洋楽の歌詞が深くて楽しい。#1 Goodbye Yellow Brick Road
初めての投稿です。ちょっとだけ自己紹介します。
現在オンラインで英語講師をしています。留学も海外経験もありませんが、失業と自分の病気をきっかけに30代半ばから英語学習を再開し、10年以上たった今では不自由なく話せるようになりました。TOEICも980とれたので、今の英語講師の仕事にもつけました。
私の英語学習は洋楽の歌詞の理解がメインです。学生時代から洋楽が大好きで、当時は意味もわからずに歌っていました。英語の学習を再び始めたとき、ふと思い立って歌詞の意味を細かく調べていったところ、本当に楽しくて結果的に英語力の向上にもなったので、今では洋楽を使った英語トレーニング方法をオンラインで皆さまにお伝えしています。
今日はElton Johnの名曲「Goodbye Yellow Brick Road」について私なりの解釈でお話しようと思います。有名な曲なので和訳もいろんな解釈もたくさん出ていますが、あえて「和訳」ではない説明をしています。いわゆる「正しい訳」ではありませんが、英語のことばをひとつひとつ見ていくことで、思いがけない景色が見えて来ます。その景色が見えることが語学を学ぶ楽しさで、私はそれを見たくて勉強を続けて来たのだと思います。
語学のその先に見える景色って楽しいな、と思って読んでいただけると嬉しいです。
まずタイトルの「Goodbye Yellow Brick Road」は「黄昏のレンガ路」という邦題がついていますが、私はこれを「サヨナラ成金街道」と解釈しています。Yellow Brickが金の延べ棒みたいに見えるのです。
この曲、ほんとに職人技です。メロディーと文法、言葉の意味と比喩がピターッと噛み合って、私は密かに「螺鈿細工や箱根の寄木細工のような伝統工芸」だと思っています。いやほんと。
歌い出しはこんな感じです。
When are you gonna come down?
When are you going to land?
I should have stayed on the farm
I should have listened to my old man
辞書を引くとCome downは「故郷に帰る」という意味があり、going to land「農業に従事する、地に足をつけた生活」とあるので、最初の2行は故郷の家族が「お前いつ実家に帰ってくるんだ」「いつになったらマトモな生活をするんだ」ってヤイヤイ言ってるのかな、と想像できます。
次の2行、「should have」はちょっと後悔してる時に使うことが多いので「(実家の)農場にとどまってりゃ良かった」old manは「家族の中の年長の男性」なので多分実家のお父さんですね。なので「親父のいうことを聞いていれば良かったんだ」ということで、今は実家の農家を離れて都会暮らしをし、どうやらそれを後悔していることがわかります。
この最初の4行だけで登場人物の生い立ちと家族関係、現状の暮らし、今どう思ってて何をしようとしているかが、ありありと浮かんで来ます。ピアノのイントロメロディーともバッチリ合ってます。エルトンまじすごすぎる。
You know you can't hold me forever
I didn't sign up with you
I'm not a present for your friends to open
This boy's too young to be singing, the blues
次にYouがでてきますが、このYouは誰?って思いながら読み進めると、頭の2行で「僕を永遠に捕まえておくなんてできないよ」「君と契約したわけじゃないし」とあるので、どうやらこのYouは主人公が都会で世話になっている?らしい上司や仕事仲間らしいな、とみえてきます。
「君の友達を喜ばせるためのプレゼントじゃないんだよ」と言った後で、「ブルースを歌うには僕は若すぎる」とあります。ブルースは一般的に労働者などが望郷や人生の労苦を歌ったものが多いので、おそらくこの主人公(若い男性とわかります)は歌手なんですかね。人生経験がまだ浅すぎるからブルースみたいな辛い歌を説得力のあるふうに歌えないんだよ、と言っているかのようです。とするとYouはプロデューサーとかレコード会社の人かしら、と思ったりします。Youの友達って付き合い浅そうです。友達のパーティーか何かを盛り上げるためにこの「新人歌手」を連れて行ってるような感じがします。
で、サビで「こんな成金街道にはおさらばだ」とついに叫んでます。成金街道にはうるさい犬がギャンギャン吠えているらしいし。
So goodbye yellow brick road
Where the dogs of society howl
You can't plant me in your penthouse
I'm going back to my plough
howlは「ほえる」の意味ですが「dogs of society howl = 社会の犬が吠える」というよりは、都会でのどんちゃん騒ぎを表しているのかなと思いました。Penthouseは高級マンションの最上階フロア全部1室、みたいなお部屋ですね。ペントハウス。いかにもお金かかってそうですが、You can't plant me 「僕を植えることはできない」=そんなところに僕をずっと置いとくのは勘弁してよ、って言ってますね。
個人的にすごいと思ったのがこのploughです。辞書には「鋤」とあるので、「僕の鋤に戻る=実家の農家に帰る」とひとまずは取れるのですが、辞書には農具のこと以外にも「北斗七星」っていう意味がありました。北斗七星って確かヒシャクのどこかを伸ばしていくと北極星が見つかる「道しるべ」みたいな星ですから、そこにBack(=戻る)っていうことは、人生航路についてもこの主人公は「実家に帰る、人生の方向を変える」って言ってるみたいに思えます。深いです。
Back to the howling old owl in the woods
Hunting the horny back toad
Oh I've finally decided my future lies
Beyond the yellow brick road
戻る先はhowling old owl in the woods = 田舎の森でフクロウが「ホー・ホー」と鳴いている実家の農場です。horny back toadは背中にイボイボのある大きなカエルなので、田舎の畑とかには確かにいそうです。old owlは前にもしかしたら実家の親父さんの比喩かもしれません。前出の都会の「犬のどんちゃん騒ぎ」と同じ単語 (howl)を使っているのに鳴き方が全然ちがいます。都会の動と田舎の静をきっちり対比させているところがすごい。
I've finally decided 〜と現在完了形なので、この主人公が過去のどこかの時点から悩んで、つい最近になって「実家に帰る」という決意を固めたことがわかります。英語の歌詞の時制とか助動詞が変わるところって感情が動いているところが多いんですが、こういうさりげない使い方で悩んでる期間まで出しちゃうあたり、やはりエルトンすごいです。
で、自分の人生は成金街道の向こう側(成金街道なんか関係のねえところ)にあるってわかっちゃったんですね。
2番はプロデューサーYouに対してのこれでもかというほどの三行半を突きつけます。
ちょっと長くなったので2番は次の投稿で解説します。もし良かったら続きもお読みいただけると嬉しいです。(続きは以下のリンクから)
YouTubeではちょっとレトロなエルトンが歌ってますね。
それでは、また。
サポートいただけましたら、今後の活動費にありがたく使わせていただきます。 今後も楽しい記事をご提供できるように、努力していきます。(*‘∀‘)