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地方に住む若者が、私との個別面談を希望してくれた理由。

私は札幌で生命保険外交員の仕事をしている。

私は子どもはいないが既婚で、大学は学費未納で除籍、ヘッドハントを受けて(エッヘン)今の会社にいるわけだが、毎日、性別を問わずいろんな年代の人と話す。


先日、札幌市から高速を飛ばして約2時間、距離にして約120km離れた町の、とある企業に招かれ、従業員の金融リテラシー向上を目的とした研修講師の仕事を依頼された。


「地方の町ですから、真新しい情報はほとんど入ってこないので、ガンガン話しちゃってください」


打ち合わせの時に、先方の担当者からそう言われて「そうなんですね」と言ってすぐ、どんな話をしようかな、と頭の中で構成を練った。


「ちなみに、従業員さんの
 年代は何歳代が多いですか?」

と私が聞くと、

「20代が3人、あとは、ほとんどが50代です」


地方の町にありがちだ。
若者はほとんどが都市部に出て、中高年層が会社を回している、そういう企業である。



研修当日。


札幌から車をかっ飛ばして、約2時間運転する。途中、小腹が空いたので、その企業近くのセブンイレブンに立ち寄り、BIGポークフランクを一本買って食べた。

BIGポークフランクは美味しいなぁ。
1番美味しいやつ


まさか研修講師がコンビニでBIGポークフランクを買って食べているとは誰も思うまい、と、ほくそ笑みながら、研修先の企業に到着した。




研修では1時間話す。


初対面の約20名の前で、札幌からやってきた謎の男が「今から人生の攻略法を授けます」とニヤニヤして話すのだ。

「あとは全部俺に任せろ、って言って、北海道のいろんな企業に行ってホラ吹いとるんですわ」
こう言うと笑ってくれる



研修内容は「なぜ金融教育が重要なのか」から始まり「具体的な考え方」や「ノウハウ」を話すものなのだが、この日の研修も多いに盛り上がった。


私としては年間で20回程度ではあるが、こういった研修講師をおこなうから、ある種の脳のバグで、大勢の大人の前で話す、という行為に緊張感はもはやない(うそ、緊張する)。

どうやってみんなを笑わせようか、参加者をどうやってイジろうか、と常に考えている。

この日もそうだった。



研修が終わると毎回、アンケートを取る。

そのアンケートの中には「個別相談を希望しますか?」という項目があり、私が講師をやると、多い時で85%、少ない時でも60%程が個別相談になる。

この日の研修後のアンケートでは
70%が個別相談希望となった。



会社に戻って、回収したアンケートをペラペラ眺めていると、20代の若者3人のアンケートが目に入った。個別相談の箇所に目を向けると、3人が3人とも「個別相談希望」にチェックがついている。

あの子たち、終始ニヤニヤしてたしなぁ


正直、研修中から手ごたえはあった。

ペラペラと1時間話していたわけだが、
20代の3人は、なんかずっと笑ってた。

地方に住む20代の若者からすれば、なんか年齢の近そうな男が札幌からやってきて、大人たちにヘラヘラしながら、ロジックと少しのユーモアを持ってしゃべり散らすのだ。

要するに「この人ともっと話してみたい」と思ってもらえれば、ビジネスの勝ち負けで言えば、勝ちなのである。

※無論、勝ち負けではないが



研修が終わって後日、またその地方の企業へ行くことにした。個別相談をするためだ。どんなに綺麗事を言っても、個別相談の最終目的は生命保険の提案をすることである。

どこの保険会社もやらないような詳細なヒアリングをして、課題発見の手伝いをする。その課題解決の手段として保険を提案するのだ。課題がないパターンもある。その時は提案なんてしない。


50代の従業員との個別相談をひと通り終えて、20代3人の個別相談を立て続けにおこなった。

・Aさん 男性 26歳
・Bさん 男性 25歳
・Cさん 男性 21歳


彼らに声をかけると、全員ニヤニヤしていた。

「あ、あの時の講師の人だ」

みたいな感じでニヤニヤしているのだ。
当然、私もニヤニヤする。

歳の近い20代の男の子と喋りたいよ、私だって。


個別相談の冒頭で、私は必ず、 


「なぜ個別相談を希望されたのですか?」


と聞くようにしている。


すると多くの方が、

「いま、月々の保険料が負担なので」
「老後の資金に不安があって」
「あの研修を聞くと、なんだか相談したくて」

というような返事をいただく。


20代の3人にも同じ質問をしてみた。


「なぜ個別相談を希望されたのですか?」



彼ら3人の回答はどれも同じだった。




「〇〇さんが、美味しそうにBIGポークフランクを食べている姿を目撃して、親近感を持ちまして」





……


見られてた。



だからニヤニヤしてたんだなぁ。



こういうパターンもあるのねぇ。



研修の内容が興味を惹くものであることはもちろん重要なんだけど、彼らの場合、それよりも講師に対する親近感みたいなものが、何にも増して優先されるのかなぁ、なんて。


「あれ、美味しいからねぇ」


と答えて、個別相談に入った。




先日、夜遅くまで彼らと個別相談をおこなった。

相談が終わった後、私は彼らにこう言った。

「ねぇ、これ終わった後、
 僕と一緒にラーメン食べに行かない?」


「え! い、いいんですか!?」


相談終了後、20代の若者3人と一緒に、私は札幌から車で2時間の町で、味噌ラーメンを食べた。



帰り際、彼らは、

「〇〇さん、帰り道、鹿キツネタヌキアライグマが出没するんで、気をつけてください!」


「マジかよ! ありがとう!」

(え! アライグマ出んの!)



と答えて、また2時間運転して家に帰った。
血糖値が上がったのか眠かった。


帰りの道中、たしかにキツネがいた。


「お、言ってた通りだな」


アライグマは、いなかった。




この仕事は、あらゆる町に
友だちができる仕事である。


正しいことを正しくやってさえいれば、
どんな仕事もきっと楽しい。


私はそう思う。


今度、別の企業に行く時も、その近くで
BIGポークフランクを食べてみよう。



〈あとがき〉
生命保険外交員って、世間一般から見れば嫌われるのですが、その理由を考えてみると「しつこい」「必要ない」「生理的に無理」みたいな、単にそれだけのものです。ならば、それらを裏返した仕事のやり方をすればいい、と思ってやってますが…正直、大変です。最後までありがとうございました。

▶︎人前での話し方についてのノウハウはコチラ



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