ぐに立つと膝がつく女の子がいたが、彼女はすらっとしてとても綺麗な美脚の持ち主だったからである。しかし、トレーナーさんによると、一般的にO客としか思われていない、膝がくっつかない脚の持ち主の多くは実はねじれの強いX脚らしい。
私の身体はなんと腕すらも浮腫んでいて、しかもがちがちに固まっている。これが柔らかくなれば随分変わりますよ、と言われたし、その通りだと思うほど身体の強張りは自覚している。むしろ、中高生時代に、ある日誤って別の女子の身体に触れてしまった時(腕かなにか)そのマシュマロのような柔らかさと、自分の身体の固さとの違いに衝撃を受け、例えちょっとぐらいぽっちゃりしていたとしても、身体がこんなに柔らかいのはなんて素敵なのだろうと思ったことがあったのを今でも鮮明に覚えているほど、昔からとにかく私は冷たくて紫色で固かった。
トレーナーさんは3ヶ月で脂肪を6kg落として筋肉を3kg増やしましょう!なんて言うが、何しろ生きる上での楽しみがほぼ食事なので、なんとなく食事制限のやる気は落きないのが本音なのである。トレーナーさんの前では頑張ります、と曖昧に答えつつ、私は冷えの方を何とかしよう、そうしたら体重も体脂肪もスタイルも多少なりとも改善するはずだとよくわからない理屈をこねくり出して、心の中でダイエットではなく、体質改善を誓ったのだった。
冷えをなくそう、ということで最初に思いついたのは生姜である。生姜とシナモンに熱湯を注いだものを数日飲んだ。その後、生姜パウダーをAmazonで購入して、はちみつ紅茶に毎度小さじ一杯入れて飲むことにした。これを仕事中に以前より飲んでいた普通のお茶(緑茶でも紅茶でもなんでも)の代わりに飲み続ける。時々シナモンスティックで混ぜたりして、確かに気持ちは暖かくなったが、冷える時はやはり冷えるのだった。このはちみつ紅茶は祖父に随分前に貰って賞味期限が切れていたし、シナモンスティックに至っては数年前、手作りチャイティを作ってみた時からずっと家にあったもので、やはり賞味期限はまだいけるだろ!と思える程度には切れている。捨てるのは抵抗があるので、無駄にせず使えたことが誇らしい。
次に行ったのは蜂針療法である。いきなり話がぶっ飛ぶのだが、ミツバチの針を身体に刺す自然療法である。かつて観たNetflixのドキュメンタリーで蜂針療法で大病が治った話をやっていて、その時から気にはなっていたものが東京で試せるというのでお願いをしてきた。一般的な治療に見放されたガンがあるわけでもなく、ただの冷えという相談にも関わらず、結果、手の指先や頭、肩、おへそ周り、鼠蹊部から足先、さらには顔のニキビにまで、たっぷりと刺して頂いた。一針で5から10回程度刺していたように思う。針を失えば死ぬしかないミツバチの尊い命に感謝をしつつ、私は殺生をしてでも冷えを治したいと思った。例えれば、肉料理や魚料理を食べている時と同じ気持ちである。必要ではない殺しは避けるべきという、ヴィーガンの主張も理解はできるが、私は牛肉の味を諦めることはない。割り切って、貪欲に、自分が少しでも良くなる可能性と好奇心の為に、私は蜂の命を頂いたのである。
施術後駅まで歩いていると、急に視界が開け、クリアになり、世界が明るくなった気がした。その後家で熱いシャワーを浴びると刺されたところがピリピリとして気持ちが良かった。しかしまあ、ミツバチの毒を少しずつ身体に入れたところで、一度では冷えは治らない。毒の量を調整してくれるのだが、恐らく調整し損ねたであろう箇所が一部、蚊に刺されたように腫れている。顔のニキビも治るとのことだったが、結局跡が残ったままである。しかし、自然の毒を身体に入れるというのはなんとも病みつきになりそうな説明し難い心地よさと浄化感があるもので、私は暫くしたらまた行きたいな、と思うのである。
最後に尋ねたのは同僚から勧められた漢方薬局である。横浜の中華街で、舌の状態を診て漢方を処方してくれる場所があるという。予約もなしに尋ねてみると、恐らく中華系の女性の先生が快く対応してくれた。初見でいきなりのぼせと睡眠不足ですね、と言われ、沢山寝ていますというと、夢を見るでしょう、と。確かに夢ばかり見て、それを楽しんでいたのだが、眠りが浅いらしい。
冷えについて聞き、言われるがまま舌を出したところ、私はどうやら舌を真っ直ぐに出すことができないということもわかった。どうしても、私から見て左に歪んでいるのだそうである。自分としては真っ直ぐに突き出した舌を見せていたと思っていたので、これが一番衝撃だった。先生はその舌の症状は陰で、水が多いんですね、と言われ、さらに顔はのぼせて炎症を起こしていますと続けた。のぼせ、とは何かというと脳に水が多く、あまり思考もクリアではない、というような言い方をしていたので、そちらも衝撃だった。確かに頭が切れる方ではないけれど、いっつものぼせた状態なのか、と自分の頭の動きを非常に残念に感じたのである。ちなみに炎症とはどんな具合なのか、聞くことはできなかったのだが、これもまあ身体について調べていると良く聞くワードであるので、なんとなくで理解をした。改善の余地があることには間違いない。
良くわからなかったのは、冷たいものを飲みたがるでしょう、とかイライラするでしょう、とか腰が痛いでしょうとか言われたことだった。しかし考えてみれば、確かに水分摂取量は非常に多い。喉が乾くというよりも、口の中が乾いたり、作業中に口寂しくて常に大きなマグカップでお茶を飲んでいる。最初は熱いがすぐ冷える。先生に、人が一日に受け入れられる水の量は実は500ml程度なんですよ、と言われそれも驚く。かつてまだ20代前半だった頃、漢方を良く処方してくれる医者に、水を飲み過ぎですと言われたのを思い出す。それが冷えになります、と。ただ、当時はジムでしっかりと運動をして、体験程度だがクロスフィットも行っていた時期であり、逆に2リットルぐらい水を飲むのが理想だと聞かされていたので、いや水飲んだ方がいいでしょう、と心の中で反発していた。どうやら東洋医学的には、水の過剰摂取は推奨されていないらしい。むくみだ冷えだ文句を言い、水を出したいのに、そもそも飲み過ぎのようである。
腰よりも肩や背中が痛くなることがあるのが本音だが、イライラに関しては、以前中華街で手相を見てもらった時も、短気と言われたことを思い出す。自覚していないだけでそうなのかもしれない、何だか色々と恐ろしい。
結局、睡眠とむくみに効く漢方、そして頓服的に、と少量の眼の疲れや乾きに効く漢方を処方して貰って帰路についた。早速飲んで寝たが、やはり夢は見る。つくづく、私は現代人でらしく、何にでも速攻性を期待してしまっていることに呆れてみる。継続するには痛い出費ではあるが、その心配をする前に購入した分はしっかりと。ということで、とりあえずは20日間続けてみる。
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