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洋楽の歌詞が深くて楽しい。 #2 Goodbye Yellow Brick Road(続き)

前回はElton Johnの「Goodbye Yellow Brick Road」の歌詞解釈について書きました。1番の歌詞では、この歌の主人公?の生い立ちと境遇、今後の人生設計についての景色が見えて来ました。今回はその続きの2番のストーリーを見ていきます。

1番は前回の記事をどうぞ^^

前回の記事は初めての投稿にも関わらず、6件もスキをいただけて大変嬉しかったです。お読みいただいたかた、ありがとうございました。

今日お話する2番も1番に劣らず、エルトンの職人技が冴える仕上がりです。1番の歌詞で自分の雇い主?であるプロデューサーYouに「ここをやめて故郷に帰る」と告げた主人公boyですが、2番の歌詞ではこのYouに対してのキツーい言葉が続きます。

What do you think you'll do then?
I bet that'll shoot down your plane
It'll take you a couple of vodka and tonics
To set you on your feet again

1行目で「で、あんたこれから何すんの?(オレがやめた後)」you'll do then?って、(予定があらかじめわかっている)you are going toじゃなくて(今決めろ的な)willで聞いているので、Youにしたらけっこういきなりな話です。そんなこと急に言われたって知らねえよ、それよりオマエ考え直せよって返事が来そうです。

2行目は主人公boyがさらに追い討ちをかけます。I bet (ま、オレの想像では)that'll(オレがやめたら) shoot down your plane(あんたの飛行機が撃ち落とされる=あんたの立場も地に堕ちるよな)って感じです。betって賭け事のときにルーレットとかポーカーとかのテーブルの上にコインを「張る」ようなイメージなので、確率としては五分五分くらいでしょうか。相手の都合におかまいなしに適当に言い放ってる雰囲気がただよってきます。

飛行機の比喩がさりげなく入ってますが、後でちゃんと伏線回収されるのでなんとなく覚えておいてください^^歌詞を調べてて、こういうのが見つかるとほんと楽しいです。

It'll take you(あんたにはコレが要るだろうよ)コレ= a couple of vodka and tonics(ウォッカとトニック2、3杯)ウォッカもトニックも強いお酒です。To set you on your feet again=もう一度地に足つけるために(=再起するために)酒でも飲まなきゃやってられないだろうな、とYouを突き放す主人公boy。映画でいうとクライマックスあたりかしら。

私はお酒は詳しくないのですが、プロデューサーYouが「やってられっか!」って言いながらパブとかバーとかで強いお酒を気付け薬のようにあおってるイメージが思い浮かびます。何だかやさぐれた印象です。プロデューサーYouもこの主人公boyに辞められるのはけっこうショックなんでしょうね。

主人公boyのプロデューサーYouに対する罵詈雑言はつづきます。

Maybe you'll get a replacement
There's plenty like me to be found
Mongrels who ain't got a penny
Sniffing for tidbits like you on the ground

Maybe はコレまた確率としては五分五分(もしかしたら)you'll get a replacement(代わりの奴が見つかるかもな)、There's plenty like me (オレみたいな奴はたくさんいる)to be foundは直前のmeにかかるので、「オレみたいな奴はたくさん見つかるさ」って「適当に言い放つ」感じです。もし代わりがいなくてプロデューサーYouが困ったって、オレの知ったこっちゃねえよ、という気持ちがみえてきます。

Mongrels は雑種犬、野良犬、という意味ですが、イギリスのスラングでは「卑劣な奴、イヤな奴」という意味で使われるようです。(Elton Johnは英国人)1番で出て来た都会のどんちゃん騒ぎが「dogs of society howl」とあったので、ここでもちゃんと犬を持ってくるあたり、さすがです。

じゃあどんなイヤな奴なのか、という説明が続きます。who ain't got a penny1ペニーも持っていない(=文無し)、tidbitsは「うまい話、儲けもの」なので、Sniffing for tidbits (=うまい話を鼻をクンクン言わせて嗅ぎ回る)like you (あんたみたいに)on the ground(地べたを)ということで、つまり、「あんたみたいに、うまい話が地べたに転がってないか、しじゅう嗅ぎ回ってるような文無しのろくでなし」ならいるんじゃねえか、って言ってるんですね。後釜が見つかったところでロクでもない奴しかいねえよ、っていう感じがします。

この前の段落で、「あんたの飛行機が撃ち落とされる」があったので、後で地面を嗅ぎ回る描写を持ってくることで目線が空から地上にちゃんと移っています。エルトン監督のカメラワークの切り替えがすごいなあと思って個人的にかなり感動しました。

一つ思うのは、この2番の歌詞全体が現在形と未来形だけで話が進んでいて「Youに対して過去の恩とか義理とか情とか遠慮とか一切入っていない」のです。しかも、敬語とかそれに近い表現ならwouldとかcouldとかちょっとくらい入っていそうな気もしますがそれもないので、思いっきりタメ口、何があったか知らんけど、もう会う気もない人に対して言いたい放題なのが伝わって来ます。

ちょっと石原裕次郎とか加山雄三ふう(古)になりますが、ここまで来たらこの後のサビはもうこんなふうにしか聞こえません。

So goodbye yellow brick road あばよ成金街道
Where the dogs of society howl やかましい社会の(クズ)犬だらけのこんなところ
You can't plant me in your penthouse あんたのペントハウス(かなんだか知らねえが)にオレは置いとけないぜ
I'm going back to my plough オレは田舎に帰って人生やりなおすんだ(人生やりなおす=ploughが鋤と北斗七星の二つの意味をもつため)

Back to the howling old owl in the woods (親父みたいな)森の古フクロウに戻るんだ
Hunting the horny back toad イボイボガエルを追っかけてな
Oh I've finally decided my future lies (いろいろあったけど)オレは人生決めたんだ
Beyond the yellow brick road (オレの未来は)成金街道を超えたあっち側にあるってさ

なお、(かっこ)は私の想像なので、対応する英語はございません。私の解釈による想像上の景色を書いているため、正しい訳ではございません。

それでも、英語を母語としない素人がちょっと調べただけでも、気の利いた短編映画を見終わったような気分にさせてくれる、見事な歌詞です。

馴染みやすいメロディー、的確な比喩、伏線の回収、同じ単語で意味を使い分けて情景を広げる、これが3分(!)の曲の中に全部きっちり入っているこの職人技、エルトンほんまええ仕事してはりますなあ。(関西弁)

エルトンジョン?知らんし、古いし、というかたも、よかったらぜひ一度聴いてみてください。名曲には名曲の理由があるのです^^

最後までお読みいただいてありがとうございました。楽しんでいただけたら幸いです。また違う曲の歌詞も書いていこうと思います。



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