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児童文学

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記事一覧

【児童文学】どんぶりこがやってきた(終)

【児童文学】どんぶりこがやってきた(終)

9.どんぶりこ?!

 あっという間に春休みが終わり、五年生になって、やっと夏休みがやってきた。
 また、ひめの世話をしてほしいとたのまれて、久しぶりに愛ちゃんの家にやって来た。
「ひかる、いらっしゃい。ひかるが帰ってから、ひめがすごくさびしがってたのよ」
「そっか、ごめんごめん」
 ひめって、やっぱり見ているだけでいやされる。
「でもだいじょうぶ。もう一頭飼うことにしたから」
「え、そうなの?

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【児童文学】どんぶりこがやってきた⑦

【児童文学】どんぶりこがやってきた⑦

7.黒天女のこうげき

「ワンワン! ワンワン!」
 ひめが、庭の方ではげしくほえている。
「テンションマックスじゃん。あいつ、かっこよくなったのがよほどうれしいんだなあ」
「いやちがう。ひかる、来るのじゃ」
 どんぶりこが、急いで庭にむかった。どうしたっていうんだ。
 外にでると、ひめが屋根にむかってほえていた。屋根にずらっとならんだカラスが、声も立てずにじっとこっちを見おろしている。
「いつ

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【児童文学】どんぶりこがやってきた⑥

【児童文学】どんぶりこがやってきた⑥

6.特別な実

 あしたは、愛ちゃんが帰ってくる日。ぼくは、どんぶりことすっかりなかよくなっていた。
 どんぶりこが床の間で、小銭を入れたつぼの中をのぞいていた。そんなの見るとやっぱり気になる。
「なあどんぶりこ、その小銭どうするのか、ぼちぼち教えてくれよ」
「よかろう、教えてやろう。小銭もこれだけあればじゅうぶんじゃ。この小銭はな、願いがかなう実を作る時の肥料にするのじゃ。ひかる、こっちに来る

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【児童文学】どんぶりこがやってきた⑤

【児童文学】どんぶりこがやってきた⑤

5.ガチャマシンで金もうけ

 久しぶりに、ひめとぼくだけでまったりした時間をすごす。が、そんな時間は長くはつづかなかった。やっぱり。
 昼前には、どんぶりこが帰って来た。どうやってかせいだのか、ふところから百円玉をだし、床の間にあるつぼの中にジャラジャラと入れた。
「ひかる、おまえにも小銭のかせぎ方を教えてやろう」
「別にいいよ」
「おもしろいぞ」
「いいってば」
「そうか、おまえは疲れて帰っ

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【児童文学】どんぶりこがやってきた④

【児童文学】どんぶりこがやってきた④

4.カプセルの実

 トイレからでてくると、ひめがどんぶりことじゃれあっていた。もう手なずけたのか。どんぶりこおそるべし。
「さてと、種も見つかったし、わしは帰ることにする。あとはひめと仲よくやってくれ」
 どんぶりこは、着ているパーカーのポケットからカプセルを取りだして、すきっ歯まるだしで笑った。
「え、種? カプセルの中にあったのか?」
「それがの、このフードの中にあったのじゃ」
 どんぶり

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【児童文学】どんぶりこがやってきた③

【児童文学】どんぶりこがやってきた③

3.どんぶりこ、いすわる

「おい、坊主。おまえ、いつまでいるんだ? ジュース飲んだら気がすんだだろ」
「坊主? わしのことか?」
「他にいないだろ」
「わしには、曇天鰤太古(どんてんぶりたいこ)という立派な名前がある。ひとよんで『どんぶりこ』じゃ。最初に名のったであろう」
「うそだ、聞いてないよ」
「『どんぶりこー、誰かおるかのう』と言うた」
 そんなのわかるわけない。
「そういうおまえは誰じ

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【児童文学】どんぶりこがやってきた②

【児童文学】どんぶりこがやってきた②

2.あやしい坊主

 愛ちゃんはかあさんの妹だけど、愛ちゃんってよばないといけない。おばちゃんって言うと、きげんが悪くなる。
 夕べぼくは、その愛ちゃんが持って帰って来た、ごうか弁当をお腹いっぱい食べて、朝はササッと焼いてくれたトーストを食べた。それから愛ちゃんは、ぼくの昼ごはんのお金をおいて、バタバタとでかけて行った。ふう……、急にガランとする。
 ふた間つづきの広い客間に納戸、ほとんど使って

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【児童文学】どんぶりこがやってきた①

【児童文学】どんぶりこがやってきた①

1.愛ちゃんの家へ行く


 春休み最初の日、朝ねぼうをしても怒られないはずの日に、いきなりかあさんに起こされた。
「ひかる、起きなさい。あんた春休みに何もやることないんでしょ。愛ちゃんがひめの世話をしてほしいんだって」
「愛ちゃんが?」
「そう、なぜかひかるによくなついているからって」
「えー、どうしようかなあ」
 ひめは、ブルテリアっていう種類のメス犬。短い毛でがっちりした体に、のっぺりした

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【児童文学】傷だらけのヒーロー

【児童文学】傷だらけのヒーロー

 階段をかけ上がった元太は、自分の部屋のドアをバーンと力まかせに閉めた。天井を見あげた口はへの字にまがり、にぎりこぶしがプルプルふるえている。
 ドアの外から、少しイラついたママの声が聞こえた。
「だってしかたないじゃない。もも熱があるんだから」
「わかってるよ」
 妹のももが風邪をひいた。そんなときに遊園地に行けないことくらい、元太だってわかっている。
 だけど元太は、遊園地でやっているヒーロー

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【児童文学】リコとルイーザ

【児童文学】リコとルイーザ

 二年一組に、ブラジルから てんこう生が やってきました。
 長い 黒かみに カチューシャをして、目が ぱっちりした 女の子です。名前は、ルイーザと いいました。
 クラスの みんなは、ルイーザのことを チラチラ 見たり、友だちと ひそひそ 話したりしています。外国から 来た てんこう生は はじめてだったし、ルイーザは ことばも よく わからなかったので、だれも どうしたらいいか わからないのです

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